ナツ・スワン、されど、正当なる高貴な血統。


 ナツ・スワン。セア国、王妃唯一の娘であり、正当なる王女。先祖代々、尊き血筋を受け継いできた、高貴なる存在である。


 自慰を知らず、本能に従い長時間も耽ってしまう大いなる性欲の持ち主。


 されど、ナツ・スワン。セア国、王妃唯一の娘であり、正当なる王女。先祖代々、尊き血筋を受け継いできた、高貴なる存在である。


 ……恥ずかしいいいいいいぃぃぃ!! なんだこの私のプロフィールは!?


 帰宅すると、私はベッドに倒れ込み、バタバタと悶え苦しんだ。


 終わってる……。私、かなり終わってる。


 ふとメカブと最初に会った日のことを思い出す。


 ***


 彼は取り込むべきだ。きっと私の心強い味方になる。


「わかったけど、なーんか癪だなあ。そっちこそ、私見てえっちなことしようとしないでね」


 とは言ったものの、別にそれで取り込めるなら手を出してくれていい。


 どうせ私は恋とか、そういうのはわかんないし。


 なんて思いながら、私は毛布を被った。


 ***


 と、夜にするちゅーが最上級のえっちなことだと認識していた私は、そんなふうに思ったのだ。


 ……うん。あのときの私、どうにかして殺せないかな。


 水たまりより浅い性知識しかないにもかかわらず、何を余裕ぶって、「わかったけど、なーんか癪だなあ。そっちこそ、私見てえっちなことしようとしないでね」と言ったのか。


 水たまりより浅い性知識しかないにもかかわらず、何を余裕ぶって、どうせ私は恋とか、そういうのはわかんないし、とスカしていたのか。


 顔に熱が上ってきて、また悶え苦しむ。


 い、いやいや。そういう軽口を叩くのは私の本来の性格、恋がわからないのも本当のこと。何を恥ずかしいことがあろうか。ただただ、生来、痛い女なだけだろう……傷つく。


 はあ、悲しい。


 自分の中でこれほどの嘆きようなのだから、人にバレていたらどうなるのだろう。


 爽やか純情気取りの、むっつりエロ女とでも思われたりしたら……。


 考えるまでもない、死ぬ。恥ずか死で死ぬ。相手を道連れに。


 そう思えば、昨日メカブに聞かれていないか不安になってきた。


 い、いや、大丈夫寝てたはず。メカブは寝てた。


 あれ? 男と寝ると子供が出来るってシスターは言ってたよね?


 でも、私が出来ていないということは、ただ寝るだけではないのか?


 シスターが嘘をつくとは思えないし、寝るになんらかの条件があるはず。


 距離か? 多分、密着して寝ていないから出来ていないんではないか?


 メカブと同じベッドでくっつき合う想像をしてみる。


 途端に顔が熱くなって、胸が窮屈になる。


 は、恥ずかしい。多分そうだ、こんなに恥ずかしくなるのはエッチなことだからだ。


 暑い。また身体がほてってきてムズムズしてきた。


 手をそっと伸ばそうとした時だった。


「な、ななな、ナツさん?」


「きゃあっ!?」


 ついつい悲鳴を上げてしまったものの、慌てて取り繕う。


「ご、ごめんね。おっきい声出して」


「わ、わわわ。すみません! 帰ります!」


「大丈夫だから、で、どうしたの? 珍しいね。セリアちゃんが私を訪れてくるなんて」


 と、尋ねる。


 セリアちゃんは、シェアハウスしている同居人の一人。いつも部屋に篭っているので、こうして私を訪れるのは珍しい、どころか初めてだった。


「はい、そのメカブさんという方が、この近くに住んでいるらしくて。顔の広いナツさんならご存知かと」


「メカブ? メカブなら同居人だよ? 会ったことないの?」


「え、そ、そうなのですか? すみません、私、殆ど自室から出ないので」


「あはは……。ま、それはともかく、メカブに用があるんだ?」


「はい」


「そっかあ、でも部屋にいないってことは、どっか行ってるかも。シャーロットさんは私より先に帰ってたし、なんなら玄関前で仁王立ちしてたし、知ってるかも」


「そうですか」


「うん、じゃあ今から聞きに行こっか」


 私は立ち上がり、シャーロットさんの部屋に向かう。すると、セリアちゃんも後ろについてきた。


 部屋は近く、すぐ辿り着き、私はドアを開ける。


「シャーロットさん、メカブ知らない? セリアちゃんがメカブに用があるん、だっ……て……」


 部屋の中にはメカブがいた。シャーロットさんと密着して寝ているメカブが……。


 あまりにも刺激的な光景を目の当たりにした衝撃で、私の喉から勝手に声が出た。


「こ、ここここここ子作りしてるぅ!?」

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