アグウ
動乱
食糧1年分程と武器を積んで俺達は地球を出た
拝啓お兄様へ
お兄様遂に宇宙へ往かれるのですね
新しく出来たご友人たちと地球をお救いになったと聞いた時は耳を疑いました
けれどお兄様の言葉に嘘はありません
きっと本当にお兄様はやり遂げたのでしょう
宇宙へ行けばこうやって気軽に連絡を取り合うことも出来なくなるでしょうから寂しいです
リアはお兄様の帰りを待っております
私たちはどうにか私たちでやっています
お兄様との結婚も諦めてはおりません
愛してますお兄様
どうかご無事で
リアより
拝啓妹へ
お手紙ありがとう
行ってくるよ
俺たちはプシュケの糸で繋がっている
どれだけ離れていても一緒だよ
キアより
「はじめての宇宙はどう?」
「身体が張り裂けそうだよ。」
「だよね。あまりいい気持ちにはならないわ。」
チルは俺を横目で微笑ましそうに流し見した
宇宙は過酷だ
地球からの愛を失った俺達は本来ならば身体がバラバラになっている
強化人間である為にバラバラにならずに済んでいるが粒子になってしまいそうな気分だ
緊急特例発令、緊急特例発令
これは訓練ではない、繰り返すこれは訓練ではない
太陽系圏外からの侵入者を確認
見つけ次第、始末せよ
「一体何が起こっているの?」
チルは動揺を露わにしミチコをみた
「わからないわ。」
地球で産まれた汎ゆる生命の記憶を知る事の出来るミチコでさえ不測の事態だった
「これまでの歴史で太陽系の外から太陽系が攻め込まれた記録なんてないわ。私の知る限りね。」
チルは冷ややかな汗を流した
「なんか歌が聞こえないか?」
耳を澄ませると野太い重低音の心地ちいゆったりとしたトラップダンスミュージックのような曲調の歌が聞こえた
「聞こえる。」
チルはかわいいケモ耳をピクピクと動かして言った
人気ないかわいそう
人少な少な
かわかわまあいっか
超絶宇宙一同接百億
配信者上がりで時価総額世界一
大企業作る
独自通貨発行~
領土獲得
エンタメ国家承認
不老不死の薬作って宇宙ワープ
テレポーテション確立
太陽系越えて
其のネット窈窕海の音
銀河国々統合
配信続ける
あたしの声はきこえていますか
きかいちのうもうれしそう
なんだか眠たい
バグかな
なんだこの夢
「ん、なんじゃこの太陽系は?はじめてみる星々じゃな。」
耳障りのいい、心地よい、少女の声がきこえる
まるですぐそこにいるかのように、脳に語り掛けているかのようにきこえるのだ
高価な性能の優れたイヤホンやヘッドフォンで音楽や配信を聴いているかのような感覚だ
「天ノ川銀河はもう統合したはずじゃが」
「マガ様―、どうやらこの太陽系は未だエレミア銀河統合も未発見の太陽系ですじゃ。」
「ほう。それは面白い。我の配信で全て虜としエレミア銀河に統合してやろう。」
冗談か何かだろうか
一体何が起こっているんだ
巨大なキャラック船が太陽系の外からやって来た
いいや巨大なんてものではない
ニャ国の領土と同じくらいの大きさかも知れない
その船から声が聞こえてきているのだとどうしてかはっきりとわかった
「どうも、こんにちは超絶宇宙一配信者のマガで~す。よろしくねえ。」
どうしてなのかわからないがつい観てしまう
引き寄せられる
目が離せない
今この太陽系中が彼女に注目しているだろう
本当にこのままでは意識ごと持っていかれそうな気がしてくる
「こちら太陽連合軍、こちら太陽連合軍。そこを動くな。すぐさまこの太陽系アグウから立ち去れ。立ち去らなければ全軍を以て排除する。」
「へえ、君たちの太陽系アグウっていうんだ。」
「立ち去らないのだな?最後の警告だぞ、立ち去らないのだな?」
「勝ち目ないよ、君たち程度では。」
何だこれは。
まるで映画でも観ているかのような大画面でみえる
マガという配信者と太陽連合軍とのやり取りがみえるのだ
それはチルもミチコも同じらしい
「気付いてる?君たちとあたしとのやり取りは全宇宙に筒抜けよ。」
「なっ!!?」
「バレたら困るでしょう?こんな最弱の太陽系、すぐにでも侵略されちゃうわよね。」
太陽連合軍の総隊長らしき男は眼を見開き焦りを露わにした
「うふふ。かわいそう、これまでどういった手を使って来たのかこの太陽系は存在さえ感知出来ない程に精巧なバリアか何かで守られていたみたいだけど、もう手遅れよ。」
バリア?
太陽系アグウ?
新しい情報が多すぎて頭がパンクしそうだ
ポッポ~
ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン―
列車だ
宇宙空間を列車が走っている
丁度俺達の宇宙船ネネの横に並んだ
どういう仕組みかはわからない
レールが敷かれては消え何処までも走っていくのだ
「この子よねえ、核は?」
「間違いない。」
艶やかななピンクの長い髪
透き通るような薄い肌をした身170センチメートルほどの女がチルの顎に手をやってみつめた
「いい子ね。」
「チルを離せ。」
「ふふ坊や。この子の事が好きなのね。そんなコワい顔しないで。大丈夫大事に扱うわ。」
女は含みのある妖艶な笑みをみせた
「ここかしら。」
女はチルの胸に右手を貫通させた
皮膚を飛び越えてその手が胸から中に入った
チルは意識を失った
黒い
黒い
黒い液体のような気体のような靄がチルの胸から吹き出して来て、チルは真っ黒に染まった
顔も身体も真っ黒でみえない
「ふふ。本物のようね。」
女はチルの胸から手を抜いた
すると、黒い靄は消え去り瞳も消えた
「貴様チルに何をした。」
俺は声を荒げた
「少し確かめただけよ。傷1つ付けていないわ。」
女の言っている通り、チルは無事な様子だった
「チルを返せ撃つぞ。」
俺はライフル銃を構えた
「待ってキア。貴方では相手にもならないわよ。」
ミチコは俺の手を止めた
「その子はわかってるそうね。あたしが何者か。」
「ええ。太陽系最大の賞金首にして大罪人、星雲愛佳。」
「ブラッドチェインであたしを知る者の記憶でも見たのかしら。」
「そうよ。」
「地球では最強かも知れないけれど、宇宙ではその能力も使えないわね。支配出来ないでしょ地球人ではない私の事は。」
「全部、お見通しってわけね。」
ミチコさんでもお手上げなのか
どうしたらいいんだ
「ごめんなさいね坊や。この子は貰っていくわ。悪いようにはしないから安心して頂戴ね。」
無理なのか
バン
俺は引き金を引いた
「とてもゆっくりな弾ねえ。眠たくなるわ。」
アイカはマッハ2はあるアサルトライフルの銃弾を欠伸をしながらひらりと躱した
なんだこの女、化け物だ
「君には未だ私は早過ぎるよ、いくらジルマキの子と言ってもねえ。」
アイカはチルの右ケモ耳を舐めて俺に見せつけた
「ううっつうぐ。」
俺は俯いてうめき声を上げた
「あはは。悔しい?悔しいよねえ?。」
「殺してやる。」
「傑作ね。殺してやるだってえ~、お姉さんトキめいちゃった。いい殺意ね。」
俺はどうすることも出来なかった
足が震えた
殺してやるなんて言ったものの、俺の方が殺される側だとわかっていた
この人は次元が違う
直感が逃げろと言っている
だが逃げさせてさえ貰えないとわかる
「悔しかったらもっと強くなる事ね。バイバイ坊や。」
アイカはチルを連れ去って列車に飛び乗った
俺とミチコは何も出来ず茫然とその後ろ姿を見送ることしか出来なかった
「大サービスよ。感謝なさ~い。」
アイカは列車から飛び降りて、月を真っ二つに斬った
月が斬れたのだ
見間違えではない
俺達の目の前で斬れた
斬れた月は大爆発して消滅した
その衝撃でマガの配信の注目度が下がり、月が斬れた事が注目された
俺達は目の前で起こった出来事を眺めていることしか出来なかった
月で育った唯一の人間未知子は3億年前の地球人イブのクローンでした、孕まされ111回出産させられる用済みになると焼却炉で処分され恨み呪ったが、2億年後の地球に転生した宇宙、異世界、霊界、魔界冒険します 無常アイ情 @sora671
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