第32話

「雷さんは俺の兄で、すごい優しくて」


「えへへ、照れちゃうよー」


「いつも、助けてもらってて」


「もー雪見くんったらー!嬉しい」


「楓さんのお父さんも、優しい方なんですよ」


「へー!お父さんと仲良し?いいね」


「…はい!」


「じゃ、楓さん。駅まで送ります」


「帰っちゃうのー?」


「おい、雪見。仕事は?」


「すぐ戻る」


いいのに、私を送らなくて。でも道がわからないし、駅まで送ってもらう。


「無理言って会わせてすみません」


「いいですけど、仕事は?」


「大丈夫です。それより楓さん、負のエネルギー集めてないです」


「え」


「隼人は、くよくよしがちなんですよ。でも、大丈夫でした。あの中学生からも」


「…そう、だったんですか」


私は以前、嫉妬や妬み、怒りのエネルギーを集めていたらしい。それをたくさん抱えて、死ぬ決心を定めようとしていた。

だけど、雪見さんと会って、それはもうやらなくなったようだ。


「雷さんの元気なエネルギーを浴びてました!楓さん。俺、雷さんのこと大好きなんですよ」


「え、はぁ…」


「だから、俺、仕事頑張れます!まじです」


「…よくわかりませんけど、いいですね」


「楓さんは彼氏から元気もらってます?」


伊織くん?

うーん?


「別に…」


「そうですか!なら、自分で自分褒めるといーすよ!今日は仕事してまじ偉すぎるー!とか」


「私、お父さんが褒めてくれますから」


「えー、ずりぃー。住職めったに褒めないんすよ?」


「頑張ってください」


「いや、俺!めちゃくちゃ頑張ってますからー!」


「じゃあまた」


私はゆるりと、この仕事を続けるつもり。

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拝み屋さん えいみ @fukuharaeimi

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