第23話

「息子さんは、酷い顔でした…」


雪見さんは、相当落ち込んでいる。


「そうか」


「冷蔵庫から、出られてよかったです。ここに、残らなくてよかった」


「そうだな」


「友達に伝言を預かりました」


「そうか。私が伝えておこう」


「俺の持ってる金は、お前に全て譲渡する」


「なるほど」


もう電車の来ない、駅のベンチにいる。


「なんで、あんなことしたんですか?」


「あの人は、金に目が眩んだ。残念だ」


「金ですか…?」


「宝くじだそうだ」


「…なるほど…」


そういう大金だったんだ…。


「あの海の家は毎年やってくるのを楽しみにしていた方が、ひしめいてる。あんなに人が大勢いるんだ。おそらく取り壊しは不可能だろうな」


「そうですね…」


2人の空気は重いけど、私も話していいんだろうか?


「お金を、息子さんはお父さんにあげなかったんですか?」


「みんなに、わけることにしていたんだ。ここによく来る、常連の」


「それで…?」


「全て、欲しかったんだろう。息子を殺してでもね」


「…そんなの、考えられません」


「そうだ。金は狂わせるんだよ。そうだろ?雪見」


「そうですね…」


「雪見さん。助けてくれて、ありがとうございました」


「いや…。でも報酬もらわないんですよね、サーファーの人から」


「それはもちろん」


「あー!くそー!こんな頑張ったのにー!」


「雪見さん。見直したと思ったのにがっかりです」


「え?なに?…つーか、腹減った」


「では、楓さん。タクシーを呼んでいます。一緒に帰りましょう」


「あ、はい」


「え、俺は…」


「雪見は歩いて帰ればいい」


「そんなー」


「楓さん、お腹空いてますか?なにか食べて帰りましょうか」


「住職!楓さんにナンパしちゃだめっすよ?彼氏いますから」


「なにを言ってる。楓さんは疲れているんだ。さぁ、タクシーで行きましょう」


「俺も疲れてますってばー!」


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