異世界と地球を行ったり来たり 〜チートはポーション生成ではなくもっと別の何か〜
飴と無知@ハードオン
第1話 オープニングで話が終わっちゃってるじゃないか?!
『薬研理玖、あなたには異世界に転移してもらいます』
俺は、薬研理玖。
十五歳で、この春休みが終わったら、高校生になる。
趣味は旅行とソロキャンプで、得意教科は英語と歴史に地理。
実質的にしまりんだと思ってくださって結構だ。
父親は冒険家、母親は旅行会社の社長。
二歳年下の妹がいる。
クラスでは、出席日数をギリギリまで削って旅に出る変わり者と思われており、いわゆる陰キャや陽キャのどちらでもない存在。
とは言え、成績は上位をキープしているし、友人もいない訳ではない。
海外旅行の回数が多く、外国語がかなりできる以外は、どこにでもいる普通の高校生(予定)だ。
ライトノベルの主人公らしい男だな。
それが何故、異世界に転移する、なんて話になるのだろうか?
どう考えても、もっとキャラが濃くて強そうな奴を送った方が良くないか?と、俺は訝しんだ。
例えば、VRRPGの世界から来た月の魔剣士とか、プログラマの魔導師とか。そういう奴らの方が向いてるだろ。
『異世界に転移するにあたって、あなたにはチート能力を一つ授けます』
おっと……?
俺が色々と考えているうちに、話が勝手に進んでしまったぞ?
「何の話だか分からないんだが、家に帰してくれ。異世界転移だかなんだか知らないが、俺は嫌だぞ」
『これは決定事項です。チートを選択してください』
駄目だこりゃ。
「チート?何の話だか分からないな。どんなズルをするんだ?」
『転移者には、《鑑定》と《異世界言語》、そして《アイテムボックス》のスキルが自動付与されます。チート能力とは、特別なユニークスキルのことです』
ユニークスキル、ねえ。
「じゃあ何か?魔法使いになりたいと言えば、なれるのか?」
『魔法スキルは非常に一般的なスキルなので、ユニークスキルとして修得することはできません』
なるほど、異世界は魔法がよくあることなのか。
「じゃあほら、全知全能とか」
『それは、神の権能です』
「じゃあ……、欲しいものが手に入る能力とか?」
『検索……、創造系スキルを表示します』
ずらりと、目の前に一覧表が並ぶ。
うーん。
「この、《ポーション生成》ってのは?」
『ポーションを生成します。どんなポーションでも生成できます』
「どんなポーションでも、と言ったか?その言葉に二言はないな?」
『二言はありません』
「『どんな』ポーションでも作れるんだな?本当なんだな?」
『どんなポーションでも作れます』
ふーん。
「お前、名前は?」
『創造神ゼロの第一の使徒天使、ロマリエルと申します』
「よし、ポーション生成のスキルをもらうが、もしも、欲しいポーションが作れなかった場合、創造神ゼロとお前のネガキャンを全力でやるからな」
『構いません。その際は、お詫びにどんなことでもいたします』
よし、異世界転移だ!
浅い森の中。
屋久島のような深い自然のある密林ではなく、広葉樹がまちまちと生えている疎林であった。
ここが異世界だろう。
「『ポーション生成』!!!」
俺はポーションを生成した。
目の前に、ほら、あれ……、最後の幻想とかでよく見る、なんかこう芸術的な瓶に入った黒色の発光する液体。
これを俺は飲み干した!
そして頭に響く音声!
『スキル《世界線移動》を修得しました。』
「よし!世界線移動、発動!」
『MPがあと14500足りません』
ふむ……。
「『鑑定』、対象は俺」
《リク・ヤゲン
十五歳 男性
Lv10
HP500
MP500
筋力:55
魔力:50
耐久:55
敏捷:30
器用:26
知能:24
運勢:10
スキル
《鑑定》《異世界言語》《アイテムボックス》《世界線移動》《料理》《格闘》
ユニークスキル
《ポーション生成》》
なるほど。
「『ポーション生成』!」
俺は青く輝くポーションを飲む。
すると……。
《リク・ヤゲン
十五歳 男性
Lv10
HP500
MP100000
筋力:55
魔力:50
耐久:55
敏捷:30
器用:26
知能:24
運勢:10
スキル
《鑑定》《異世界言語》《アイテムボックス》《世界線移動》《料理》《格闘》
ユニークスキル
《ポーション生成》》
そう、今作ったのはMP最大値を増加させるポーションだ。
ヨシ!
では早速!
「『世界線移動』!」
「っふぅー」
「あれ?お兄ちゃん、うちにいたの?」
「いや、異世界転移してた」
「……なんの話?」
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