やめてよ
「えい。」
「いてて。」
石を投げつけられる
地球ではこれが日常だ
「亜人風情が。」
地球人の大半は、亜人を忌み嫌っていた
あたしは、地球へ来てすぐに、石を投げ付けられた
地球の政府も、亜人への差別を見て見ぬふりしていた
「やめてよ。」
「口を開くな。」
「敵意はないよ。」
「でも、おまえたちは亜人だ。」
あたしは絶望した
地球人は亜人を、人と思っていない
地球に亜人の権利などないのだ
居場所なんかなかった
隠れて、過ごした
それでも、地球は素晴らしい文化を持っていた
地球のアニメが好きだった
「お、亜人がいるぞ。」
ある日、あたしは襲われた
亜人削除の会の人たちだ
亜人削除の会は、亜人を収容所に入れて虐殺したり、収容施設に入れて無休で強制労働させていた
「収容所に連れて行って処分しないとな。」
「んん、やめて、放してよ!。」
「暴れるな。」
高電圧電流の刃物で身体を切り付けられ、電流が身体中を駆け巡った
意識が―
亜人といえど、武器を使われると勝ち目はない
麻酔の入った注射を打たれ、弱らせられる
「んふふ、かわいい亜人だな。」
「流石は亜人だぜ。地球人だったら死んでるんだろうよ。」
「亜人の癖に、いい身体してやがる~。締め付けて来る、気持ちええ。」
あたしは純潔を奪われた
「いやああああ。許さない、許さない、許さない。」
助けてよ、お父さん―
地球人は最悪だよ
どうして、こんな思いをしなくちゃいけないの
神様、どうかこれ以上、苦しみが起こりませんように
あたしは、地球人の男たちに輪姦された後、催眠ガスで眠らされた
亜人収容施設に入れられたあたしは、睡眠時間は殆ど0、食事もパン切れと雑草だけの生活を送った
倒れそうになると、高電圧高電流の通った鞭で叩かれ、失神させられた
毎日が、苦しくて、死にたかった
あたしの他に収容されている亜人たちは、バタバタと倒れ命を落としていった
時が来れば、亜人焼却炉で焼かれるのだ
順番が回って来ないことを祈った
「ちょっと来い、拷問だ。」
収容所の所長が、あたしを拷問部屋に連れていく
最悪だ
あたしは、鋼の鎖で手足を拘束された
「いいサンプルになりそうだ。」
博士服を来た男はあたしから細胞を採取していた
「腕を切ってみてくれ、反応がみたい。」
「わかりました。」
あたしは右腕をレーザーで切られた
「うああああああああああああああああああ。」
「う~ん。いい叫び声だ。頑丈だね、それでも気を失わないか。」
博士服の男は、興味深そうにあたしを観察していた
鼻をそぎ落とされ、身体中の皮を剥がれ、目は刳り抜かれ、耳は剥ぎ取られ、声帯を切り取られ、内臓に針を刺された
「本当に亜人というのは素晴らしいな。私も亜人になりたい。」
博士服の男は、強化人間手術の研究者らしい
あたしはもう原型を留めてはいなかった
だれか、たすけて
こいつを殺してください
だれか、ころして
殺って
おねがいします
「かわいい、美しい。」
研究所の所長は、両腕、目鼻耳を失ったあたしをみて興奮していた
「私にくれませんか、この亜人。」
所長は、あたしをコレクションにした
あたしは抵抗することもできない
ただ、所長のされるが儘だった
所長の子を身籠り
3人出産した
17歳の時のことだ
子たちはあたしを嫌っていた
じぶんたちに亜人の血が流れていることを嫌悪していた
「気持ち悪い。」
未だ、物心ついたばかりの子に避けられ、気味悪がられていた
あたしは焼却炉に行くのがこわかった
だから、所長に媚びて、身を寄せた
無意識に身体がそうしていた
あたしは、じぶんが嫌いだった
所長を嫌っていたが、所長に媚びている内に、愛おしくに思えて来て、憎かった
他の亜人たちは次々と焼却炉で燃やされる中、あたしだけが、ずっと生きた
醜い姿になりながらも、生きることに縋った
収容所での暮らしが日常になっていたある日
運命を変える出来事が起こった
事件だった
「もう大丈夫だぞ。」
目の前で所長が、銃で撃たれて死んだ
精悍な亜人の男だった
同じ犬族で、黒い毛並みをしていた
若い男だ
男は亜人の仲間を連れていた
あたしは、こわかった
外の世界で生きていく事が
こんな姿じゃ誰も、あたしの相手をしてくれない
生きていけない
「俺達がついてる。絶対治す。同胞を見捨てない。」
男はあたしを抱きしめた
長らく感じたことのなかった、ぬくもりだった
目はみえないし、耳もきこえない、なのに、どうして―
あたしは、涙も流せないはずなのに、ぼろぼろと流れているような気がした
この犬族が青年
彼こそ、後に亜人テロ組織、ナルゼンのリーダーになる人 ロテである
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