月で育った唯一の人間未知子は3億年前の地球人イブのクローンでした、孕まされ111回出産させられる用済みになると焼却炉で処分され恨み呪ったが、2億年後の地球に転生した宇宙、異世界、霊界、魔界冒険します

無常アイ情

月と未知子

地球からの届けもの

 私は未知子

 蟹の門を通る

 蟹と鳥と兎の楽園


 月生まれの私は地球が滅びようとしていることを知らなかった

 

 「もう地球はダメなんだってよ。」

 

 月兎のトトは言った

 月の技術で作られた軍用車に乗っていた

 

 「どうして?」

 地球、一度は行ってみたかった

 私の祖先が生まれたらしい故郷だった

 

 「そりゃあ、核戦争ですわ。」

 

 「戦争?」

 

 戦争なんて、本当にあるのだろうか?

 わからない

 核って?

 

 「放射能で地球へは今後1億年は立ち入り出来んでしょうな。」

 

 「そ、そんなあ。」

 

 私は情けなく膝から崩れ落ちた

 

 ピカッ!

 シュウゥゥゥウ!

 

 地球から月へ向かって何か飛んできているのがみえた

 

 「ロケットかな。」

 

 トトは落下物の方へ車を走らせた

 

 煙が立ち込めていた

 

 箱があった

 厳重でびくともしない箱だった

 

 「お、手紙がある。」

 

 「なんて書いてあるの、あたし読めない。」

 

「「月の皆様へ。私たちの命の種です、次なるアダムとイブです。どうか1億年後、地球が清浄な大気と水を取り戻した時、私達を溶かし、受精させ、地球へ届けてください。人類最後の希望なのです、地球生命最後の希望なのです。」と書かれておるな。」

 

 「ありがとう。」

 

 「開けるか。」

 

 トトは器用に厳重な箱を開けた

 

 中はとても冷たかった

 触れれば皮膚が凍るのがわかった

 

 「これが、精子で、これが卵子だ。くっつけると人が出来る。」

 

 「すごい、あたしもこれから生まれたの?」

 

 あたしは興味本位で、トトに顔を近づけた

 

 「そうだな。」

 

 「どうやったら、精子と卵子が作れるの?」

 

 「わからない。お前にも卵子はある。」

 

 トトは、少し躊躇いつついった

 

 「へえ。精子は?」

 

 「ない。」

 

 「どうして?」

 

 トトは困った様子で、長く白い耳を後ろ脚で掻いた

 

 「まあ、月に人類は君しかいないだろうしね…。いつかわかる時がくるかも知れん。」

 

 「教えてよ。精子はどこにあるの?」

 

 トト笑った

 何かおかしなことでも言ったのだろうか?

 あたしは何も知らないのだ

 

 種は、人のものだけではなかった

 猫、犬、猿、羊、虎、狐、魚、蛙、―

 地球上には、あたしの知らない生き物がたくさんいるらしい

 けれど、殆どが絶滅してしまったらしい

 

 「賢い人類もいたものだね。歴史は繰り返すということかな。」

 

 トトは私の顔をまじまじとみて感慨深そうに頷いた後、トランクに箱を積んで車に乗った

 

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