第16話 白金さんに相談しよう

「じゃあ、いってくるわ。義兄さんも遅刻しないようにね」

「ああ……」

「あと……不純異性交遊は控えた方がいいわ。具体的に言うとあの白金先輩とはあまり関わらない方がいいと思う」

「ああ……」



 翌朝、俺はいつものように雪乃の朝ご飯を作り見送っていたが心はここにあらずだった。だって仕方なくない? 義理とはいえ妹が俺に発信器をつけていたんだよ。いったいなにがあったっていうんだ?



 考えられるのは一つである。


 やべええ、俺って素行不良だと思われている……? どうしよう。心霊スポットが探索が趣味の健全な男子高生なのに……

 雪乃はまじめだからなぁ……危険なところに行く俺を心配してくれているのかもしれない。



 だけど、一瞬だけど、よぎってしまう。

 もしも雪乃がヤンデレだったらと……白金さんのようにこの世には意外にも結構な人数のヤンデレ少女がいるんじゃないかと……

 


「義兄さんどうしたの? ちゃんと話を聞いてほしいのだけれど……」

「うおおおお!?」



 気づくと、目の前に拗ねた顔をした雪乃の顔があり思わず悲鳴を上げてしまう。どうやら考えごとに集中しすぎたらしい。

 


「もう、玄関先に変な声を上げないでよ。近所の人に聞かれたら恥ずかしいじゃないの?」



 すねた顔で唇を尖らす雪乃は元の顔が整っていることもあり、何とも美しい。あれ? 俺は雪乃にヤンデレの可能性があると知ってしまったからちょっとドキドキしているのか?

 


「ああ、悪かったな……ちょっと考え事をしててさ……」

「ふーん、考え事ね……てっきり可愛い義妹を意識してるのかと思ったわ」

「な……何を言っているんだよ、そんなはずがないだろ」



 心を見透かされたような言葉に少しつっかえながら返すと、雪乃はなぜか嬉しそうにほほ笑んでそのまま学校へと行ってしまった。

 そんな彼女の背中を見つめながら俺はキッチンに戻って心を落ち着かせるためにコーヒーを口にしてから登校する。

 


「おはよう白金さん」

「おはようございます、安心院君」



 案の定俺と同じタイミングでやってきた白金さんに挨拶を返して一緒に雑談をしながら登校する。



「安心院君はいつもああいう心霊スポットとかにいくんですか?」

「ああそうだね。幽霊ってさ、死んでもその人のことを想うんだ。すっごいヤンデレっぽくて素敵じゃない」



 白銀さんは一瞬大きく目を見開いて、クスリと楽しそうに笑う。



「確かにその発想はなかったです。それも純愛の一つですよね。もしもですが、私が死んだらまず安心院君を探して浮遊霊になると思うのでその時は楽しみにしていてくださいね」

「あ、そういうのむっちゃいいね。やっぱり白金さんとは本当に気が合うなぁ」

「うふふ、私もそう思います。この学校に来て、安心院君と出会えて本当に良かったです」



 他の人に話した時はドン惹かれるか、からかわれるような内容でも彼女は同意して冗談も返してくれる。なんて良い子なんだろう。



「でもさ、冗談でも死ぬなんて言わないでね。俺もすっごい悲しくなっちゃうからさ……」

「少し、不謹慎でしたね。でも、それだけ安心院君といるのが嬉しいってことですよ」



 そんな軽口を言いあいながら俺と白金さんはみつめあう。そして、俺は一つのことに気づく。彼女の瞳にうつった俺の目のハイライトが消えていた気がしたのだ。



「でも、こんな風にしていたらまた雪乃ちゃんに怒られちゃいますね」

「あいつは生真面目だからなぁ……」

「うふふ、大好きなお兄さんをとられたと思って嫉妬しているのかもしれませんよ」


 

 学校が近づいてきて怒る雪乃を思い出したのか白金さんがクスリと笑う。ああ、嫉妬か……もしも、あいつが俺のことを実は大好きで……その気持ちをずっと秘めていたヤンデレっ子だったら俺は……どうなってしまうのだろう。

 

 最高じゃないか!! 


 胸が……心が熱くなっていく。だが、確証はない。せっかくだし、俺と同様にヤンデレに詳しい白金さんに相談してみるのはどうだろうか?


 雪乃が俺に発信機をつけていたこと。そして、ヤンデレで……実は俺のことを好きな可能性がないかなって……



「ねえ、白金さん。今日もお昼を一緒にしない?」

「はい、もちろん、私はそのつもりですよ。今日は日差しも良いですからね。中庭で食べるのは楽しそうです。自家製レモネードも持ってきたんですよ」

「ああ、それなんだけどさ……大事な話が……相談したことがあるんだ。だから二人っきりになれる所がいいな」

「え、二人っきりですか……?」


 

 快くオッケーしてくれるかと思いきやなぜか白金さんは驚いたように大きく目を見開いて、なぜか顔をうつ向かせてしまった。あれ、もしかして距離感間違えた?



「あの二人っきりがいやだったら……」

「そ、そんなことはありません!! 単にびっくりしただけです。お昼がたのしみですね。ちょっと用事を思い出したので私は先に行きますね。いろいろと準備しておきますから!!」



 白金さんはなぜか無茶苦茶噛みながら返事をすると走って行ってしまった。その顔が真っ赤だったのは気のせいだろうか?


★★




「ああ、それなんだけどさ……大事な話が……相談したいことがあるんだ。だから二人っきりになれる所がいいな」



 そういわれたときに私は自分の耳を疑った。そりゃあ、自分でも無茶苦茶頑張って安心院君にアプローチをしていたのだ。こうなることを待っていた。

 だけど、思っていたよりも早すぎる。



 だって……わざわざ二人っきりになりたいって……もう、これは告白するってことですよね?



 相談したいことは結婚式のことだろうか? それとも子供は何人とかそういう話だろうか? ようやく彼が私の好意を受け入れてくれると思うと嬉しいはずなのにとても恥ずかしくなってしまい、つい、逃げ出すように教室へと走って行ってしまった。


 授業中もちらちらと彼を見てしまったが胸が熱くなっている自分に驚いてしまう。そうして、長かった授業が終わりお昼休みになるのだった。








勘違いしてしまった白金さんはどうなるのか?


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それではまた明日の更新で

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