第35話 ラブラブ観覧車
観覧車……それは俺にとって最後の決別だった。最後に母といった遊園地で彼女は、俺に観覧車に乗せて、ごめんなさいと言って泣いていたのだ。
そして、その翌日に姿を消したのだ。
「だからさ……俺は新しい門出をここではじめたいんだ」
観覧車に乗って、自分語りを始めた俺の言葉を正面に座る二人は黙って聞いてくれていた。そして、話し終えると同時に二人が挟み込むようにして俺の左右に座る。
少し狭いけど……ぬくもりと甘い匂いが心地よい。
「俺はここで人の愛を信じられなくなった……だけど、想と雪乃と接していくおかげで俺は人を信じる気持ちを取り戻せたんだ……だから、俺と付き合ってくれないか?」
これが俺の素直な気持ちだった。そりゃあさ、世間からしたら単なる二股だろう。だけど、俺は二人を同じくらい愛していて、二人とも大事なのだ。
そして、二人もそれを望んでくれている。だったら答え何て決まっていたのだ。
「春人……知っていると思いますが私の愛は重いです……ほかの女の子に色目を使ったら何をするかわからないですよ」
「ああ、わかっている。それだけ俺を想っているってことだろ? そういうところも好きなんだ」
「春兄……私と付き合ったら今まで以上に甘えん坊なるわよ。後悔しない?」
「何を言っているんだ? それだけ俺を好きってことなんだろ。遠慮せずに甘えろよ」
「春人」
「春兄」
二人の言葉に即答すると、感極まったとばかりにふたりに抱き着かれる。そして、俺の胸元で頭をぐりぐりとしていた雪乃は無言で俺の瞳を見つめて、唇を突き出す。
ああ、そういえば、ファーストキスは雪乃とって想が話し合っていたと言っていたな……俺の意思は……? と思うが、二人とも同じくらい好きなのだ。ならば彼女たちの決めた案に従おう。
俺は意を決して雪乃を見つめ返す。顔は真っ赤になっており、その瞳はうるんでおり、どこかはかなげだ。そんな彼女をひきよせて……
「雪乃……愛している」
「春兄……私も……ん」
雪乃の唇と重ねると暖かい感触がして、彼女がより身近に感じられるようになった気がした。ああ、これがキスか……なんだろう、心が満たされるようなそんな感覚が心地よい。
彼女も同様なのか、唇を離すと名残惜しそうな顔をしたあとに「えへへ」と照れ笑いをする。くっそかわいいな、おい!!
「じゃあ、次は私ですね」
「え……?」
ファーストキスの余韻に浸る間もなく今度は想がくちびるを重ねてきて……
「んんーー!!」
彼女の舌がまるで捕食動物のように俺の口内を犯す。いきなりディープキスかよぉぉぉ。だけど、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。むしろその……ちょっとエッチな気持ちにすらなってくる。
「あー、想先輩ずるいです!! 大人のキスじゃないですか」
「うふふ、ファーストキスは譲りますが、こっちは頂いてしまいました」
想が唇を離すとぬらりと唾液がかがやきなんともいやらしい。雪乃の言葉に妖艶にほほ笑むその姿はまるでサキュバスのようで俺の情欲をそそる。
「春兄、次は私ですからね」
「おい、雪乃、おちつけって!!」
そうして、観覧車内でいちゃついた結果、無茶苦茶ゆれて係の人の怒られたのはここだけの話である。いろいろあったけど、観覧車の思い出が上書きされて幸せな気分になるのだった。
カクヨムコンテストように新作をあげました。
読んでくださるとうれしいです。
『破滅フラグしかないラスボス令嬢(最推し)の義兄に転生したので、『影の守護者』として見守ることにしました〜ただし、その正体がバレていることは、俺だけが知らない』
推しキャラを守る転生ものとなっております。
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