第37話 んー?模型買ったのかな?よく分かんないや

「はい、では早速、街づくりの方を始めていきたいと思います!」


俺とセシルは、日本最大のジオラマ作成スタジオである『株式会社ランバージャック』に来ていた。


「こんにちはー」


俺は笑顔で店員さんに声をかける。


「はい、こんにちは」


店員さんも笑顔で対応する。


「ジオラマが欲しいんですけど」


「はい、どれくらいのものですか?」


「できるだけ大きなものを。出来合いのものがあるならそれで良いです」


「大きなものとなりますとこちらになりますね」


案内されたのは、150cm×60cmほどの鉄道模型だ。


「良いですね。この十倍くらいデカいやつってありますか?」


「……は?」


「もっと大きいやつか……、それとも複数買うかでも良いですよ?」


「し、失礼ですがご予算の方は……?」


俺は鞄から五百万円を取り出す。


「とりあえず五百万円持ってきたんですけど、足りますかね?」


「ごひゃ……?!!!しょっ、少々お待ち下さい!!!」


店員さんが超スピードで引っ込む。




その後、眼鏡のおっさんが来た。


「こんにちは、店長の白井です。今回はジオラマのご購入依頼だとか?」


おお、偉い人だ。


「はい、とにかく大きいものが欲しいですね10m×10mくらいの」


「そうなりますと……、かなりの予算と時間がかかりますが」


「五百万円でできるだけ早くと言って、どれくらい早く出せます?」


「少なくとも半年は……」


「一千万円でできるだけ早くと言ったら?」


「社員を総動員して三ヶ月……、いえ、二ヶ月で仕上げて見せましょう!」


俺は契約書にサインして、前金に五百万円渡す。


「では早速、軽く注文をしたいのですが……」


俺がそう言うと、店長はメモを構えた。


そして俺は、セシルと話し合って決めた内容を話す。


「コンセプトは、『異世界転移チート能力者が異世界に作る街』です。サブテーマとして『魔法と科学の融合』ですね」


「なるほど……、そちらのエルフコスプレの方と、何かのイベントで使われるのですか?」


「まあそんな感じですね。えー、それと注文は、『魔法の列車を四本通すこと』と、『農場や放牧地など、このジオラマの街一つで自給自足生活が可能であること』『川と湖を作ること』『大きな図書館を作ること』ですかね」


「なるほど。列車模型の方ですが、こちらを電動で動かすギミックをつけますと、工期が伸びてしまうのですが……?」


「列車は動かなくても良いです。ただ、線路はちゃんと作ってください」


「はい!そして放牧地などですが、人や動物も配置した方がよろしいでしょうか?」


「動物やモンスターは好きなだけ配置なさってくださって結構ですが、人は不要です。もちろん、人型のオートマタやゴーレムなどを配置したい場合はそれでも構いませんが」


「具体的なデザイン画などを完成次第お送りしたいので、連絡先の方を……」


「ああ、デザイン画については用意しておいたので、これを参考にしてください」


そう、先週のうちに、ツブヤイターにて有名なイラストレーターにデザイン画を描いてもらっておいたのだ!


俺はやってないので知らないけど、有名なソシャゲのデザイナーだったらしい。


何だったか?『グランドゲイルファンタジー』だったっけか?


見た感じ、かなり綺麗な油絵風のイラストで、綺麗で気に入ったから依頼したんだけど、正解だったな。


五百万円で異世界のデザイン画を十四枚と設定画を二十五枚!


バッチリですわ……。


「これは素晴らしい!では、すぐに仕事に入ります!」


「はい、お願いします」




さて。


そんな訳でね、異世界での仕事は終わった。


とりあえず、二ヶ月待とう。


丁度その頃には、夏休み前ってところだろうな。


そういや、今年の家族旅行はどうなるんだろうか?


小学生の頃から毎年、夏と冬には2、3ヶ月の家族旅行をするんだが。


いやあ、懐かしいな。


財布に一週間分だけの旅費を持たされて、外国の街角で解散して、三ヶ月後にあらかじめ指定された場所に集合して帰国、っていう。


路銀がなくなった時どうするかを考えて、スリをしたり、酒場で演奏をしたり、バイトしたりして食いつなぐのは、シミュレーションゲームのような趣があるぞ!


一番ヤバかったのは中二の頃かな?あん時は中東の紛争地域のど真ん中に放置されてさあ。


最終的には親父と合流して、なんかよく分からない神の化身?とか名乗る変なロン毛と戦ったっけ。


まあ、それはどうでも良いか。


今日は大人しく学校に行こう。


登校、と。


「さて、友人キャラ」


「何だよ?」


俺に話しかけられた勘次は、若干素っ気ない態度をとる。


「なんか面白い話とかないか?」


「面白い話ぃ?あのさあ、俺は恋愛ゲームの友人キャラじゃないんだぜ?」


「ないのか?」


「いやあるけど」


あるんじゃねーか。


やっぱり友人キャラだな。


「とは言え、あまり愉快な話じゃねーけどな」


ふむ?


とりあえず聞いてみよう。


「剣崎亜里沙っているだろ?あのハーフの」


ああ、いたな。


ものすっげー美人の。


「なんか、ビッチらしいぜ。風俗店で働いてるとか」


ほー。


「で、それをネタにして、周りの女共がいじめを始めたっぽくてよ……」


なるほど。


「何が駄目なんだ?風俗業も立派な社会の一員だろうが」


「いやそりゃ、お前はそういう考え方かもしれねえけどよ。普通は、風俗やってる女とかおかしいんだよな」


おかしいのか?


よく分からんな。


キャバ嬢なんてむしろ尊敬に値するだろうに。


つまらねぇ話しかしねえハゲたおっさんの話を聞いてあげるとか、最早聖母だよな。


キャバ嬢は現代の聖母だ。


懺悔室のシスターだ、神聖だよ。


「それが男子にも噂が流れてるらしくて、剣崎は悪い奴らに『やらせてくれ』と迫られてるんだと」


ほーん……。

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