主人公はある日、仕事先で見覚えのないフロッピーを見つける。自宅でデータを開くと謎の文章が書かれていた――
まずはFD(フロッピーディスク)を知らないとタイトルで「???」となるかもしれません。
FDとは、スマートフォンで画像の保存先として使うSDカード(microSDカード)みたいなものでデータの保存先として使います(今は見かけませんが)。
フロッピーのデータを見たという、普通にとりそうな行動からスタートする物語です。身近にパソコンがあるからリアリティーがあり、怖いよりも奇妙な物語で主人公の行動に最後まで目が離せませんでした。
短編なのであらすじはごく簡単に。
冴えないサラリーマンが、ある日自分の机で見つけたフロッピーディスク、そこには自分の人生が記録されており……
という感じで始まるのですが、後は読んでのお楽しみ。
どこかにいそうなアクのあるキャラクター、その男が徐々に嵌まっていく、というか流されていく課程のジワジワとした感じ、そこから展開する怒涛の「転」の章の広がり、そして意外な形での「結」まで、ノンストップで読める物語です。
ホラー小説の面白みの一つに、ジワジワ迫る嫌な予感を楽しむ、というのがあると思いますが、本作はまさにこの楽しみに満ちています。
そして最後に訪れる意外な形での真相もまたインパクト十分!
さっと読めて背筋の寒くなるようなホラー短編でした!
フロッピーディスクというと最近の若者はワードやエクセルの保存ボタンでしか見たことがないかもしれませんが、昔はそういう記録媒体があったんですよ。
保存容量が小さいものだから、ゲームを一本インストールするために十枚以上のフロッピーを入れては抜いて、入れては抜いて……
そんな老人の昔話はいいとして、本作はその懐かしのフロッピーディスクを題材にした一作。
ある日、仕事中に一枚のフロッピーディスクを見つけた主人公。
興味本位で家に持ち帰り、中身を見てみるとそこには「おれ」という名のテキストファイルが。
そこには主人公のこれまでの人生の内容が細かく記録されていた。
それを見た主人公は今日失敗した仕事の記述を修正し、上手くいったという内容に書き換えると、現実でも自分のミスがなかったことになっており、これを皮切りに主人公はこれまでの人生を思うままに書き換えていくのですが……。
全4話と短いながらも、設定はシンプル、起承転結もはっきりして、文章も読みやすく、オチもバシッと決まっており、短編のお手本にしたいような一作です。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)