第22話

「ふむ、探しているね」


もう3時…眠たい。

海の方が光ってる。


「海の家は真っ暗です」


「よし。鍵は壊すといい」


「はい。では、行ってきます」


雪見さんは、歩きにくそうに階段を上がっていった。


「では通報しよう」


「今…ですか?」


「…寺の天野と申します。海の家にですね、ご遺体があるという話がありまして…」


そんな直接的な…


楓さん、今のうちにあの人を砂浜へ。


え?


電話中なのに…住職の声が…


そんなの考えてる暇ない。真っ暗闇の中にある光。それを捉えて、引っ張るだけ。誰もいない見えない暗闇。腕を伸ばし探る、これだ!

ぐっと引っ張って打ち上がる。


慌てて駆け寄って確認する。もし、違う人だったらまずい。


「だ、大丈夫ですか?」


懐中電灯を照らすと、ゴーグルを外した。さっき見たおじさんで間違いない。驚いた顔をしているから。


「…こんな時間になにしてる」


睨まれた。


「おやおや、動かないで下さい」


住職もやってきた。


「なんだ、お前は」


「楓さん、今、お友達が電話してるんです。海に光が見えますか?」


光…?


「少し、熱を持つ。感覚を研ぎ澄まして」


海の中、暗いけど、暖かい、でも、生き物ではない…


「あった!」


思い切り、腕を振って海上から出す。

これを、私の手に、来い!


「見つかりましたね」


バイブしてる、チャックのついたビニールの保存袋に入ったスマホ。


「連絡しておきます。…ああ、携帯が見つかりました。…はい、改めてご連絡致します」


「…な、なぜ!どこからそれを…」


おじさんは、私が引っ張ったせいなのか、起き上がれないようだ。


「楓さん、それを」


「あ、はい」


スマホを住職へ渡す。


「あぁ、なるほど。あなたは、息子さんが大金を掴んだことを知った」


住職はサイコメトリが使える。これは、物から記憶とかそういうのを読み取れるらしい。


「なんの、話だ」


「夜に、魚がたくさん釣れるようになったと話した。そして、殴って、海面に顔をつけ、溺れ死なせた。この携帯は、ポケットに入っていたようで。もし濡れたら困るからと」


「お前たち…」


「住職!警察来ました」


雪見さんの大きな声がした。海の家からだ。


「ああ、こっちだ」


おじさんは、今どんな顔をしてるんだろう。


「犯人はこちらにいます」

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