新米貴族、ひざまくら、くらくら、まっくら!!


 辞表を出して『舐めるな』とキレた文官に突き返されて、無事帰宅。


「帰ってきたわね、メカブ!」


 玄関で仁王立ちのシャーロットの横を通り過ぎるが、猫のように襟首を掴まれる。


「ちょっと待ちなさい」


「はい」


 大体何をしたいかは予想していたので、嫌だなあ、という本心に従い、一度は拒んだものの、素直に応じることにする。


「貴方、私に膝枕をさせなさい」


「それでシャーロットの気が済むのならいいよ」


「あれ、案外素直ね」


「いやさ、俺も昨日は申し訳ないなって思ってたんだよ。ごめんな、折角ダンスが成功したっていうのに、そのことについて何も話せなくて。俺も、シャーロットのことを、もっと褒めたりしたかったんだけど、貴族の人と交流しないといけなかったから、ごめんね」


「えっと、あ、うん、いいわよ?」


「良かった。シャーロットにとっても大きいことだったから、言いたいことも言わせてあげられず、気持ちを無碍にしてたことを後悔してたんだよ」


「……なんだ、わかってるのね」


 心にもないことを言うと、シャーロットは満足したみたいだった。


 懺悔室で聞いておいたお陰で、完璧なムーブをかますことが出来て良かった。聞かなければ、謝らず今頃背中を理不尽に蹴られていたところだ。


「で、でもよ、もう私、母性が抑えられないの。膝枕くらいはさせてくれてもいいんじゃないかしら?」


「んー、まあそれくらいなら」


「下手に出ると、すぐ上からになったわね」


 シャーロットは、まあいいわ付いてきて、と俺を先導する。


 案内された先は、シャーロットの部屋。女の子らしい薄いピンクと白を基調にした家具が備えられた、何とも普通の部屋。ただ、俺とナツが部屋を半分こしてるせいで、普通の一人部屋が広く感じて感動を覚えた。


「来てくれるかしら」


 広めのベッド上で正座したシャーロットは、ここここ、と腿をぽんぽんと叩く。


 急に気恥ずかしさが来たけれど、母性全開のシャーロットからは強い包容力を感じて、弱い磁力に引き寄せられるように頭を膝にあずけた。


「よしよし、頑張ったね、偉いね」


 心底嬉しそうに目を細めるシャーロットに優しく頭を撫でられる。柔らか太ももの上、花のような甘い香り、撫でられ心地は眠りたくなるくらい気持ちいい。


「あぁ、満たされる。一生このままがいいわね」


 怖いことを言っているのに、それをゆうに上回る安心感。毛布にくるまれたときの百倍以上の心地良さで、とろとろと身体が溶けていきそう。


 微睡んできてしまい、このまま眠りにつきそうになったとき、部屋の外から足音が聞こえ、扉が開かれた。


「シャーロットさん、メカブ知らない? セリアちゃんがメカブに用があるん、だっ……て……」


 固まったナツ。と、その後ろにピンク髪の胸の大きな女性。


 ……なるほど。性的な目で見られると言われる理由がよく分かる。


 大きく育った胸に、くびれた腰つきの安産型体型。顔は涙ボクロが特徴的な超のつく美人。ナツが健全なエロだとすると、この子は不健全なエロだ。


 どうやらお悩み相談の主らしいけれど、ちとまずい。紳士だと紹介したのに、膝枕されてるところを見られてしまった。


 案の定、セリアちゃんと呼ばれた美少女は、嘘つき! とでも叫ぼうとするように口を開けかけた。


 が、その前にナツが大きい声が出した。


「こ、ここここここ子作りしてるぅ!?」



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