アンノーン

 チロロン

 スマホか何かの通知音が流れた

 

 「あ、ロテが配信はじめたよ。」

 メルトはスマホをみていった

 

 「ほんとだ。」

 チルはポツリと呟いてスマホ画面をみた

 

 {配信中}

 ロテだ

 民間人の方たちごめんなさい

 多くの無害な人達が死んでしまいました

 亜人削除の会をはじめてする亜人を迫害するものたちを排除するにはこうするしかなかったのです

 人が亜人を敬い完全に屈服するまで俺達は止まらない

 亜人世界に祝福を

 まだまだテロは終わらない

 次は、ミサイルで全世界を恐怖に陥れます

 さようならありがとう

 {配信終}

 

 メルトとチルは「あっちゃあ」っといった表情で顔を見合わせて溜息をついた

 

 「ロテ―」

 チルは切ない表情をしていた

 

 「バカなことするよ、あいつ。無茶しちゃってさ。」

 メルトは呆れた様子でどこか寂しそうにしていた

 

 「あたしたちも少し前までナルゼンだったのよ。でもああなっちゃってからちょっとして抜けちゃったの。」

 メルトは状況の掴めていない俺をみて耳打ちした

 

 「チルはロテの事が好きだったのよ。2人はとても仲がよかった。」

 メルトは話終えるとチアの方へいって声をかけた

 

 ああ、そうか

 だからチルはナルゼンを止めたいのか

 なんとなくチルのことがわかったような気がした

 

 「あたしが止めないと―。」

 チルは手を握った

 

 「無理よ。諦めなさい、危険すぎるし無謀よ。出来る範囲で人助けが出来ればいいじゃない。」

 メルトはチルを止めようとした

 

 「わかってるでも、奇跡をみたんだ。あの人だったらやってくれるかも知れない。」

 チルは何処か遠い記憶を辿るように目を瞑った

 

 「例のアンノーン?あれは迷信でしょ。」

 メルトは呆れた様子でチルをみた

 

 「アンノーンは私を救ってくれた。戦場で敵に囲まれて絶対絶命の時、私の前に現れて辺りの人全員を意の儘に操った。あれは人知を超えた力だ。ロテのと似てた。」

 チルは当時の事を思い出して興奮気味に話した

 

 「その話何回目?。まあ、ロテの件もあるし、完全に否定は出来ないけれど情報が少なすぎてなんともいえないわね。」

 メルトは困った様子で少し首を傾げた

 

 【アンノーン】現時点での情報

 生き物を操る

 若い女の見た目をしている

 黒髪ロングで赤い喪服を着ている

 時より戦場に現れては無血で戦争を終わらせる

 時より強盗、強姦、暴行、殺人などを無欠、無傷で調停して終らせる

 彼女独自の基準で気まぐれに現れては争いを調停しなかったことにする

 とされている

 

 「ルー大陸沿岸部にアンノーンが現れたって情報をきいたの。」

 チルは話はじめた

 

 「行く気じゃないでしょうねえ?」

 メルトは心配そうにチルをみつめる

 

 「行くわよ。」

 チルは即答した

 

 「ここから沿岸部までの道は戦争地帯よ、わかってるでしょ。」

 メルトは確認した

 

 「わかってるよ、あたしは軍人なんだ。戦場は慣れてるよ。」

 チルは平然と答えた

 

 「そう。死なないでね、ケガしたら治療してあげるわ。ちゃんと帰ってくるのよ。」

 メルトは観念した様子でいった

 

 「うん。」

 チルは笑顔で首を縦に振った

 

 「で、キア君はどうする?」

 チルは俺の方を向いてきいた

 

 「どうって?」

 俺は首を傾げた

 

 「プリン研究所はルー大陸沿岸部にあるでしょ?一緒に行かない?」

 チルは提案した

 

 あ~、確かにそうだ

 

 「俺、莫大な両親の遺産があって命狙われてるんですけど大丈夫ですかねえ?」

 どうしたものだろう。

 親切でいい人たちだ

 あまり巻き込みたくはない

 

 「いいよ。気にしない、この辺りじゃ亜人も常に命狙われてるようなものだよ。」

 チルはニコリと笑った

 俺にその笑顔は逞しく感じられた

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