第16話

その夜、家が揺れて目覚める。


慌てて外に出ると、収まる。また入ると今度は、ギシギシ、ガサガサと…異音がする。

眠れない…なんだこれは…

眠ろうとすると、家が揺れる。


その音は一日中続いた。


「おはようございます」


「あ、おはようございます…」


隣の部屋のカフェで働く美女は、元気そうだ。店の前を掃除している。


「昨日お坊さんたちが来てくれたおかげで、よく眠れるようになりました!ほんと良かったです」


「そう、ですか…」


「信じてもらえないもしれませんが、私取り憑かれてたみたいで…。でも、追い出してもらいましたから!スッキリしてます」


追い出して…


まさか…うちに…?

あの揺れと、音が毎日続くのか?


「すみません、急なんですけど、引っ越したいと考えてて…」


「え、そうなんですか?それは急ですね」


「本日には…」


「え!そうなんですか?お仕事大変なんですね。お手伝いできることあったら、言ってくださいね」


彼女の笑顔が、もっと見たかった。プライベートを知りたかった。でも、もう諦めるしかない。このままこの部屋に住むなんてできない、耐えられない。

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