第42話 僕も仕事がなけりゃ日本旅行したいんだけどね!!!

はい。


俺、セシル、シドニアの三人で飯を食いに行く。


実験器具がね、カタログで取り寄せらしくてね。


明日も買い物あるし、しばらくは地球で活動だな。




そんな感じで昼。


「シドニア、お前はどれくらい食える?」


「む?まあ、人十倍と言ったところだな」


ふむ。


横浜、中華街……。


千龍軒という中華料理屋へ。


この千龍軒は、非常に歴史ある中華料理屋で、明治の頃からあるなんて話だ。


特に、焼売が絶品で、色々な支店を出しているとか。


千龍軒の焼売弁当は、神奈川の駅弁の定番だな。


昼少し前頃を狙って入店。


昼間の人気店は混むからな。


俺達はサラリーマンじゃねえからよ、わざわざ並んだりしたくねぇんだわ。


「いらっ……?!い、いらっしゃいませ!三名様ですねっ!」


バイトのおねーさんの顔色が変わる。


まあそうね、タイプの違うイケメンが三人来たんだもんよ、そらそうなるわな。


俺はハンサムゴリラ。


セシルは女ウケする線の細いイケメン。


シドニアはイケオジだ。


愛想三割増しの女店員からメニューを受け取り、回し読みする。


写真付きなので、セシルとシドニアもわかりやすい。


「ほおー、ここはライスを食べるものなのか。アズマの方くらいじゃないか?ライスを常食するのは」


シドニアはそんなことを呟いた。


「へー、なんか日本っぽい国があるのか」


「そうだな。機会があれば行ってみるといい」


それはさておき……。


「あ、おねーさん。注文良いかな?」


「はぁい!」


「坦々麺の大盛りと角煮炒飯の大盛り、それと焼売と餃子と小籠包と春巻きと肉まんを五皿ずつ。あとは、回鍋肉定食の大盛りとエビチリ定食の大盛りと四川麻婆豆腐定食の大盛りと麻婆茄子定食の大盛り、クラゲのきゅうり和えと広東風腸詰めとイカゲソ唐揚げときくらげ豚肉炒めも五皿ちょうだい。あと海鮮おこげ五人前と中華風トマト鍋五人前。ビールを大ジョッキで」


「……はい?」


おねーさんの顔が歪んだ。


それをスルーして、セシルが注文。


「私は、このサンラータンメン大盛りと五目あんかけ焼きそばの大盛りと、焼売と餃子と小籠包と春巻きと肉まんを五皿ずつ。それと海鮮炒飯大盛りとキムチ鍋四人前、きのこスープ大盛りと、トマトサラダにピータンとザーサイと棒棒鶏と胡麻団子を三皿を頼む。それと、鶏肉のヘルシー炒めとトマト卵炒めとエビきのこ炒めも三皿ずつ。ビールを大ジョッキで」


「ひゃい……」


おねーさんの顔はもう既に限界だ。


そして、そこに更に、シドニアが注文をする。


「俺は、牛肉ニンニク炒飯大盛りと中華丼大盛り、焼売と餃子と小籠包と春巻きと肉まんを五皿ずつ。それに加えてホルモン炒め五皿とネギチャーシューメン大盛り、酢豚定食大盛りと青椒肉絲定食大盛り、そして牡蠣のオイスターソース炒め定食大盛りと、エビマヨと軟骨の唐揚げと鳥の唐揚げとホルモンの激辛炒めを五皿。ビールを大ジョッキで」


「……はひい」


おっと、おねーさんの顔面が崩壊してしまったぞ。


たいへんだー。




厨房が地獄に陥っているのを横目に、俺達は飯を食う。


うーん、角煮炒飯は良いねえ。


この甘みが後を引くんだよ。


「おおおっ!これは美味いな!」


シドニアも大満足のようだ。


「この米を焼いたものは実に美味い!ガリクの香味が漂う上質な油を充分に吸っていて、噛めば噛むほど旨味が弾ける!堪らんっ!!!」


ははは、良かったね。


「ううむ……、こちらのサンラータンメンというのは中々だな。ビネガーを中心としたパスタなど、聞いたことがない。だが、この酸味が食欲を高めてくれる……」


などと言って、セシルも食事を続けた。


「そして酒も美味い!この苦味が良い!ビールお代わり!」


ビールを飲みまくるシドニアを横目に、俺は坦々麺を啜る。


うーん、美味い。


この胡麻の強い風味に、辛味ある油が包まれてスルッと入るんだが、後から油の辛味が来るんだよなあ。これが最高なんだよ。


それとこの、スープを吸った八宝菜がヤベェよな。口に入れた瞬間、ブワッと爆発しやがる。


家系ラーメンのほうれん草とかも美味いよね。




さて、腹も満ちたし……、デザートでも食うか。


秋葉原のデカ盛りスイーツ店へ。


昼はまあまあ食ったからな、少なめに……。


「この、クリームタワーアイスコーヒーのXLとバケツプリンとウルトラジャンボパフェと2kg軍艦シュークリームください」


「アイスティーとショートケーキとフルーツタルトをホールで。それと、丸ごとメロンパフェを」


「ブラックコーヒーのホットと、タワーパンケーキとチョコレートケーキをホールで。それと2kg爆弾アイスで」


控えた。




そして、浅草へ……。


「「グワーッ!人混み!」」


「ははは」


電車で浅草へ。


浅草の、江戸切子体験に予約しておいたのだ。


「素晴らしい……!何と美しき職人芸なのか!!!」


シドニアが喜んでいる。


まあ、好きそうだもんなあ。


「職人よ!秘伝の技について訊ねる無礼を承知の上で聞こう!このガラスは、何故こんなにも鮮やかな色合いを持つのだ?!」


「はい、これらは、ガラスの材料のソーダ灰に酸化コバルトなどを混ぜることにより……」


「なるほど……、その酸化コバルトとはこれか?」


「はい、そちらが酸化コバルトです。酸化コバルトは主に……」


「なるほど!」


シドニアは、手元のメモ帳に、職人さん達の話をガリガリと書き込む。


そして、実際に体験する……。


「ほう!工作機械とはこのようにして使うのか!」


「髪の毛とか巻き込まれないように注意してくださいねー」


「うむ!忠言有り難く!」


「おおー!凄く上手いですねー!何かやってらっしゃるんですか?」


「ワハハ!学者を少しな!」


実際の話、初めてだというのに、シドニアの細工の腕前はプロ級だ。


俺?俺はまあ、器用さ的には誰より上なんだけど、センスの方がね。


ガラスにワニの絵と、「らこすて」の文字を書き込んでやったよ。


職人さんも思わず苦笑い。


セシル?


こいつはもう、センスが高尚なエルフ様でいらっしゃるからね。


異世界の花を刻んでいた。


レベルが高くてもセンスは高くならんのじゃ。


かなしいなあ。

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