第11話 良いじゃないか!どんどん目立ってくれたまえ!

「うめえ?!!!」


ポーションを飲んだ女が叫んだ。


どうやら、俺の生成したポーションは美味いらしい。


俺も試しに一本飲んでみる。


……ハッカ風味が薄く香るハーブティーって感じだ。まあ、美味いかと言われれば美味いんじゃない?スースーするから、身体にかけても良いんじゃないかね?


あ、身体にかけても傷は治るらしいよ。


試しにセシルにも一本飲ませる。


「これは……!美味いな!」


あー、美味いんだ。


「普通のポーションはどんな感じなんだ?」


「苦いぞ、青臭くて苦い。このような露店で手に入るポーションは、舌が痺れるほどに苦いのが定番だ」


ふーん。


すると、あまりの美味さに放心していた冒険者女が再起動した。


「な、なあ!あんた!このポーションと同じ品質のハイポーションはあるか?!」


ハイポーション……。


今売っているのがロウポーションだ。


市販のポーションでは、ロウ、ミドル、ハイの三階級が流通している。


ロウでも、結構深い切り傷を治したりできるが、ミドルでは骨のヒビくらいは治す。


ハイに至っては、骨折や内臓破裂くらいなら治してしまう。地球では全治2、3ヶ月くらいの怪我を数十秒で治すんだから、ファンタジー世界も侮れないな。


なお、大きな身体欠損は、ダンジョンなるところでのみ得られる秘薬であるリジェネレーションポーションか、それこそ、伝説の秘薬エリクサーでもない限り治せないそうだ。


さて、ハイポーションか。


売って良いんだから悪いんだか、判断がつかないな。


ハイポーションってのは店売りの最高品なんだろ?それをこんな、場末のバザーで捌いて良いのだろうか?


セシルをチラ見。


「良いぞ。但し、ハイポーションは一本、百万フリンだ」


とセシル。


百万円!


いや、保険なしで2、3ヶ月入院すればそれくらい行くのかもな。入院させたことは多々あるが、入院したことねぇからわかんねーんだけども。でも、そう考えると妥当か?


俺はまあ、高いんじゃねえのかなーって思ってたんだが……。


冒険者女は、腰のポーチから金板を取り出して叫ぶ。


「とりあえず十本くれ!」


と……。


「おーおー!大盤振る舞いじゃねえか!おねーさんカッコいー!」


俺はそう言って、後ろのクーラーボックスから取り出したように見せかけてポーションを生成。


ハイポーションを十一本取り出した。


「ほら、一本おまけだ。持って行きな」


「おお!ありがてぇな!助かるぜ!」


女は、腰のマジックポーチにハイポーションを詰めて帰って行った。




さて、一瞬にして一千万円儲かってしまったな。


とりあえず、両替した一千万フリンをセシルと山分けする。


「こんなに貰えない」


「良いから取っとけよ」


「労働の対価は正当に分配されるべきだ。一万フリンでももらえればそれで良い」


「いいのか?楽して金が手に入るのって素敵じゃね?」


「こう言えば良いか?私は貴様の愛人ではない。養われるのはごめんだ」


「なーるほど、男のプライドってやつか。それなら理解できるぜ」


とのことで、俺は一万フリンだけセシルに渡す。


今日の宿代くらいにはなるとのこと。


そもそも、セシルはそこそこに金を持っているらしい。


「金持ちなの?」


「いや、私は冒険者をやっていて、それで稼いでいる」


上から、オリハルコン、アダマンタイト、ミスリル、白金、金、銀、銅、鉄、青銅、錫という等級で分類される冒険者のうち、セシルは白金の等級にあるらしい。


白金等級と言うのは、一流の冒険者と言うことらしいが、詳しくはよく分からん。


っと……、もう良い時間だし、メシでも食うか。


屋台が色々あるんで覗いてみる。


ついでに屋台の食いもんに鑑定!


……なるほど、サルモネラ菌。


ついでにセシルにも鑑定!


《セシル・プルート

五百六十歳 男性

Lv55


HP:1250

MP:3050


筋力:120

魔力:356

耐久:105

敏捷:241

器用:189

知能:381

運勢:50


スキル

《生活魔法》《風魔法》《弓術》《剣術》《フリーラン》《軽業》《千里眼》《聞き耳》《製薬》《罠作成》《罠解除》


エクストラスキル

《精霊魔法》》


なるほど。


まあそんなことはどうでも良い。


せめて食える飯を探さねば。


お、これは食えるな。


「おう、こいつはいくらだい?」


浅い鍋で煮られた豚肉だ。赤ワインで煮てるみたいだな。玉ねぎのみじん切りと……、マッシュルームっぽいキノコの薄切り、それとシナモンが入ってるみたいだ。


それを、ライ麦のパンに挟んでいただくみたいだ。


へえ、悪くないな。


店主のおっさんに訊ねると……。


「おう!こいつは一つで五百フリンだぜ!」


と言われる。


「じゃあ、一つくれよ」


「あいよ!……ほら、熱いから気を付けろよ!」


おっと、紙で包んでくれるとかないのか。手渡しか。


少々面食らったが、俺は銅貨を五枚、テーブルに置いてから、パンにかじりつく。


「んー?んー」


味は薄め、酸味が強め?


ロッゲンブロートのガンガン主張してくるライ麦味を、酸味が強いソースでぶん殴って中和するような感じ。


不味くない、決して不味くはないぞ。


とろ火で煮込んでいるから、玉ねぎが殆ど液状になっていて、そのとろみが舌にまとわりつく。


普通、ライ麦パンは酸っぱくて麦の味が強くて、日本人は苦手な味をしているんだが、これは、濃厚なソースがそのライ麦パンの強い主張を打ち消しているから、非常に食べやすい。


「うめぇじゃねぇか!」


「ははは!だろ?うちの『豚肉のトロトロソースサンド』は世界一だ!」


世界一は流石に盛り過ぎだが、かなり美味い。


俺は好き嫌いがないが、これは本当に、普通の日本人でも食べられる味だ。


「美味いな……、もう一個、いや、二個くれ!」


「おう!」

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