ヒト・アジン戦争
「人類は亜人に負けるだろう。」
俺は戦場を見渡して確信していた
「結局、何も出来なかった。無力だあたし。」
チルは茫然と人類のやられる様を見守っていた
戦場で俺達は何も出来なかった
負傷者をみつけては治療し、民間人を避難させることしか出来なかった
世界各地で人類と亜人が殺し合った
人類には兵器があった
亜人の軍事力を遥かに上回る軍事力があるはずだった
「ロテの能力とは相性が悪すぎた。」
チルは空を見上げた
真っ青な晴天だった
ロボット兵機があった
戦闘機も自動で飛び
戦車も何もかもがロボットで可能だったし、人類より優秀であった
勿論、亜人側も兵器は持っていたが、人類の方が10年分ほど進んでいた
けれど、世界都市同時多発ミサイル爆撃によって、戦争開始時ですでに都市の機能は壊滅状態だった
更に、機械は全てロテに操作された
武器を持たぬ人類など亜人にとっては、赤子の手をひねるようなもの
かつて人が亜人にしていたように、次は亜人が人を殺めた
何人も何人も殺めた
亜人削除の会の人たちは、四肢を斬られ晒し首にされた
戦争になると、大抵の人も亜人も碌でもなくなる
「あそこね。」
チルは物陰に潜んで様子を伺っていた
人が収容されている施設だ
人が解体、解剖されたり、強姦されているらしい
チルは助けようとしていた
収容所の中に潜入して俺とチルは絶句した
そこにはみるも無残な人たちの姿があった
皮を剥がれ、紐吊るされている人たち
四肢を斬られ、臓器を抜かれ、売られている
綺麗な男女は、亜人に強姦され、獣臭が充満していた
「こいつらもう亜人でも人でもない。獣よ。」
チルは冷たい声で吐き捨てた
「侵入者か。お、亜人じゃないか。人もいるようだが―、捕まえてきたのか?」
亜人の男はニタニタと笑みを浮かべつつ近づいてきた
「違う、こんなのってあんまりよ。ロテはこんなこと望んじゃいないのに―。」
チルは声を震わせた
「ロテ?。俺達のボス、救世主のことか?」
亜人の男は笑った
「ええ、ロテは人と亜人の共存を願ってる。」
チルは真っ直ぐな目で答えた
「はは、なんでてめえに、ロテ様のことがわかる?あのお方は姿を現さない。だが、俺達が何をしても咎めることもない。」
亜人の男は、痛いところをついてきた
ロテはもうもぬけの殻だ
目的を実行する機械になっている
「でも、かわいそうよ。人にだって心がある。」
チルは訴えた
「だからどうした?」
亜人の男は心底つまらなさそうにチルを見下した
「解放してあげて。ここにいる全員を。」
チルは要求した
「無理な話だぜ。あれをみな。もう理性なんてありゃしない。」
亜人の男は、人を拷問し強姦しているところを指さした
「だったらここで無力化するわ。」
「こわい嬢ちゃんだ。でも囲まれてるぜ。」
武装した亜人たちにチルと俺は囲まれていた
「チルこれを。」
ムゲンポーチから催眠ガス噴射機とガスマスク銃を取り出して、ガスマスクをチルに手渡した
「ありがとう。」
チルはガスマスクをつけた
俺は催眠ガスを収容所全体に撒き散らす
「なんだこの煙は―」
亜人たちは動揺している
強力な催眠作用がある
「窓を開けろ。」
亜人の1人が叫ぶがもう時は遅い
強力な睡魔に襲われた亜人たちは全員眠りについた
「よしっと。」
俺は亜人たちを縄で縛っておいた
「どうして、亜人の嬢ちゃんが俺達を助ける?」
生き残った男の1人がたずねた
「あたしは、争いを望んでない。ユーリ団は誰の命をも助ける。」
チルはいった
「亜人にもこんないい人がいるのだな。」
男は気を失って倒れた
「このままじゃ、人が亜人の奴隷になる時代が来てしまうわ。」
チルは悔しそうに歯を噛んだ
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