ネネ

 「で、ネコ型宇宙船がみたいのでしたな?」

 「はい。」

 

 のっそりと歩き出したナッチェの後をついていく

 ネコ型宇宙船は地下3階にあるらしく、エレベータで降りた

 

 「いいねこだなあ。」

 あたしは、ネコ型宇宙船の安らかな表情をみていった

 まるで生きているみたいだ

 「でしょう、ネネっていいます。人工知能で疑似的な人格が付与されていて、まるで猫ですよ。」

 「ああ、そりゃかわいい。」

 あたしは疑似的な猫の仕草に癒されていた

 

 ホモ・サピエンスや猫の認識なんて機械で再現出来てしまうのだ

 ただ、まだタンパク質の肉体を持つに至っていないだけなのだろう

 機械的な肉体、それを認識して、最善の状態に保つロボは既に地球でも普及している

 ロボットが意識を持つのは今の時代、常識的なこと

 それは、宇宙船に至っても同様だ、ネネコがそうであるように

 おそらくこのネネにネネコの意識を引き継ぐことさえ可能であろう

 意識とは一体?

 あたしという魂を移すことは出来ない

 タンパク質が意識が脳に刻まれたあたしが誰なのか

 あたしであるとは一体?あたしだよ

 すきだよ

 でもあたしってだれ?

 

 ただ刻まれているだけ

 そのカタチがあるだけ

 それを仮想世界に再現したらあたしはどうなるのだろうか

 あたしは死ぬのか

 どうして死ぬ?

 すべての記憶を失えば死ぬのか

 命ってなに?

 

 「美しい猫に乾杯!、完敗!、ありがとう!。」

 ナッチェは蕩けそうな甘美な表情で恍惚と叫びネネを撫でた

 「猫!それは素晴らしい!。」

 あたしはそう言いながらネネの中に入った

 「どうしたの?チル。」

 「ああ、大丈夫よ。あたし猫が好きなのよ。」

 「犬なのに?初耳だよ。」

 「ごめんねこにゃんこ。」

 「かわいすぎだよ、チル。」

 

 キアは呆れた様子であたしをみた

 

 ネネは最大15人乗りの大型宇宙船だ

 愛らしい黒猫を模した造りになっている

 

 【ネネ】

 ネコ型トランスフォーム宇宙船

・レミン式ワープ航法

 レミン式ワープ航法による致死率と重軽傷率

 強化人間、亜人 致死率1% 重軽傷率40%

 ホモ・サピエンス 致死率99% 重軽傷率99%

 ・トランスフォーマー機能

 宇宙猫フォーム 宇宙空間を推進する

 陸猫フォーム 陸を逞しい猫のように移動する

 美少女フォーム 黒髪のアニメ美少女の姿になる 2足歩行で両手も使える

 潜水猫フォーム 水中を移動する潜水艦となる

 船猫フォーム 船になる

 飛行機猫フォーム ジェット機になる

 ユーリー工業のトランスフォーマ―テクノロジが活かされている

 

 「水星の宇宙船と比べてどうですか?」

 「流石に水星のには劣りますね、けれどレミン式ワープ航法が地球でも実用化出来る技術があるのだと驚きました。」

 「ああ、あれはレミンに教わったんだ。」

 「父さんが???。」

 「ってことは、やっぱり君がレミンの―」

 「娘です。」

 「瞳と雰囲気が何処となくレミンに似ている。」

 

 ナッチェが父さんの知り合いだったなんて驚きだ

 それ以上に父さんが水星を出た後、一度地球に訪れて来ていたのが嬉しかった

 父さんの足跡を辿っているみたいだ

 

 「父さん、地球に一度帰ってたんですね。」

 「元気にしてるかレミンは。」

 「いいえ、行方不明なんです。」

 「そっか―、一体何処で何をしてるのやら、あの人はいつも俺達の先を行ってしまう。」

 「生きてますかね。」

 「生きてるんじゃねえのか、あの人が死ぬとは思えない。」

 「だったらいいですけど。ふふ。」

 「ま、生きているとしてもう年寄りだろうがな。」

 

 あたしの自慢の父だ

 ナッチェの言葉はあたしの父さんへの想いを深めた

 きっと大丈夫、そう思える

 

 「今から13年ほど前だ、レミンが地球に帰って来たのは。当時レミンは35で私は38だった。その時既に私はケリュヌス社の取締り役になっていた。」

 「丁度それくらい前です、父さんが私たちを置いて旅に出たのは。」

 「レミンの事は子供の頃から知ってたよ。明晰な頭脳を持った男だった、彼が水星に行くと言った時は止めたよ、死ぬだけだってね。でも彼奴は行って帰って来た。」

 「父さんはそういう人です。」

 「彼奴は天才だよ。帰って来るだけでなく、ワープ航法を改良して致死率を1%にしたんだからな。いやになっちゃうよなもう。」

 「うちの父が何だかごめんなさい。」

 

 

 【ナッチェ】

 ケリュヌス社取締役

 宇宙航空工学者

 12歳で宇宙工学の博士号を取得

 メルア合衆国の民間宇宙開発会社、スペースララで技師として5年ほど働いた後、亜人としてシユ国へ帰国し、ケリュヌス社に入社

 33歳の時、取締り役に任命され、宇宙開発の最前線で活躍している

 水星のテクノロジを導入した宇宙船改良に貢献

 ネコ型宇宙船を最初に考案し設計、開発を行った


「で、どうします。ネネ購入しますか?」

「私は気に入ったよ。」

「俺もいいと思う。」

「じゃあ決まりですね。」


 雰囲気と反応から2人がネネを気に入っているのはわかっていたが、一応確認した

 ネネを購入することにした

 

 「レミンの娘ってだけでなく、地球を救ったお嬢ちゃんからお金を取るわけにはいかないよ。」

 「え?。それは流石にダメですよ。ちゃんと払わせてください。」

 「わかったよ、嬢ちゃんの気がそれで済むんだったらな、90億ドリ―だ。」

 「は?高すぎだろ。」

 「軍事研究で作られたものだからね、それくらいはするよ。」

 

 【アート】

 金星のルルリアで使われている通貨単位

 信頼性が高く太陽連合では基軸通貨として使われている

 【ドリー】

 メルア国の通貨単位

 信頼性が高く地球では基軸通貨として使われていた

 メルア国では6ドリーほどでハンバーガーが買える

 読者の住んでいる地球に合わせたイメージとしては1ドルは1ドリーで150円ほどといった感覚だ

 この世界の地球や太陽系、銀河宇宙と、読者の住んでいる世界は全く異なる

 名前が同じものがあるだけだ

 

 

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