ハルの街
「はい、これ。」
チルはネネコの荷台から殺傷能力のない銃や武器を手渡した
「これを使えと?」
俺は武器を手に取ってきいた
「うん。ごめんね、出来るだけ殺生をしてほしくないんだ。というよりあたしがみたくないだけなのかも。」
チルは俯いた
道中何度も襲われた
こんな奴ら殺せばいいのに、と何度も思った。
「大丈夫。この程度の相手は殺す必要ないよ。」
チルは俺の気持ちを察していた
チルは襲って来た人を殺さないばかりか、腹を空かせていれば飯を与えもした
一般人や亜人はもちろん亜人削除の会にさえ分け隔てなく与えた
怪我をしているものは治療した
理解出来なかった
「どうして助けるの?」
俺はきいた
「助けてなんかないよ。好きでしてるだけ。」
チルは答えた
「好きで?」
わからない
時間と資源の無駄に思えた
「優しい気持ちでいたいの、それだけよ。」
チルは微笑んでいた
彼女からは深い愛を感じた
それは世界への愛だと思った
心からの慈愛であった
「もうすぐハルの街だね。」
チルは街を指さしていった
山の上からハルの街が見下ろせた
向こうには海が広がっている
「着いた~。」
チルはハルの街に着くと両腕を上げて身体を伸ばした
【チルル共和国】
首都 カルキ
・4大都市
カルキ 面積1万6003平方キロメートル 人口1602万人 北沿岸部
クルス 面積3139平方キロメートル 人口2619万人 中央沿岸部
ルクク 面積7467平方キロメートル 人口1374万人 南沿岸部
ハル 面積2011平方キロメートル 人口1973万人 南沿岸部
【ハルの街】
チルル共和国で4番目の都市
人口 1973万人
面積 2011平方キロメートル
開発特区 国が産業開発を推し進めている地域
ハル国立科学研究所
プリン大学
ノテ開発区
リカリコ商店街
ハル港
ハル国際空港
「亜人風情が。」
「穢らわしい、穢らわしい。」
「うわ、亜人だ、みちゃダメよ。」
道行く人から罵声を浴びせられた
「キアだ。捕まえれば財産が手に入る。」
「けどよ、返り討ちに合うかも、あいつを襲ったのは全員死んだか行方不明になってるって噂だぜ。」
「そんなの知るかよ。」
まるきこえだ
幼少期から命を狙われ続けた結果、通常の人の数十倍も耳がよくなった
だから小声で話していてもわかる
特異な能力みたいなものかも知れない
「あ~あ、せっかく大都会に来てもこの扱いかあ~。」
チルは少し残念そうに俯いた
「まあ、慣れっこだけどさ。」
チルはニコリと笑った
「変装しましょう。」
俺は提案した
「そうだね。」
チルはネネコの荷台から変装道具を取り出した
人気のないところで俺達は変装した
チルは仮面と帽子を被って黒いコートを着て亜人であることを隠した
俺はいつも通り女装した
「メイク上手だね。全然わからないよ。」
チルは感心した様子で俺をみた
「小さい頃から色んな人に変装してるので。」
俺は答えた
「へえ。いいね。」
仮面をつけたチルは帽子を目深に被っていて表情がわからない
「亜人で優しい人もいるんだけどね。本当は仮面なんてつけたくないよ。」
チルは悲しそうな声で呟いた
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