ギィカの瞳

 「テトラさん、久しぶりです。」

 「チルちゃん。元気そうでよかった。」

 

 あたしとキアはシユ国特別捜査局の本部に来ていた

 

 話をしている相手はあたしがナルゼンに所属していた時、よくしてもらっていた先輩だ

 ツバメ族の女性で、シユ国特別捜査局の幹部をしている

 

 「チルちゃん達がこっちに来てるのは把握してたよ、レレに用があるんでしょ?」

 「流石、話しが早い。」

 「あたしもロテ様の居場所はわかんなしね。」

 「そうなんだ。」

 「うん。」

 「レレにだったら会えるわよ。今ここに向かってるわ。」

 

 シユ国特別捜査局本部には世界各国に散らばっている諜報員からの情報、監視カメラからの情報、諜報ロボからの情報を随時確認している

 超小型の一センチにもみたない飛行監視ロボが世界中に飛ばされ、常に外の情報を仕入れている

 その膨大な量の情報は人工知能で解析され、分類分けされる

 テトラは常に本部で情報をチェックし、諜報員に指示を出し、対策を練っているのだ

 

 「久しぶりだね、チル。元気にしてたか。」

 「ええ、会えてよかったわレレ。」

 

 レレは随分と窶れていた

 目の下には大きなクマが出来ている

 

 「眠れてないの?レレ。」

 「あ、ああ。あまりな。」

 「ダメよ。今日は取り敢えず一日寝なさい。」

 「―、変わらないな御前は。」

 

 レレは力弱そうに笑った

 

 「でも、この国の為に世界の為に私はやらなくては。」

 「何を?」

 「わからない。」

 「え。」

 「こんなつもりじゃなかった。私たちは殺し過ぎた。もう戻れない。」

 「わかったから、はやく寝れば、睡眠薬あるけど。」

 「飲めない。私に寝る資格なんてない。」

 「頭おかしんじゃないの。ほら飲みなさい。」

 

 ゴクリと無理やりレレに睡眠薬を飲ませた

 

 「やっぱチルちゃんはいいね。好きだよそういうところ。」

 テトラは一部始終をみて笑っていた

 

 「眠れそう?」

 あたしは眠そうなレレの横顔をみた

 

 「ああ眠れそうだ。ただその前に話しておきたいことがある。」

 レレは神妙な面持ちでいった

 

 「何?」

 「お前、ロテに会いたいんだろ。」

 「ええ。」

 「残念だがそれは無理だ。」

 「どうして?」

 「これをみればわかる。」

 

 レレはメモリーカードを私に手渡した

 

 「じゃあ俺は寝るぞ。これでいいんだよな。」

 「おやすみなさい。」

 

 [ギィカ記録映像ファイル]

 ギィカそれ恐ろしきものなり

 

 監視カメラにロテが映されている

 撮影時刻は2031年8月5日

 

 固く閉ざされた部屋にロテはいる

 もう殆ど記憶はなくしているようにみえる

 

 「失礼します。」

 部屋の中に亜人の男が入る

 雀族だ

 

 あたしはこの人を知っている

 ナルゼンにいたとき、分隊長をしていた男だ

 確か名前はクニャック

 

 ロテに話があって入ったのだろう

 

 クニャックがロテに近づいた時

 黒い霧がロテから出て、カメラの映像が乱れた

 映像が戻るとクニャックは蒸発していた

 

 肉体が真っ黒に染まり、クニャックの身体は昇華し、バラバラに消えた

 

 その後も、ロテを訪ねて部屋に人が入っては、蒸発し消えていった

 

 録画が終わると真っ黒な画面になって砂嵐がみえた

 数秒後、バチっという音と共にまた部屋の画面に映った

 

 ロテの肉体から部屋を埋め尽くすほど大きな瞳が1つ現れた

 ぎょろりとこちらをみている

 

 「みているな貴様も食べてやろうか。」

 

 録画された映像のはずなのに

 その瞳は真っ黒で渦を巻いている

 寒気がした

 その感覚はロラベルの悪魔と遭遇した時に似ていた

 異質なこの世界の理から外れたものの感覚

 

 ヤバいやつだ

 あたしはすぐにパソコンをシャットダウンしようとした

 

 「あれ、切れない。」

 

 あたしはパソコンの電源を抜いた

 しかし、映像は止まらない

 

 「壊すぞ。」

 キアはパソコンをライフルで撃った

 

 画面がバキバキに割れる

 がその映像が止まることはない

 音が響いている

 

 「ああなるほど貴様その首飾りはロラベルに守られているのか。」

 瞳から途切れ途切れに音が振動する

 

 あたしとキアはパソコンを外に持ち出して爆破した

 

 [終わり]

 


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