おすわり
「お~起きたか。調子はどうだレレ。」
「随分マシになったよ、ありがとう。」
寝不足による疲れは取れたようだ
ただ、未だ山積みの問題に対する懸念が憑いているために表情は曇っている
「それで、あの瞳は何なんだ?」
「瞳???」
レレは目をパチクリさせていた
やはりあの映像は、リアルタイムで繋がっていたのかも知れない
「知らないのね。」
「ああ、わからない。」
「昨日貰ったメモリーカードの映像の最後に急に出て来たんだよ。」
「まさか―。」
どうやら思いあたることがあるようだが、信じられないようだ
「だとしたら無事でよかった。」
「でもメモリーカードは破壊してしまったよ。パソコンごと。」
「だろうね。それがいい。」
レレは恐怖で固まっていた
「私もロテに面会してな。」
「よく蒸発せずに済みましたね。」
「ああ、記憶をだいぶ持っていかれてしまったがね。あれは心の闇に憑いて、その記憶を喰らい尽くした後肉体を蒸発させる。」
「ギィカからどうやって抜け出したのですか?」
「強力な麻酔を自分に打って意識を失わせることで抜けだしたよ。これは賭けだったが、上手くいった。あとはロボに意識を失った俺を運ばせた。」
「なるほど。」
ギィカは能力だけではない
それは動き、心の闇に憑りつく
しかし、あたしたちのようなDNAを持った生物ではないと推測する
この世界の理から外れた別世界のものに思える
ロラベルの魔人のようなものであろう
「ギィカはロテの半径3メートル以内の精神ある者全てに作用する、ロテに会ったところでギィカに蒸発させられて終わりだ。」
「そんな―、あんまりよ。」
「でもどうしようもないだろ。機械により作られたロテの疑似的な記憶と計画から推測するに、この戦争は人類の9割が死滅する迄続くだろうと予想されている。」
「9割が死滅―。」
ロテの記憶は全てギィカに喰われている
それでもロテの肉体が消えていないのは、疑似的に機械により生成されている記憶と計画によるものだ
記憶が失われる前のロテを元に自動生成され続けている
そもそも、心や魂のようなものは存在するのであろうか
人があると思い込んでいるだけではないだろうか
それは、粒子とエネルギーのゆらぎの夢でしかないのかも知れない
それでも、私は未だロテに心と魂があると信じてもう一度会って話がしたかった
「やりすぎだとは思う。でも、これくらいやらないとこっちもやられる。私は人を保護しつつ、シユ国を発展させることに尽力することくらいしか出来ない。」
「何も出来ない自分が悔しい。」
「どうしようもないミサイル爆撃もドローン爆撃も鳴り止まない、今日もまた人が死ぬ。」
「うぅ―」
あたしは呻くことしか出来なかった
ピロリロリン
辺りの人々のスマホが一斉に鳴り響く
「地球政府からの緊急放送だ。」
あたしたちはスマホの画面をみた
[地球政府放送]
これからシユ国に核ミサイル攻撃を行います
「は?バカなのか?」
レレは呆れた様子で声を漏らした
「そんなことしてもギィカに操作されてやり返されるだけなんじゃ―」
「そうだよ。もう自棄になったんだろう。」
「ってことは、世界中の都市がギィカに操作された核ミサイルの攻撃を受けるかも知れないってこと?」
「わからない、でも可能性はある。」
「あぁ、そんな―、俺の家族も危ない。」
キアは深刻そうな表情で虚ろな目をした
「残念だが。人の9割は滅ぶ。殆ど確定だ、ごめんとしかいいようがない。」
レレは俯いた
「どうしたらいいの。」
あたしは天を仰いだ
祈ることしか出来なかった
神よどうかお救いください
「お困りのようだね。助けてやろうか、そこの女。」
「え?まさか―」
「久しぶりだね。」
アンノーンだ
やっと会えた
「どうやってこの国に入った。誰だ貴様は。」
レレは驚愕していた
見知らぬ女が現れたのだ
厳しい監視がされているシユ国においてそれは、あるまじきことであろう
「おすわり。」
アンノーンはたった一言おすわりとだけいった
「ワン。」
レレはその場で犬のように座ってワンと鳴いた
「あたしにかかればまあこんなものよ。」
アンノーンは不敵な笑みを浮かべた
これだ、この奇跡の力
ロラベルの悪魔やギィカに似ている、まるで別世界のような力
でも、どうしてここにいるのであろうか
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