第21話 いざ、白金想の家へ

「想の家か……なんか緊張するな」

「そうね。義兄さん、失礼のないようにね」



 なぜか雪乃と想が仲良くなってから数日が立ち、俺たちは想の家に招待されたのである。彼女曰く、「いつもお二人のおうちにお邪魔してしまっているのでうちにも来てください」とのことである。ちなみに俺が呼んでいるのではなく、雪乃が勝手に呼んでいるだけなのだが、それを言うのは失礼というものだろう。



「ついたけどこれは……

「すげえな……タワマンじゃん……」



 スマホに従い想の家に着いた俺と雪乃は二十階だてくらいのマンションを見上げて驚きの声を上げている。

 少し前に近所にやたらと高いマンションができ、雪乃と「どんな人が住むんだろう、石油王かな」とか軽口を叩いてきたがまさか友人が住んでいるとは……



「普段の言動はアレだけど、本当にお嬢様だったのね……」

「いや、想って結構上品だし、所作も気品あるじゃん。結構お嬢様じゃん」

「そうかしら? どちらかというとサトノ〇イアモンドのようなちょっとぶっ飛んだ感じがするけど……」



 雪乃が某ウマの擬人化ゲームに例える、そういうお前はそれこそ、食いしん坊だしメジロマック〇ーンみたいだけどな……あと胸元とか……などとは怒られるから言わない。

 パクパクですわーー♪



 しかし、お土産と思って近所のビアードパパでシュークリームを買ってきたんだが、大丈夫だろうか?

 もっと高級品の方がよかったかな?



 そんなことをおもいながらもマンションに入って、インターホンをおすと、「はーい♪ おまちしていました♪」と聞きなれた声に安堵していると扉が開いたので入ると、エレベーターの前のガードマンが会釈してくる。

 高級ホテルかな?



「確か上の方が高いのよね? 家賃はいくらくらいなのかしら?」

「わからん……マジでわからん……」



 部屋番号を告げてガードマンにボタンを押してもらいエレベーターに入った俺たちはようやく安堵の吐息を漏らす。

 雪乃もなれない状況に緊張しているようなので手をつないでやる。



「春兄……ありがとう」



 最近また素直になってきたなぁと思いながら、エレベーターで最上階についた俺たちが入口の扉をノックする。




「春人、雪乃ちゃんおかえりなさい、お待ちしていましたよ!!」



 そう言って扉を開けてくれたのは可愛らしいレースのエプロン姿の想だった。普段から使っているのかその姿は同に入っており、なんだか新婚みたいだななどとくだらないことを考えて……


 なんでいらっしゃいではなくおかえりなさいなんだろう?


 と疑問に思ったところで……



「せっかくきたんですから、こんなところで立っていないで入ってください」



 と少し右腕を引張られる。そして、柔らかい感触を感じ視線を送ると、腕の一部が想の豊かな胸に押し付けられていることに気づく。



「想……その……胸が……」

「どうかしましたか?」



 キョトンとしている想に、変に意識しすぎたかと笑ってごまかすと、今度は左手がぎゅーーーと握られた。



「いてえ……」

「何をにやにやしているのかしら、義兄さん」



 左を向くと、不機嫌そうに頬を膨らましている雪乃が俺の手を握っている。この状況は一体何なのだろうか?



「うふふ、雪乃ちゃんはかわいいですね。今度とある部分が大きくなる食べ物を教えましょうか?」

「……何のことかはわかりませんが、教えてもらいますね」



 想と雪乃は一体何のはなしているんだろうね、おっぱいおっぱい。



「おお、綺麗にしているね」

「確かにオシャレね……」




 リビングには一目で高級品だとわかるテーブルやソファー、そしてバカでかいテレビが置いてあるのが見える。

 シンプルだが、上品なまさに想のイメージにあった部屋である。



「そんなじろじろ見ないでください。引っ越したばかりでまだ家具もそろっていないので恥ずかしいんです」

「あれ? ご両親と一緒に住んでるんじゃないの?」

「いえ、言ってませんでしたっけ。一人暮らしですよ。防音もしっかりとしているのでいくら騒いでも大丈夫なので安心してくださいね。もちろん……お泊りをしても大丈夫ですから」

「あはは、さすがにそこまでは申し訳ないよ、なあ、雪乃」

「……そうですね、春兄」



 俺が笑いながら雪乃にも話をふると、なぜかこいつは意味ありげな笑みを浮かべた。どうしたんだろうね、まだ緊張しているのかな?



「あ、そうだ。雪乃ちゃんに見てたいものがあるんです。よかったら私の部屋にきてくれませんか?」

「ちょうどいいですね、私も例のものを渡したかったんです」

「では、ちょっと席をはずしますね。よかったらこれを飲んでいてください」

「想先輩がいないからってあさったりしてはダメですよ」

「そんなことするかよ!! ヤンデレじゃあるまいし」



 俺の軽口になぜか二人が一瞬目を逸らしたのは気のせいだったのだろうか? すっかり仲良くなっている二人がリビングを出ていくのを見て、疎外感を感じる。

 それにしても……こんな広い家に一人で想は寂しくないのだろうか……? そして、彼女の両親はなぜ一緒に暮らしていないのだろうか? 

 そんなことがよぎる。



「想に聞いてみよう。普段世話になっているから力になりたいしな……それにしてもすげえ絶景だなぁ……」



 何気なく窓を見てその景色に思わず感嘆の声をあげる。うちの学校やデパートはもちろんここら一帯を見下ろせる。

 そして見慣れた建物が目に入った。



「あ、俺んちじゃん。双眼鏡でもあれば俺の部屋も見えるかもな」



 最近の双眼鏡はとても高性能で、ストーカーとかの悪用がやばいとか聞いたことあるな……そんなくだらないことをおもいながら、窓のそばにある箱が中途半端に空いており、なにやらレンズのようなものが見える。

 その箱はちょうど双眼鏡くらいのものが入りそうなサイズで……


 まさかな……


 思わず手を伸ばして……



「春人……女の子の部屋のものを漁るのはダメですよ」

「うおおおおおおお!?」



 突然耳元でささやかれて思わず大声を上げてしまった。慌てて振り向くといつものように可愛らしい笑顔を浮かべている想が立っていた。


 全然気づかなかった……絶でもつかえるんだろうか……?



「ごめんごめん、ふたが開いていたからつい中身が気になって……」

「もう、私の下着とかだったらどうするんですか? 春人のエッチ」



 冗談っぽく返しながら想は箱のふたをきっちりとしめる。結局何が入っていたのだろうか?



「そんなことよりも……こちらを見てみてください。雪乃ちゃん、かわいいでしょう?」

「え……これは……」

「その……ご主人様……似合っているでしょうか?」



 そこにはなぜかメイド姿の雪乃が顔を真っ赤にして立っているのだった。しかも、これはただのメイド服ではない。俺の推しゲーム『ヤンキス』のヒロインとおなじかっこうをしていたのである。





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それではまた明日の更新で

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