第12話

「遅刻?」


「依頼者の約束には間に合います」


もう45分です。


「カフェの場所、まじよくわかんなくて」


「名前見れば探せますよ」


看板を見て探す。


「楓さんは、デートとかします?」


「しません。店ありました」


「おお!近いじゃん!」


仕事だっていうのに、なんでそんな余裕なんだか。


「髪の毛、結んでませんけど…私、変じゃないですか?」


「え?なにが?」


「もういいです」


何も見てないようです。もういい。勝手にしよう。


時間までしばらく待ってから、中に入る。


「こんばんは。ご依頼を受けてやって参りました」


「あの、あなたは…お坊さんですか?」


「そうです」


雪見さん、怪しまれてる…。だって、坊主じゃないし、髪長いし、ピアスしてるし。


「そちらの方は?」


「あーえーと?助手です」


なんでそんな考えるんだか。


「よろしくお願いします」


「はい、よろしくお願いします」


お店の方は、若い女性。私は未成年だけど、この方は成人してると思う。にっこり優しく微笑んでくれた。


「こちらにどうぞ」


席を薦められて、急に思い出す。私、今日の依頼内容、聞いてない…。


「コーヒーは飲めますか?」


「飲み物はけっこうです。お話お伺いします」


「…はい、あの…実はこのところ…」


非常に言いにくそうにしてる。


「ゆっくり、お話頂いて大丈夫ですよ」


「ありがとうございます」


勝手に声かけてしまった。雪見さんはぼんやりして座ってるだけ。


「寝ていると、天井から、音がして…」


「そうですか…」


「怖くて、眠れません。私が起きていると、音がしないんです。だから…体調も悪くなって、お店もできない状態なんです…」


可哀想に…この方はキャバクラには相談しないだろうけど、どうやって依頼を受けたんだろう。

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