第15話 あっ、また見えなくなった!

「思ったんだが、異世界人と日本の観光ってスッゲェ面白い展開じゃねえか?それを題材にして短編が書けるぞ」


『そうか』


そんな話をしながら、二階の自室から一階へ降りる。


俺の家には、来客用の布団が何枚もあるからな。


俺は、親とは年に二、三回しか会わないが、親の知り合いが泊まりに来る事が割とあるのだ。


冒険家の父と、旅行会社社長の母。


泊まりに来るのは、フランスで幼い頃に世話になっていたPMCのメンバーだ。


何故、冒険家の父の知り合いがPMCなのかと言うと、冒険の折に異民族地帯などによく行くから、護衛が必要で、このPMCは親父の専属護衛をやったチームらしい。


まあ、よく分からんが、外国語を教えてもらったり、格闘技を教えてもらったりした。


PMCの名前は『ウルスブラン』っつってよ、元はフランス外人部隊の『白熊分隊』ってところだったらしい。


何で公務員辞めてPMCなんぞになったのかは、聞いても教えてくれんかった。


多分、知っちゃならん事なんだろう。


それに、親父と海外に行くと大抵よく分からん変なのに絡まれるから、居てくれて助かる存在だ。そんな人らにごちゃごちゃ干渉するのも良くねえよなーってんで、俺はもうその辺はスルーだ。


さ、そんなことより飯だ。


炊事洗濯は俺がやる。


妹?あいつはなあ……。


「セシルー、お前、卵何個食う?」


『ん……?ああ、焼き卵か。って、貴様が作るのか?!』


「悪いかよ?」


『いや、炊事は女の仕事だろう……』


「え?でも、宿屋ではコックはおっさんだったよな?」


『まあ、そうだが……。いや、どうでも良いか。この世界ではそう言うものなのだな。あー、卵だったか?四つ貰おう』


「ん。仁美は?」


「え?卵?じゃあ二つ」


「はいよ」


俺は、下にベーコンを敷いて、その上から卵を落とし、蓋をして蒸らす。


「パンは何枚食う?」


『四枚』


「パン?二枚で」


「お?ダイエットかー?」


「お腹周りがね……」


「運動しろよ、これから朝のマラソン行くんだが」


「冗談でしょ?無理無理〜」


そして、サラダは……、スーパーで売っているサラダパックだ。


朝っぱらから包丁使って洗うのだりぃからな。


これをサッと盛ってドン!


この前、棒棒鶏作った時のごまだれが残ってるからかけちゃお。


はい、簡単朝食〜!


海外生活長かったから、朝はパンなのよね。


「いただきます」


さて、食うか。


俺は十枚のパンのうち一枚にかじりつく。


五枚切りの食パンが二斤ってことよ。


卵も十個。


ミニサラダは五つ。


「おい、妹。今日はどうするのかね?」


「え?とりあえず、ご飯食べて二度寝?」


うーん!不健康!


とは言え、運動ができない訳ではない。


こいつも、幼き頃、PMCのおっさん共に格闘技を仕込まれてるから、同年代の男より強いぞ!


「昼飯は?用意してった方が良いか?」


「冷蔵庫の残り物適当に食べるからいらなーい」


そうかい。


「セシル、俺はこれ食ったら、軽く走ってくるけど、お前どうする?」


『付き合おう』


「ん、分かった」




そして、ほんの二、三十キロほどのランニングを一時間ほどで終えて、街へとくり出す。


我が家は、治安が悪いと有名な足立区にある。


あ、因みに、高校は江東区にあるぞ。


足立区民はすぐチャリを盗むし、酒瓶抱えて道路で寝るイメージがあるが、もちろんそんなことは……、あるんだな!これが!


とりあえず、道端の酔っ払いをスルーしながら、銭湯へゴー!


『どこへ行くのだ?』


「風呂だ」


『風呂……、テルマエか。ゼイン帝国のようだ』


「へえ、ゼイン帝国。確か、遠い昔の王朝だったな」


『ああ、ゼイン帝国人は風呂好きだったらしい』


へー。


そんなことを言いながら、入浴。


『何だこれは?』


「ここをひねると湯が出るから、石鹸で身体と頭を洗え」


『ふむ……、こうか?おおっ、湯だ!これはどう言う仕組みなのだ……?』


「水道だ。圧をかけた水を、金属の管に通して張り巡らせる」


『なるほど……!それに、この水の質の良さだ。身体を洗う水とは思えんくらいに綺麗だな。ただ、少し石灰らしきものが混じっているようだが』


「あー?あ、そりゃカルキってんだ。水道の水には、それがほんのすこーしだけ入っててな。水をきれいにするんだと」


『そうなのか。飲めるほどに清潔な水で身体を清めるとは、贅沢だな』


「そうだな、この国は豊かだ」


そして。


「あぁ〜」『うむ……』


湯に浸かった。


「お?兄ちゃん達、まだ若いのに昼間っから銭湯かい!」


「ああ、休日なんでね」


「そうかい、どこから来たんだ?」


「足立区に住んでる」


「ほう、そっちの外人さんは?」


「こいつは遠くから来た。日本語は喋れないんだよ」


そんな感じで、銭湯に来ている爺さんとお喋りしながら湯に浸かる。




「「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ぷはぁ!」」


セシルと風呂上がりに牛乳を飲む。


美味い。




その後、築地に移動。


電車に乗る。


『ぬおお……!な、何だこの人混みは?!この国にはどれだけの人間がいると言うのだ!!』


「一億二千万人くらい?」


『アホなのか?!どう考えても土地が足りておらんだろうが!!!』


「これでも、田舎の方では若者が足りないとか何だとか」


『そんな訳あるか!!!何なんだこの人混みは!!!』




築地に到着。


『はあ……、全く、人が多過ぎる……』


「まあまあ、気にすんなって。東京はそんなもんだ。ほら、飯にしようぜ」


『あ、ああ……』


さて、とりあえず寿司だ、寿司を食おう。


「すいませーん、二名で予約してた薬研ですがー」


回らない寿司だ。


「はい、薬研さんですね。こちらです」


と、寿司を食いに……。

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