第10話

もうすっかり、真っ暗だ。駅まで歩いている。


「はぁ、なんか疲れましたね〜」


「特には」


「歩いて帰るのしんどすぎません?」


「え、電車まだありますよ?」


「だって、金ない」


「雪見さん、報酬もらったじゃないですか」


「これはそのまま住職にお渡しします」


「そう、ですか」


「楓さんの分でもあるんで」


「…ありがとうございます。ところで、生徒たちは物を返してくれると思いますか?」


「うーん、そもそも先生が自分でなくしてると俺は思ってて」


「え」


「不運が続くのは本人のせいです。たぶん。呪われてると思ってるから、なんでも不運だと感じる。あの先生は、そんな感じかな」


「なら、なんであのとき私の話に合わせたんですか?」


「なんとなく」


「…雪見さん1人でもできたのでは?」


「できないですよー。緊張しちゃうし?」


「そうですか?」


「でも、あのノートはよくないですね。みんなの嫌な気持ちがつまってる」


「…なにか感じてたんですか?」


「怒り、かな。だから焼いた。ま、全部は持ち出してないから、たぶん明日には見つかって、先生はしばらく謹慎かもね」


「な、なんでそんなこと」


「生徒たちの気持ちが、悪い方向に行きそうだったから。だから、一旦気持ちをリセットできるかなって」


「歩き回ってたのは…」


「なんか、怪しい雰囲気がけっこうあったんですよ。それはどこからかなって見てて。まー全員がそんな感じかな」


「私には見えなかった」


「あーそうでしたね」


「わかってたのに、なんでわからなそうにしてるんですか?」


「そんなこと言ったって、信じてくれませんから。楓さんの冷静な判断が、しっくりくるんですよね〜」


「見当違いですが…」


「いや。当たりです。楓さんは、周りの人もよく見れるから。俺は自分のことばっかなんで。クラスの雰囲気とか、そういうの俺わかんないんで」


「…そうなんですね」


「んじゃ、これで」


もう駅か。


「また連絡しますんで。あ、金はそのうちまとめて払うかも?」


「わかりました」

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