ロテを探して
「その子があんたの奴隷?」
ロシィは揶揄うようにあたしをみた
「違うわよ、やめてよね、あたしの我儘に付き合って貰ってるんだから。」
「そりゃ悪かった。」
「もう。」
ロシィは時々こういった冗談をいうから困る
「入国許可の話は通しておいたからさ許してくれよ。」
「許してるわよ。」
「あと、そこの人間には悪いが奴隷登録しておいたよ。」
「どうも。」
「どうもって、変わったやつだなあ。」
「それほどでも。」
ロシィは目を丸くした
キアは奴隷にされたことをなんとも感じていない様子だった
「キアごめんね。」
「いいよ、どの道このままじゃ人類に希望はないんだ。」
キアはシビアに状況をみているようだ
シユ国は活気づいていた
亜人で溢れ返っている
世界は今あのような状態だというのにシユ国だけは別世界のようだった
ロテの居場所を突き止める必要があった
神と崇められる彼は滅多に人前へは現れない
何処にいるのかも不明なのだ
生きていることだけは確かのはず
ギィカの能力が切れればこの国も終わりだろうし
「ロテ何処にいるの?」
あたしは小さく心の中で叫んだ
「何か手掛かりないの?」
「あるにはあるんだけど―」
「教えてよ」
「知り合いにロテの右腕だった人がいるのよ。その人だったら何か知ってるかも知れない。」
レレは元気にしているだろうか
最後に会ったのは4ヵ月程前
ナルゼンを抜ける時だった
[過去回想]
「ロテはやりすぎよ。レレからもロテを諫めてあげてよ。」
あたしは当時レレに訴えていた
「ごめんよ。私は人が大嫌いなんだ、ロテがああやって人を殺すのをみて心の底から嬉しいんだ、だから止められない。」
レレは申し訳なさそうに告白した
そこまで人が憎いのか
どうしようもない溝があるのかと頭が真っ白になったのを憶えている
「でも―、これじゃあ憎しみが憎しみを生むだけよ。」
「わかってる、でもこれは人に亜人の力をわからせるのに必要なプロセスなんだ。わかってくれ。」
「そのやり方は好きじゃない。」
「だろうね、君は人も亜人も仲良くがいいんだろう。」
「そうよ。」
「夢物語だ。まあ嫌いではないが。」
レレはあたしの理想を完全に否定はしなかった
それが少し嬉しかった
「それに、ロテの記憶も殆どなくなってしまったじゃない。」
「―」
「あれが本人の意思で動いてると思ってるの?」
「意思かはわからんが、ロテの魂はギィカを動かし続けている。これは奇跡だ。美しいことだ。」
「イカれてるわ。あなた。」
レレはロテを崇拝しているようにみえた
憑りつかれている
人知を超えてしまった彼の能力に
「あたしはナルゼンを抜けるわ。」
「残念だが仕方あるまい、好きにするがいい。」
「さようなら。」
[過去回想終了]
あんなことがあった手前、レレに会うのも少し気が引ける
「へえ、で誰なんだその右腕って。」
「シユ国特別捜査局局長のレレっていうペンギン族の男よ。」
あたしはキアと話しつつ少し昔を思い出していた
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