チルの演説
[チルの演説]
どうもこんにちは
戦争が突然終わって驚いていることでしょう
それはアンノーンという人が奇跡を起こして一時的に地球人全員を支配しているからです
もう戦争は終わったのです
亜人があなたたち人を襲うことはありません
また人が亜人を襲うこともありません
あたしの身の上話をさせてください
あたしは地球に憧れて水星へやってきました
名前はチルといいます
父は地球人で母は水星亜人でした
地球に来てあたしは亜人削除の会に捕まって奴隷にされました
奴隷にされて、手足を斬られ、皮を剥がれ、目、鼻口、耳、舌を刳り取られました
そんな時、あたしを助けてくれたのが、今では悪名高きナルゼンがリーダーロテでした
ロテはあたしを助けてくれました
あたしは最先端の医療で治療されて、回復しました
その後しばらくナルゼンで活動していました
ある日ロテの家族が亜人削除の会に連れ去られ公開処刑されたことで、ロテはおかしくなってしまいました
あれから、ナルゼンは大規模な民間人まで巻き込んだテロを行うようになりました
私はその時からナルゼンを抜けました
ロテにテロをやめるよういいましたが、聴く耳を持ってはくれませんでした
それから、あたしはユーリー団に所属して、人と亜人を分け隔てなく助けました
助けるというか、負傷者を治療したり、安全な場所に避難させたり、衣食住を提供したりしました
でも、ロテを止めることは出来ていませんでした
あたしは、ロテを助けたかった
そんな時、アンノーンが現れました
気まぐれであたしを手伝ってくれるというのです
アンノーンのおかげでロテは止まりましたが、ロテに意識はありませんでした
亜人と人類で協力し合ってやっていくことはできないでしょうか
というより私たちに残された道はそれしかありません
また戦争の動きや度の過ぎた争いの兆しがあれば、アンノーンはきっとまたあなたたちを支配するでしょう
あたしたちはやっていけるはずです
少しずつ変わっていけるはずです
どうか、お願いします
[チルの演説終了]
最初はあたしのいうことを信じる人は殆どいなかった
けれど、少しずつあたしは認知されていった
あたしに助けられた人が、ネット上でその時の動画を投稿したり、口コミで話題になったりした
あたしがやって来たことが実っている
亜人の中にも人に好意的な者がいるのだという声もネットで散見されるようになった
あたしたちは、和解して仲良くやっていけるのだ
その3ヵ月後、人亜人共存国際法が作られた
これで人と亜人の間にある軋轢が完全になくなるわけではない
それは数世代に渡る長い年月をかけて少しずつ、溝が埋まっていくのであろう
もうあたしは必要ない
巷ではあたしを偉人扱いして教科書に載せたり、像を作ったりしているようだが、これ以上出しゃばってしまったらそれは、あたしの独裁になってしまう
あたしの影響力が強くなりすぎてしまう
あとは、みんなに任せた
あたしは演説から半年ほどが過ぎた頃、表舞台から姿を消した
消息不明となった
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