ナツ・スワン、気づき
「メカブ、武器の売り先ってまさか?」
「ああ、この人だよ。まあ売り先ってのも正しくはないけどね」
メカブの言葉に首をかしげる。
「どういうこと?」
尋ねると、先生が口をひらいた。
「さっきメカブが言ったようによ、俺もいつまでも学園でのほほんと教師やってるつもりはねえ。俺は外国人傭兵隊の長だ。戦場を求めて動かねえとならないのはわかるか?」
「えっとそれはまあ」
「なら、簡単な話。自衛できる戦力を持たれちゃあ、こっちとしては商売上がったりってわけだ」
「戦いが起こったときに、自分たちを頼らざるを得ないよう武器を取り上げようってことですか?」
「ああ。それにこの国の貴族にとったら無用かもしんねえけど、今も戦がある諸国に傭兵してる俺たちには必需品だ。安く買い叩けるうちに買っておきたい。そこで、長老の力を借りたいというわけさ」
メカブの思惑を理解する。
「武器の売買の仲介をメカブはやろうとしてるってこと?」
「そんな感じ。俺たちが武器を取り扱うから角が立つんであって、他人にやらせたら関係ないからな」
たしかに、言われてみれば私たちがやるから問題なだけで、私たちがやりさえしなければ問題はないと言える。それに売り先が傭兵というのも悪くない。買ったものを高値で買い戻さなければならない、というのには憤りを覚えるだろうが、武器ではなく戦力といった形で買うのならば、幾分か溜飲は下がるだろう。
「それに、この武器の商売にはリスクがある」
メカブの言葉を聞き直す。
「リスク?」
「うん。誰もやっていない今始めることにはアドバンテージがある。だけど、それは買う段階においてだけ。売る段階までに大貴族が真似てきたら、もう売るときには勝てない」
「あー、まあそれはそうかも。人員、財力もろもろボロ負けしてるしね」
「そうそ。大軍を擁す勢力に勝つには、局地戦に持ち込んで資源不利を誤魔化したり、有利な地形で敵が戦える人数を絞ったり、精鋭で質的有利をとったりしなくちゃならない。だけどどれも俺らには難しいから、そういうのが得意な専門家に投げようって話」
昨日までぼーっとしていたようなメカブだけれど、しっかりと考えていたみたい。いや、今日先生を呼んだことを思えば、考える時間はない。もとから分かっていたのだろう。
それに戦いの知識を応用できる能力……やはり、メカブはすごい。
ただでも、一点懸念点がある。
「メカブ」
「何、ナツ?」
「私たちのどこに儲けがあるの?」
「仲介料。ちょうど俺が今受けてるパーティーに行けるくらいの」
「なるほど、でもそれは私が仲介するだけじゃない? メカブは何をするの?」
「今したじゃん」
「つまり、先生を紹介したからそれで仕事終わりってこと?」
「うん。ちゃんと報酬は三等分してあげるからな」
こいつ、ほんま……。
すっと拳を握ったとき、セリアちゃんが口を開いた。
「あ、あの、それは嫌です……」
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