第33話 文明力で殴るのはダメだって言ったじゃん!

さて、暫定的にだが、女二人を手に入れた俺。


交渉するまでもなく、俺が圧倒的に有利な立場であるから、こちらの欲求を叩きつけてやろう。


「とりあえず、リリーベル様の祖国とやらに向かおうか。道案内を頼みたいんだが?」


「はい、分かりました。ですが、かなり遠いので……」


お付きのドミニクがそう答える。


遠い?


「どれくらい?」


「馬車で一ヶ月程は……」


そんなもんか。


じゃあ、到着は六月頭だな。


いや、このゴールデンウィーク中はずっと移動するから、もっと早いかな?


「俺は学生だから忙しくてな。あまり移動に時間はかけられん。だから、移動できるのは夕方と、七日のうち二日のみだ」


「そ、そんな……!それでは、どれほどの時間が……!」


ドミニクがなんか言ってるが……。


「すまないが、君達は俺に何かを要求できる立場じゃない。俺に従え、良いな?」


俺は黙らせた。


「は、はい……」


さて、ではそろそろ昼なので……。


「飯食いに行くぞ。セシル、どこが良い?」


「では、ここの食い倒れ横丁というところを見に行きたいのだが」


「バリバリ観光する気じゃん。ウケる」


まあ良いや、なら観光するっかぁー。


はい転移。




『こ、ここは……?!』


『大阪だぞ。ほら、リリーベルはこっち、ドミニクはこっち。手を繋げ、異世界で迷子になったら戻ってこれないぞ』


『『は、はい!』』


さて、何食おうかなー。


お、たこ焼き。


「すいませーん」


「はーい」


「あ、お前、食う?」


「たこ焼き……、大阪という地に来るならば食べるべきだと聞く」


セシルがそう言った。


「んじゃ、たこ焼き10パックお願いします」


「味はどないするんや?」


店員がそう言ったので、俺は、ベーシックにソースとマヨと答えた。それと、ネギ塩と明太子マヨも頼む。


『賢者様、これは……?そもそもここは……?』


『これはたこ焼き。ここは日本国の大阪の、食い倒れ横丁って言うアミューズメントパークだ』


『はあ……。あっ!凄い速さでくるくるしてます!』


たこ焼きを作るオバちゃんのことを称賛するリリーベル様を横目に、俺はセシルと今後の予定を話し合った。


「はいどうぞ!」


「はいどうも」


受け取って、食べる。


おー、流石は本場のたこ焼きだ。


美味いわー。


「ふむ……!外側はよく焼かれてスナック状になっているのに対し、内側はスライム状になっているのか。面白い感触だ」


スライム状って表現やめてくんないかな????


『た、食べて良いですかっ?!』


『お、お待ち下さいリリーベル様!まずは毒味を……!』


なんか言ってるな。


『この世界にお前らを狙う刺客なんていねーよ。早よ食えや』


『はいっ!もぐ、あちゅいでしゅ!はふ、はふ……、おいひい!美味しいです!』


リリーベル様は順応が早いなあ。


あちらの世界でもさぞおてんばな姫様だったんだろう。


『ああ、リリーベル様!』


お付きのドミニクが慌てているが……。


『お前も食えよなー、冷めると粉物は美味しくないんだよ』


『わ、分かりました……。はむ、熱っ、はふ……!美味しい、ですね……!』


へー、異世界人的にたこ焼きってアリなんだ。


セシルは、長い旅の間に色んなものを食っているから、何でも食う変わり者らしいんだけど、普通の異世界人は好き嫌い激しいだろうなーって思ったんだけどな。


「じゃあ次は串カツ食おうぜ」


串カツ屋に入店。


『わあ!凄いわドミニク!あれは何かしら?!』


『さ、さあ……?』


「あれ?揚げ物って概念がない感じ?」


俺はセシルに聞いた。


「フリッターは、南方の油がよくとれる地方でのみ食べられる高級品だからな。こいつら……、確かキマリシアと言ったか?キマリシアには存在しないはずだ」


ほへー、そうなんだ。


じゃあ解説しとくか。


『あれはフリッター。砕いたパンの粉を付けて油で茹でる料理だ』


『まあ……!あれが全部油なのですか?!油は、南方からしか得られない高級品なんだそうですよ?』


『そうか。この国じゃ銅貨数枚で鍋一杯の油が買えるぞ』


俺がリリーベル様と適当な話をしていると……。


『そ、そんな馬鹿な……?!ここは、相当な高級店なのではないのですか?!』


と、ドミニクが言った。


『一品につき銅貨二枚の、庶民が来るような店だぞ』


『……この国の庶民は、我々の国の貴族よりも良いものを食べているのですか』


『そうだね』


そんな話をしていると、勝手に注文していたセシルから串カツを渡される。


それと、ビールも。


リリーベル様にはオレンジジュースだ。


『これは何ですか?』


『果物の搾り汁』


『んくっ……?!!!お、美味しいですーーーっ!!!』


そう、良かったね。


『う……、エールですか……』


ん?


『どうしたドミニク?』


『エールは不味いので……』


へえ、ビール嫌いな人なのかね?


『まあ、これしかないならこれを飲みますが……。えっ?!な、何ですかこれは?!』


はい?


『ビールだよ。ここのはキリンさんの一番搾りらしいぞ』


『何を言っているのかはよく分かりませんが、これは……、非常に美味しいですよ?!』


『そりゃそうだ。俺もそっちの酒を飲んだが、クソマズかったもんよ』


『冷えていて、喉越しが良く、ほのかな苦味に穀物の甘味……。エールとは全く違う……』


ふーん。


おっ、牛カツ美味いわー。


あとやっぱり、俺が好きなのは玉ねぎだな!


ハンバーガー屋とか行くと、必ずオニオンリング頼むもん俺。


『さくっ!……んぅ〜!美味しいです!これは何のお肉なのですか?』


鳥カツを食うリリーベル様。


『それは鶏』


『ニワトリ?』


『鳥だ、鳥の肉』


『ああ、鳥の肉なのですね!これは、さぞ若い鳥なのでしょうね!柔らかで、それでいて、全く臭くないんですもの!』


へえ、そうなの。


確かに、あっちの世界の肉はかなり硬くて臭かった。


多分、年老いて動けなくなった家畜を肉にしているのと、血抜きが雑なのと両方あるだろうな。


だから、くたくたに煮込まないと食えないんですね。


新鮮な肉といえばモンスターの肉になるだろうけど、モンスターの肉はやっぱり、食べるために品種改良されてきた日本の家畜には遠く及ばないな。


そんな感じで、串カツをさくさくして次の店へ……。

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