第2話前世の記憶


 俺の前世は、勉強漬けの毎日だった。


 母親の教育方針で幼稚園に行く前から数多くの塾に通って、幼稚園でさえも英語で遊びを行うというところだった。そこから、俺の受験人生が始まった。


 自覚もないまま始まった小学校の受験勉強。それに合格したと思ったら、小学校でも塾通いの毎日。


 幸いにして、俺は頭が良い方だった。だから、勉強すればするほどに成績は伸びていって、母親の俺への教育は熱を増していった。


 最初は良い点数をとると母親が喜んでくれたから勉強を頑張ったような気がしていたのだが、そのような可愛い思想は早々のうちに消えていった。


 母は、俺に勉強だけを強いるようになっていったからだ。成績が悪ければ部活を止めろとか言うパターンではなく、勉強の邪魔になるから部活をやるなというタイプの母親だった。おかげで、俺は遊んだという記憶が極端に少ない。


 学校では、友人も出来なかった。遠足などのイベントは、顔と名前を知っている人間と知らない街をぶらぶらするというもので終わってしまった。


 高校でも小学校や中学校と同じような日々を過ごた。そんな人生のなかで、俺はもはや慣れきった模試の結果を電車の待ち時間の間に眺めていた。


「A判定か……」


 志望大学に合格は、ほぼ確実のようだ。当日によっぽどのヘマをやらかさなければ、俺は晴れて夢見ていた大学生である。


「志望校は東京だから、合格したら……」


 大学に合格すれば、俺は一人暮らしができる。そうすれば勉強漬けの毎日を強要してき母とおさらばして、青春を謳歌することができるはずなのだ。


 高校時代には出来なかったゲームとかアニメ鑑賞をしたりして、友人と感想を言いあってみたい。恋人とかも出来るかもしれない。


 勉強ばかりの人生を送ってきた俺は、青春というものと縁がまったくなかった。だから、親の監視がなくなったら遅れてきた青春を楽しむの……だ。




 俺の記憶は、そこで途切れている。


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