宇宙船の下見に行く
あたしは地球を出て宇宙を旅することにした
あのキアがあたしを誘ってくれた時は嬉しかった
まさか、あの誰にも頼ろうとせずツンツンしていたキアが、あたしを頼ってくれたのが途轍もなく嬉しかった
けれど、あたしもそこまで鈍感じゃないから気付いていた
キアがあたしに恋愛感情を持っていること
あたしの気持ちも揺れ動く
でもやっぱり、あたしロテが好きだから―
「キア、あたしに恋してるでしょ?」
「―」
「あんたより10年長く生きてんのよ。それくらいわかるわよ。」
「バレてたのかあ。ごめん。」
「謝らないでよ。嬉しいわよ、あたしもキアのこと嫌いじゃないし。」
甘酸っぱい青春の香りがあたしとキアの間に漂っている
それは、あたしも失っていた10代頃の感覚だった
「でも、あたしにはロテがいるから。」
「知ってた。」
「ごめんね。」
「いいよ、でも好きでいることはいいだろ。俺にとってチルはそれくらい大事な存在なんだ。」
「やめてよ、そんな。あたしなんかみてないで他の女の子のところに行きなよ。勿体ないよ、キアかっこいいからモテるだろうに。」
「僕は呪われてるから無理だよ。」
「ごめん、でもいい人がみつかるよきっと。」
「うん、ありがとう。」
まあ、そういう時期もあるか
いつか、キアが他の人を愛せられるといいなと思った
宇宙探検にミチコさんも加わった
あたしは、ミチコさんが好きだし憧れていたから嬉しかった
ミチコさんは、物知りだし経験も豊富で、かっこいい
あたしもミチコさんみたいになりたい
時々、そんな風に思うくらいには尊敬している
「宇宙船はどうする予定なの?」
ミルカがあたしの方をみてきいた
「ケリュヌス社とユーリー宇宙開発、シユ国宇宙開発局をたずねてみる予定よ。」
「へえ。あたしも一緒に行くわ。」
「ありがとう。」
「俺も行くよ。」
3人で行く事になった
【ケリュヌス社】
シユ国で一の時価総額
ケリュヌス重工業
ケリュヌス銀行
ケリュヌス商事
ケリュヌス重工業では宇宙開発も行っている
【シユ国宇宙開発局】
シユ国で宇宙開発を行っている国家機関
ナルゼンによる爆撃で地球上の都市の殆どは壊滅してしまった
シユ国とユーリー団基地、プリン大学くらいしかまともに機能しているところは思い浮かばなかった
宇宙開発施設も同様に破壊させられてしまった
もはや地球上にある宇宙船は激減していた
地球から静止軌道まで伸びる宇宙エレベーターは破壊されることなく残っている
地球で宇宙エレベーターの建設に成功したのは200年ほど前らしい
宇宙エレべーターで物資を地球の外に運び、そこから他の惑星へ移動することで地球の重力圏を抜けるのに使う燃料を節約することが出来る
異星人たちは宇宙船でそのまま地球に来るものもいれば、宇宙船で宇宙エレベーターの中継地点まで来て、そこから宇宙エレベーターで来るものもいる
異星人の乗って来た宇宙船を買うという手もあるなと思った
あれこれ調べた結果、ケリュヌス社、ユーリー宇宙開発、シユ国宇宙開発局3つの組織が共同して開発中の車がよさそうだ
独自開発のネコ型宇宙船で、ユーリー団のネコトランスフォーム車テクノロジを応用して作られているらしい
シユ国宇宙開発センターで作られている
「この宇宙船よさそうね。」
ミチコも肯定的な感じだ
「もうすぐ完成するっぽいよ。これ下見に行こうか。」
あたしは提案した
「そうしよう。」
ミチコは頷いた
「うん、いいと思う。」
キアも同意した
ケリュヌス社にしてもユーリー宇宙開発にしてもシユ国宇宙開発局にしてもやはり、メルア合衆国やチルル共和国の先進技術には遅れを取る
世界最先端の科学技術を誇るメルア合衆国とチルル共和国にはシユ国やユーリー団では敵わないのだ
ワープ航法技術においてもその安全性に大きな差が出る
「もしもし、チルだけど―」
「ああ、チルかどうした?」
あたしはレレに連絡を取っていた
「シユ国宇宙開発センターで開発中のネコ型宇宙船が欲しくて下見したいんだけれど、話通しておいてくれない?」
「あ~、わかった。」
レレはシユ国特別捜査局局長で、顔も広い
シユ国政府の機関に話がある時はレレを通せば、だいたい何とかなるのだ
シユ国宇宙開発センターに下見に来た
「おお。かっこいい。」
キアは宇宙船をみて声を漏らした
シユ国宇宙センターの倉庫で売られている宇宙船をみている
円盤型の機体から、球体型、円柱型、三角錐型、飛行船型まで揃っている
小型、中型、大型とそれぞれのサイズがある
中型は5人乗りで小型は1人しか乗れない
中型でもリビングキッチンに個部屋が幾つかと風呂トイレがついている
大型はサイズによるが5人以上、30人未満だ
大型には身体を動かせるような広い場所や、大きめの風呂がついていて、リビングキッチンは広々としていて個室の数も多くゆったりとしたスペースがある
超大型は30人以上100人未満で、それ以上のサイズのものもあり、宇宙船の中に街があるような機体も存在はするが、ここでは超大型は売られていない
「どうも、こんにちは。」
緑色の丸縁メガネを掛けた犬族の男はあたしたちを歓迎した
「どうも。」
あたしは会釈した
「はいどうも。私はナッチェよろしく。」
犬族の男はナッチェと名乗り、挨拶を返した
「よろしく。」
あたしはナッチェを顔をじっとみた
落ち着いて穏やかな雰囲気をしている、知恵と知識の豊富そうな男だ
歳は50を越えていそうにみえる
おそらく年上だ
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