第15話 春人とヤンデレ少女達
あの後は雪乃がなぜか拗ねていて大変だった。なんで俺の居場所がわかるんだと聞いたら、目線を逸らしながら『兄妹ですから当たり前です」と言われてしまった。
そして、土曜日となり、俺は考え事がてらいつものように地縛霊を探すために心霊スポットを巡っていた。
「ヤン♪ ヤン♪ ヤンデレー♪」
ヤンキスのテーマソングを口ずさみながら自宅から二駅ほど行った場所にある廃病院を探索する。いや、今回の真の目的は地縛霊を探すことではない。考え事に一つの決着をつけることだ。
「ヤンデレって本当にいるのかな?」
フィクションのような存在であり一途に一人の人を想う存在。そりゃあメンヘラとかはいるのは知っているよ。エプロンに着替えたらかわいいよね?
でも、今考えているのはそういうことではない。俺が本当に欲しいものは……本当の愛というのは狂信的なまでに一途で……ずっとその人のことを想う真実の愛だ。
それこそ……旦那が死んだくらいでほかの男になびいて……子供を置き去りにしないくらいの狂っている愛を望んでいるのだ。
そして、そのことを想うと、なぜかこの前話したときの白金さんの狂気に満ちた目が思い出されて背中がぞくりとするとともに胸が熱くなる。
「ヤンデレって本当にいるのかな?」
「うふふ、いたらおもしろいですよね。一途な恋って憧れます」
「そうだね……って、うおおおおおお!???」
一人のはずなのになぜか返事があったので、振り返ると長い髪にワンピースの女性が見えて俺は思わず悲鳴をあげてしりもちをついてしまった。
「まさか……お化け……? マジで出てきたの?」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!? お化けですか、安心院君こわいです!!」
とっさに指をさすとなぜかお化けも悲鳴をあげて、抱き着いてきた。ちょうど豊かな胸元に顔がはさまれるようになり柔らかい感触と甘い匂いが俺を襲う……おっぱい!!
そして、この胸の大きさと、この声は……
「もしかして白金さん!? なんでこんなところにいるの!?」
柔らかい双丘から顔を引きはがして、薄暗かったためお化けだと勘違いしてしまった白金さんにはなしかける。
「それは……休日なのに安心院君を見かけて嬉しかったので挨拶をしようかなと追いかけたんですが……迷惑でしたか?
「迷惑じゃないけど、よくこんなところもまで来たね。こわくなかった?」
「実はちょっとこわくて……まだ震えています」
そういうと俺の顔を見つめながらはにかむ白金さん。むっちゃ可愛い!! そして、たまたまこんなところであった白金さんをまえに思わず熱い気持ちと笑みがこみあげてくる。
「とりあえず、最初に出会ったときみたいに天井が落ちてきたらあぶないし、ここを出ようか?」
「え? いいんですか、安心院君はここに何か用があったんですよね? 私のことは気にしないでください。肝試しみたいで楽しいですし、安心院君がいれば安心ですから」
暖かい感触と共に白金さんが俺の手を握りしめてくる。まるで絶対離しませんとでもいうかのように……
「ああ、大丈夫だよ。用事は終わったようなものだからね」
「そうなんですか?」
「うん、せっかくだし、お茶でもしようよ。ラノベの話とかもしたいしね」
そんな彼女の手を握り返すとびっくりしたように目を見開いて……嬉しそうに頷いてくれた。そう、俺のやりたいことは終わったのだ。
俺は白金さんを家まで送り届けてから、自室に届いているアマ〇ンの段ボールを空けると『探偵も使う盗聴、GPS発見器』とやらを取り出した。
「これで反応すれば俺の悩みは解決される」
そう、俺が考えていたことは一つはヤンデレが実際にいるかということと、そして、白金さんにヤンデレの素質があるかどうかだ。
実はいつの日かヤンデレ美少女に出会った時にと色々と調べていたのでこういうことに関しては詳しいのである。
もしも、彼女が俺に盗聴器やGPSをつけるような女の子だったら……そう思って高鳴りを隠しながら制服にむけて発見を使うと『ビービー!!』という機械音が発生する。
「ははは、マジかよ。この世には本当にこんな素敵なヤンデレ少女がいるんだな!!」
感動のあまり胸が熱くなってくる。ラノベやエロゲにしかいないと思っていたヤンデレ少女が実在したのだ。そして、ヤンデレ少女に愛されれば……
「ヤン♪ ヤン♪ ヤンデレー♪」
鼻歌を歌いながら制服をあさって発信器を取り外した俺はどうやって、白金さんにGPSのことをどう切り出そうかと悩んでいるといまだに機械が『ビービー』となっているのに気づく。
機械は壁を向いており、その向こう側は雪乃の部屋である。
「あいつも美少女だからな……変なストーカーにでも、取り付けられたのか?」
自分に仕掛けられる場合は歓迎だが可愛い妹の場合は別である。お兄ちゃんとして義妹は守れねばならない。
ちょうど留守中なのでこっそりと処理してやろうと、部屋に入ると、ふんわりと甘い香りがしている。
「なんか悪いことをしている気分になるな……」
そう思って、なにげなく視線をベッドに向けるといつの間にか俺がなくしたシャツが置いてあった。間違って洗濯物がまぎれてしまったのだろうか?
「え? なんで……?」
不思議に思いながらも、機械が示している机の棚を空けると、そこにあったのは……受信機と予備の発信器だったのだ。
なにがおきてんの? 発信器を仕掛けたのは白金さんじゃなくて、雪乃だったのか、でもなんで……そんな風に混乱してる時だった。
玄関のあく音と共に「ただいまー」という可愛らしい声が聞こえてくるのだった。
★★
「ひぃ!!」
街を歩いている私は前を歩いている二人の同世代の男女をみて思わず悲鳴をあげてしまった。男の方に見覚えはないが、女子の方には嫌というほど見覚えがあったのだ。
「白金想……あなたは新しい依存先を見つけたのね……」
中学三年生の時の恐怖が再び思い出されていく。いつも誘っていなかったのにいる彼女。どんなひどいことをしても大丈夫だよという彼女。
感じるのは圧倒的な恐怖とわずかな罪悪感。
「私があの女を外に解き放ってしまったんだ……だったらせめて、注意ぐらいはしないと……」
少女は緑川美咲は使命感に満ちた目でそうつぶやくのだった。
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