異世界と地球を行ったり来たり 〜チートはポーション生成ではなくもっと別の何か〜

飴と無知@ハードオン

第1話 オープニングで話が終わっちゃってるじゃないか?!

『薬研理玖、あなたには異世界に転移してもらいます』


俺は、薬研理玖。


十六歳で、この春休みが終わったら、高校生になる。


趣味は旅行とソロキャンプで、得意教科は英語と歴史に地理。


実質的にしまりんだと思ってくださって結構だ。


父親は冒険家、母親は旅行会社の社長。


二歳年下の妹がいる。


クラスでは、出席日数をギリギリまで削って旅に出る変わり者と思われており、いわゆる陰キャや陽キャのどちらでもない存在。


とは言え、成績は上位をキープしているし、友人もいない訳ではない。


海外旅行の回数が多く、外国語がかなりできる以外は、どこにでもいる普通の高校生(予定)だ。


ライトノベルの主人公らしい男だな。


それが何故、異世界に転移する、なんて話になるのだろうか?


どう考えても、もっとキャラが濃くて強そうな奴を送った方が良くないか?と、俺は訝しんだ。


例えば、VRRPGの世界から来た月の魔剣士とか、プログラマの魔導師とか。そういう奴らの方が向いてるだろ。


『異世界に転移するにあたって、あなたにはチート能力を一つ授けます』


おっと……?


俺が色々と考えているうちに、話が勝手に進んでしまったぞ?


「何の話だか分からないんだが、家に帰してくれ。異世界転移だかなんだか知らないが、俺は嫌だぞ」


『これは決定事項です。チートを選択してください』


駄目だこりゃ。


「チート?何の話だか分からないな。どんなズルをするんだ?」


『転移者には、《鑑定》と《異世界言語》、そして《アイテムボックス》のスキルが自動付与されます。チート能力とは、特別なユニークスキルのことです』


ユニークスキル、ねえ。


「じゃあ何か?魔法使いになりたいと言えば、なれるのか?」


『魔法スキルは非常に一般的なスキルなので、ユニークスキルとして修得することはできません』


なるほど、異世界は魔法がよくあることなのか。


「じゃあほら、全知全能とか」


『それは、神の権能です』


「じゃあ……、欲しいものが手に入る能力とか?」


『検索……、創造系スキルを表示します』


ずらりと、目の前に一覧表が並ぶ。


うーん。


「この、《ポーション生成》ってのは?」


『ポーションを生成します。どんなポーションでも生成できます』


「どんなポーションでも、と言ったか?その言葉に二言はないな?」


『二言はありません』


「『どんな』ポーションでも作れるんだな?本当なんだな?」


『どんなポーションでも作れます』


ふーん。


「お前、名前は?」


『創造神ゼロの第一の使徒天使、ロマリエルと申します』


「よし、ポーション生成のスキルをもらうが、もしも、欲しいポーションが作れなかった場合、創造神ゼロとお前のネガキャンを全力でやるからな」


『構いません。その際は、お詫びにどんなことでもいたします』


よし、異世界転移だ!




浅い森の中。


屋久島のような深い自然のある密林ではなく、広葉樹がまちまちと生えている疎林であった。


ここが異世界だろう。


「『ポーション生成』!!!」


俺はポーションを生成した。


目の前に、ほら、あれ……、最後の幻想とかでよく見る、なんかこう芸術的な瓶に入った黒色の発光する液体。


これを俺は飲み干した!


そして頭に響く音声!


『スキル《世界線移動》を修得しました。』


「よし!世界線移動、発動!」


『MPがあと14500足りません』


ふむ……。


「『鑑定』、対象は俺」


《リク・ヤゲン

十六歳 男性

Lv10


HP500

MP500


筋力:55

魔力:50

耐久:55

敏捷:30

器用:26

知能:24

運勢:10


スキル

《鑑定》《異世界言語》《アイテムボックス》《世界線移動》《料理》《格闘》


ユニークスキル

《ポーション生成》》


なるほど。


「『ポーション生成』!」


俺は青く輝くポーションを飲む。


すると……。


《リク・ヤゲン

十六歳 男性

Lv10


HP500

MP100000


筋力:55

魔力:50

耐久:55

敏捷:30

器用:26

知能:24

運勢:10


スキル

《鑑定》《異世界言語》《アイテムボックス》《世界線移動》《料理》《格闘》


ユニークスキル

《ポーション生成》》


そう、今作ったのはMP最大値を増加させるポーションだ。


ヨシ!


では早速!


「『世界線移動』!」




「っふぅー」


「あれ?お兄ちゃん、うちにいたの?」


「いや、異世界転移してた」


「……なんの話?」

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