新米貴族、どういう状況?
ててん! 問題!
背中を理不尽に蹴り飛ばされる代わりに、女の子に膝枕をしてもらっているところを、重要な商談相手に見られてしまった。彼女は性的な面を出す男性を酷く嫌悪しているという。ここからどうすれば、彼女と一緒に商売できる?
ただし、同室の女の子が「こ、ここここここ子作りしてるぅ!?」と叫んでいるとする。
何やこの状況……。
顔を真赤に染めたナツ。逆にドン引いて真っ青になっているセリアちゃん。ナツの発言に呆気にとられたシャーロット。
あまりにもおかしな状況に頭を抱えたくなるが、そうしているわけにもいかず、俺はシャーロットの膝から頭を上げた。
「状況を整理しよう」
「い、いいよ! 恥ずかしいから聞かないで良い! 整理しない! せいりこない!」
「お、終わってる発言をしないで欲しいわ……」
ドン引き二号となったシャーロットを気にせず、キリッとキメ顔を作る。
「まず俺がシャーロットの膝枕をしていたわけだが、本意ではない」
「の、わりには、気持ちよさそうにしてたけどね」
終わっている人間を前にして冷静になっちゃったシャーロットに耳打ちする。
「ダンスのときの礼は、今、話を合わせてくれるだけでいい」
「……よくわからないけど、まあいいわ」
と返答が来たので、ジェントルメンのオーラ全開で続ける。
「本意ではないよな、シャーロット?」
「ええそうね。どうしてもって、私が頼んだわ」
「そ、そそそ、そんなに抑えられなかったの!?」
「まあそうかしら。抑えきれなかったのはそうね」
「ええええ!?」
「かなり溜まってたから、お陰で解消出来たわ」
「た、溜まって……わ、わかるけど、でもだからって良くないって! 今は学生なんだよ!?」
「ええ、早く母になりたいわ」
「はぃーーーー!?」
「ところでナツさん、誤解があるようだけれど、膝枕以上のことはしていないわよ」
シャーロットはきっと、ナツが俺とチョメチョメしていたと誤解している、と思ってわざとそういう言い回しをしていたのだろう。
だが、それは浅はかと言わざるをえない。
『違います、男女が寝ると出来るんですよ……とここまで。それぞれの家庭に性教育の方針があります、私がでしゃばってはいけません。一度、母親や姉、なんなら妹でも良さそうですが、親しい女性に聞いてみることをおすすめします』
そんな俺の言葉を真に受けているナツは、男女が寝ている状況、つまり膝枕こそがチョメチョメであると認識しているのだ。
そのため、
「だからそれが子作りでしょ!?」
となるわけである。
そして、
「な、何を言っているのかしら、ナツさん?」
と驚愕するわけである。
「え……も、もしかしてちがう?」
「違うに決まっているわよ」
「み、皆、知ってる……の?」
「ええ。流石にナツさんの年頃なら皆。知ってないと恥ずかしいわ」
ナツは周りの面々の顔を見たあと、察して顔を真赤に染める。そしてぺたんと女の子ずわりして、顔を両手で押さえた。
「くぅぅぅぅぅうぅうううう!!」
「あ、あのナツさん、そのそっち方面の話も教えてあげましょうか? 家はマナーや作法を教えるお家柄、勿論、夜の作法も知ってるけれど……」
「よろしくお願いしまあああああああす!!」
ナツは投げやりにそう叫んだ。
ハナからどうでも良かったが、まあこれでナツは解決した。本題は、セリアちゃんだ。
この奇っ怪なやりとりに唖然としているが、まだ巻き返すことはできる。
「そういうわけで、えっとセリア嬢でしたかな。私は子作りなんて当然ながら、膝枕も故意でしたわけじゃないんです」
と、白い歯をキランとさせて言う。
「え、あ、は、はい」
「なんたって、このメカブはジェントルメン。街を歩けば、ジェントルメンよ、ジェントルメンが来たわ、と婦女子が黄色い声を上げなくもない」
「絶対、上げないでしょうが。何がジェントルメンよ、正反対じゃない」
俺はシャーロットに「礼」と一言耳打ちをする。
「何か言い返してみなさいよ、ジェントルメン。あ、間違えたメカブ」
「この通り、語るに落ちるくらい私はジェントルメンなのですよ」
「す、凄い、シスターの言ってたことは本当だった……」
どうやら俺がジェントルメンだと信じてくれたようである。
印象を改善できたことだし、さて、と本題を切り出す。
「セリア嬢は、私を探しておいででしたが、如何なさいましたか?」
「は、はい、そ、その、実はシスターに紹介されまして……」
「ふむ。どこのシスターかわかりませんが、この私を推挙するとは。名声が高いというのも困りものですね。しかし、全く恐れ多いことですが、推挙されたからには期待に応えざるを得ません。セリア嬢、貴方の望みを叶えてあげましょう」
「い、いいのですか? 私、まだ何も言ってないのに」
「構いません。無垢な女性の頼みを聞くのは、ジェントルメンたるものの務めです。膝枕もそのうちの一つだったと理解していただきたい」
「す、凄い! 本当に紳士だ! その、利益は山分けにしますので、是非よろしくお願いいたします!」
「ええ、こちらこそ。貴方のお力になれることを、嬉しく思うばかりです」
「は、はい! では案について、そのじゃあリビングでお話しても?」
「ええ。紅茶でも嗜みながら、ね?」
俺はシャーロットの「きっしょ」という呟きを無視して、セリアちゃんとリビングに向かった。
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