第21話

「私は、邪魔?」


「違います。楓さんが、嫌な物、見てしまいます」


「…怖いです。でも…助けてあげたい。お友達の、ご依頼に応えたい」


「…では、住職呼びますが、楓さんもいて下さい」


「はい」


「…あ、雪見なんですけど…」


雪見さんは、とても小さい声で電話していた。


しばらくすると、タクシーで住職はやってきた。


「まったく、私を眠らせてくれないんですね」


「すみません…キャバクラ行ってました?」


「そうだよ。まぁ、しょうがない」


「すみません、私があてにならなくて…」


「楓さん。夏らしくて素敵な格好でいいですね」


「あ、ありがとうございます…」


いやいやそんな話してる場合!?


「雪見、依頼者がご来店していた。彼と直接話したよ。連絡しても、既読にならない。通話も出ない」


「…と、ということは」


「携帯を、海に落としたんだろう。壊れてはいない」


「それを、おじさんが、探してる」


「そうだな。見つかってはまずいからね。雪見たちがいないであろう、深夜にまた捜索活動をするだろう」


「…え、そうなんですか?」


「楓さん、遅くなってしまいますが、構いませんか?」


「伊織くんにメールしておきます」


仕事が深夜までになります。でも、住職も一緒です。


これならいいかな。


「二手に分かれよう」


「えー、俺1人ってことですよね…」


「もちろん。私が通報しておこう」


「はい…」


「私は、何をしたら…」


「おそらく船に乗って移動して、ライトをつけながら潜っている。その人を私たちの前に引きずりだしてほしい」


「で、できますか?私が…」


「もちろん。生きてる人間ですよ」


「…わかりました」

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