絶望
「私たちは亜人を削除します。亜人の国を解体し、地球人の支配下でちゃんと管理し処分しなくてはなりません。」
亜人削除の会が出した1本の動画
ロテをおかしくさせた元凶
「シユ国の亜人1万9999人を攫って人質に取りました。国家を解体し、人間様に服従すれば、命までは取りません。さあ選んでください、死んじゃいますよ。かわいい同胞たちが。」
映像には、女子供も映っていた
縄で縛られ、猿轡を噛まされている
騒いだ者は鞭で打たれていた
「どうしてこんな―、酷い。」
あたしは、苦しかった
どうすればいいのだろう
映像を直視出来なかった
ロテはどう思うだろう
どうするのだろう
胸騒ぎがした
「ロテ―」
ロテと話がしたくて、声をかけようとしたけれど、異様な雰囲気がして押し黙った
「ロテの家族みんな攫われたのよ。」
メルトさんは、あたしの様子をみていたらしく、ロテにきこえないように、あたしの耳元で教えてくれた
「―」
何もいえない
重たい空気
「あたしの夫と子供も連れていかれたわ。」
「そ、そんな。」
思わず、口を噤む
その日のロテは心此処にあらずといった様子で、抜け殻のようになっていた
[過去回想]
・チルがシユ国に来て1年半ほどの時の話
夜の会話
「実は俺の母さんは人間なんだ。」
ある日、ロテはポツリと打ち明けた
「へえ。あたしもハーフだよ、父さんが人間で母さんが亜人。」
「俺は母さんが好きだ、人間が好きだ。」
「あたしもよ。父さんが好き。」
あたしとロテは顔を見合わせて笑った
「強いね。あんな惨たらしいことがあったのに。」
ロテは感心した様子だった
「酷いことされたけど、もう許しちゃってる。人間のこと、あたしの身体をあんなにした人、心を傷つけた人のことも、もう許して―。」
「優しすぎるんだね。」
「ロテだって、人間と分かり合おうとしてるじゃない。」
亜人と人間は愛を育める
地球にもハーフは結構いるらしい
亜人と子を為したものは、迫害される
シユ国にも、人間が住んでいる
人口割合では3%ほどだが、人間だ
亜人と愛し合った人間たちなのだ
過去回想終了
あたしは1年半ほど前の会話を思い出していた
懐かしい記憶
ロテ、大丈夫かな
次の日、朝6時
ロテは、真っ黒な虚無の目だった
話しかけにくい
その日の朝8時、シユ国極秘会議が行われた
シユ国の代表者が集まる極秘会議だ
「シユ国を守りたい。人質も助けたい。俺は―」
ロテは口を開いた
「どうしたらいい?」
参っていた
もう、どうしようもなかったのだ
シユ国が解体されれば、亜人に行く当てなどないのだ
亜人削除の会に処分されるだけだ
解体しないと人質は殺される
解体しても、人質を返してくれるとも限らないのだ
「もう答えは出てるんだろ。未然に防げなかった俺のせいだ、ごめん。」
シユ国特別捜査局 局長、レレはロテの方をみて話かけた
・レレ
ペンギン族の亜人
ロテの右腕的存在
シユ国特別捜査局 局長
・シユ国特別捜査局
国内を含んだ世界各地を調査している
暗殺なども行っている
今回の事件は特別捜査局でさえ、気が付けなかった
シユ国の特別捜査局は世界一優秀で、これまで多くの要人を暗殺し、シユ国を守って来た
「わかってる答えはわかってるんだ。戦うしかないのか。」
ロテは、天井を見上げて、虚空に語りかけるように呟いた
「シユ国を解体すると言って人質を返してもらい、返してもらった後、戦おう。それが俺の答えだ。」
ロテは、言った
他の代表者たちも、「それしかないだろう。」と納得した
誰もが戦うつもりだったのだ
もう皆、答えは出ていた
戦争か、憂鬱だな
あたしは眩暈がした
人を殺したくない
地球人と仲良く共に暮らせないのか
どうしてあたしたちは、憎しみ合わなくてはいけないのか
「シユ国は解体する。人質を返してくれ。」
ロテは、ネットライブ配信で、世界に向けて宣言した
「わかった。だが人質は返さない。」
声明をきいて、亜人削除の会は返事をした
「なんだと―」
ロテは愕然として目が怒りと憎しみで真っ黒の虚無となった
「今から処刑を行う。亜人は削除しないといけない。」
映像に映っているのは、ロテの両親と妹、弟、姉。
目隠しされ、猿轡を噛まされ、縛られている
「おい、やめてくれ。あああ―」
ロテから人とは思われない苦悩の声が発せられた
「シユ国大統領兼軍事的リーダー ロテさんのご家族を処刑します。亜人は生きてるだけでこうなります。」
ロテの家族は、首と四肢を生きたまま切られ
それでも未だ生きている肉体に、ガソリンをかけられて、焼かれた
絶望の叫び声が轟いていた
その時からだ、ロテに奇跡の力が発現したのは
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