再会

 あたしたちはシユ国第一軍事施設に来ていた

 ここの地下10メートルにあるかたく閉ざされた部屋にロテは籠っている

 セラミックと合金、合成樹脂が3層になっている高強度な造りになっているらしい

 

 「本当に大丈夫なのだろうな。」

 レレは訝しむような瞳でミチコをみた

  

 「疑い深い男だな。ブラッドチェインは絶対だ、ロテは完全に支配した。」

 「信じ難い能力だよ。すぐにはいそうですかとはなれない。」

 

 「でも、それに賭けるしかないよ。」

 あたしは一度その奇跡に助けられている

 

 ブラッドチェイン

 その能力であらゆる地球人を支配できるらしい

 彼女は、その力でロテを支配してギィカを追い出してやろうか?あたしに提案した


 [数時間前]

 「ロテを支配してギィカを追い出してやろうか?」

 「お願いします。」

 

 「待て、ギィカがなくなればシユ国はどうなるんだよ、核ミサイルで爆撃されて滅びろとでもいうのか。」

 レレはミチコを睨みつけた

 

 「地球人全員を一時的に支配して核ミサイルを起動できないようにすればいい。」

 ミチコはさらっと普通のことのようにいった

 [終わり]

 

 そういう経緯で、ロテに会いにあたしたちはシユ国第一軍事施設に来ていた

 

 「このエレベータに乗ってロテのいる部屋に行けるが、ギィカが発動していれば、意識ごと持っていかれるぞ。それでも行くんだな?」

 地下へのエレベータの前でレレは、あたしとキアとミチコに確認した

 

 「行こう。」

 あたしはエレベータの中に足を踏み入れた

 「大丈夫だよ。あたしの力は絶対だ。」

 ミチコは断言した

 「わがったよ。でも私は行かないよ、ここからモ二ター越しに見守ってる。」

 レレは観念した様子であたしを見送った

 

 「その力があれば地球を支配することも容易だろうに、どうしてあたしを助けてくれるの?」

 エレベータの中であたしはきいた

 

 「支配するだけじゃ退屈だから、お前みたいなバカに地球人を託してみたいんだ。」

 「あたしに?」

 「そうだ。亜人と地球人類のハーフであり、地球人類に奴隷にされ過酷な暴力を受けて来たにも関わらず、和解を願い地球人類を1人も殺すことはなかった。頭がイカれてる。お前は亜人と人類の架け橋になれるかも知れない。」

 「ありがとう、でも過大評価だと思う。」

 「でも、お前しかいないよこの争いを治められるのは。」

 

 あのアンノーンがあたしを評価してくれていた

 あたしなんかをこの争いを治められる唯一の存在だと思ってくれている

 あたしは嬉しかった

 思わず顔が二ヤけそうになる

 

 「ついたみたいだね。」

 「うん。」

 

 エレベータが止まり、外へ出る

 

 「この扉の向こうにロテがいるのね。」

 「そうね。でも、もう彼は―」

 「わかってるわ。それでも会いたいの。」

 

 ミチコはブラッドチェインの能力で今のロテの状態をもう把握しているのだ

 

 「ロテ入るわよ。」

 あたしは扉開けて中に入った

 

 ロテは虚ろな瞳で佇んでいた

 これは生きているのであろうか死んでいるのであろうか

 わからない

 

 「ロテ―、ねえロテ、あたしよ、チルよ。何か言ってよ、」

 

 反応はない

 それはまるで人形のようだった

 思わず涙が流れて来る

 

 「愛してるわ。」

 

 あたしはロテを抱き締めた

 反応することはない

 記憶は全て喰らい尽くされ、ミルカのブラッドチェインによる支配がなければすぐに、またギィカに憑りつかれてしまうのだ

 彼は自らの意思を持つことも出来ない

 

 「罪深い男だ、あれだけの人を殺して、街を破壊しておいてこの有様だ。」

 ミチコは吐き捨てるようにいった

 「やめてよ。」

 チルは泣きそうな声で言い返した

 

 「お前はロテをどうするつもりだ、処刑できるのか?しないと世界に対して示しがつかないぞ。」

 ミチコは残酷に言い放った

 

 「処刑はしない。彼の意識は必ず取り戻させる。」

 「バカかおまえ。ギィカのことはあたしでもよくわからないんだぞ。」

 「それでもあたしはロテを助けたい。」

 

 ギィカのことはミチコでもわからないのだ

 あれが何者でどういったものなのか

 わかっているのはロテを通してしかこの世界に影響出来ないということ

 ブラッドチェインでロテを支配している間、ギィカはロテに干渉出来なくなるということだけだ

 

 「お前は我儘で正直で理想が高く無謀すぎる。だがそれを諦めない、キモいやつだよ本当に。」

 ミチコは呆れた様子であたしをみた

 「チルはずっとこんな感じですよ。」

 キアも同調した

 「だね。あたしも彼女の記憶は全部みたからわかる。」

 

 「酷いな。あたしっておかしいかな。」

 「随分おかしいよ。亜人と人類の和解だなんて不可能な夢を抱き何度も死にかけ痛い目にあったにも関わらず誰も殺さなかったのは御前だけだ。異常者だ。」


 「だからこそ、お前にはこの戦争を終わらせられる可能性がある。というより終わらせてくれないと困る。」

 「わかってる。でもロテは処刑しない。」

 

 あたしは、覚悟を決めた

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