第14話

部屋は綺麗だった。でも、男性と2人なんて、ちょっと嫌だ。伊織くんが怒り出しそう。


「かわいいね、君。なんで坊主といるの?」


「仕事です」


「へぇ?」


なにか、この部屋にヒントないかな。

…あ。


「天井って、開きますか?」


「は?そんなわけないだろ」


「もしかしたらネズミかもしれなくて」


「ありえないね」


「そうですか…」


ガサ。


え、天井から…


「なんだ!この音!」


「わかりません…ん?」


雪見さんから電話?今?


「…はい」


「楓さん。天井の上。なんか物をぶち上げて壊して」


まだ天井はガサガサ言ってる…


「…え?」


「たぶん、俺…楓さんたちのいる部屋の上にいる」


え、でも、物ぶち上げなんてしたら、雪見さんに当たるかも…じゃあ…


右手に力を込め、天井一つを破る。


「な、なんだ!」


「あー!出口!」


ひょっこり雪見さんが顔を出した。


「部屋の屋根裏繋がってますね」


そうすると、近くにいた男性は青ざめた。


「な、なにしてる!」


「ネズミがいないか調べてたら途中、板がなくて。通れたんです。で、ここに出てきたんです」


「危ないだろ!さっさと戻れ」


「はいはい」


雪見さんは再び天井へ。


「楓さん。そいつを逃さないで」


「わかりました」


まだ、携帯は繋がっていた。ようやく切れたけど。


男性はそわそわしている。


「あいつはなにをしてるんだ!なにが坊主だ!」


「私もよく、わかりません」


「まったく、迷惑なもんだ!修理させないと!」


「失礼します」


部屋に雪見さんがいきなり現れた。カギが空いていたようだ。


「勝手に入るな!」


「トイレ借ります」


「はぁ!?…だ、だめだ!」


慌てた男性は雪見さんの腕を引っ張る。


「いやいや、困りますって」


それを振り切って、トイレのドアを開けた。


「ああ、天井開いてる」


「な、なにを…」


「さっき、俺が開けました。開けやすくなってた。ここから上って…」


すると、男性は玄関に走ろうとした。から、足を引っ張る。もちろん、直接ではない。


「う、いて…」


思い切り転ばせてしまった。すみません。

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