第17話 春人と想
「じゃあ、行こうか?」
「は、ふぁい」
お昼休みになり、白金さんに声をかけると彼女はなぜか顔を真っ赤にして嚙みながら返事をする。今日は体調でも悪いのだろうか?
いつもはどんな時でも不思議と視線があって、可愛らしい笑顔で俺を見つめ返してくれるのに、今日は視線が合わないうえにずっと顔は真っ赤だ。
「あの体調が悪いようなら別の日でも……」
「大丈夫です!! それよりもお弁当を食べに行きましょう。安心院くんのお話を聞きたいです!!」
「ん、ああ……」
俺の言葉をさえぎるようにしてむっちゃ大きな声で反応してきた。白金さんは大丈夫だろうか? そう思ったがまあ、本人が大丈夫というなら大丈夫なのだろう。
「ここは……いつぞやの書庫ですね」
「うん、ここならめったに人がこないからさ……それで相談なんだけど……」
「安心しくてください。安心院くんの言いたいことはわかってるますよ」
俺が彼女から渡されたお弁当箱を開きながら雪乃のことを話そうとしたら、白金さんは顔を真っ赤にしながらうなづいた。
マジで、俺が義妹との関係で悩んでることをしっていたのかよ? 超能力者かな?
「答えを伝えますね。もちろん、イエスです。子供は何人欲しいですか ? 私は五人欲しいです。男の子が二人と、女の子が三人ですね。ああ、でも女の子が多いと安心院くんは緊張しちゃいますか? 名前は二人の名前をいれたり、好きなものをいれたいですね。二人のですよ。だって、そっちの方が二人の子って感じがしますからね。あと、子供がいくらかわいくても私があなたの一番ですからね。だから、子供がいくらかわいくても私のことをないがしろにしてはいけませんよ。あとは住むところはどうしましょうか? やはり一軒家が良いですか? わかりますよ。私たちの城ってかんじがしますもんね。ずっと一緒にいたいし、お互い視界に入っていないと不安だと思うので個別の部屋は不要ですよね? ああでも、書斎は欲しいですよね、安心院君も私も本がだいすきですもん。もちろん雪乃ちゃんの部屋も用意しましょうね。三人で一緒に暮らすのも楽しそうです。あ、それとお互いの呼び方も変えませんか? 苗字呼びなんて余所余所しいじゃないですか? 私のことは想って呼んでくださいね。ちゃんやさんとかはつけないで呼び捨てが良いです。なんかそっちの方があなたのものって感じがして好きなんです。その代わり、私も春人って呼んでいいですか? 春人……えへへ、良い名前ですよね。春人といると春みたいに気持ちが浄化されていく気がします。名前は体をあらわすってやつですね。それと浮気はだめですからね。流石に生活があるので異性と話すなとはいいません。でも、二人っきりでごはんとか言ったら悲しくなって、その女の子を殺してしまうかもしれません。なーんちゃって、流石に冗談ですが、それだけショックっていうことですからね。いろいろ言いましたが、それだけ春人に本気だっていう事です。改めてよろしくお願いしますね」
すっご、白金さんは一息でむっちゃ長文を語った。それにしてもこれは俺への愛の告白みたいだな……まさか彼女は俺のことを……いや、それは違うだろ。だって、相談事があるって言ってその解決方法なのに告白してくるはずがないだろう。
そう考えてようやく理解した。
「なるほど……流石は白金さんだね!!」
「もう、想って呼んでくれっていってくださいってお願いしたじゃないですか? だって、私たちは……」
「こういう風に告白して雪乃の反応を見てみればいいのか……だけどさ、確かにこれであいつの反応はわかるけど、なんか人の心を試すみたいで申し訳ないよ。ほかにも良い方法はないかな? それに義理とはいえ妹に告白するのは勇気がいるし、失敗したらむっちゃきまずくなっちゃうよ」
確かに雪乃が普通の子だったらドン引くだろう。そして、俺を想うヤンデレ美少女だったら、結ばれてハッピーエンドになる。だけど、俺の社会的立場終わらない? それに、告白ってさ俺が本気でこの人だって思ってからするものだと思うんだよね。
そんなことを思っていたら目の前の白金さんが「は?」と間の抜けた顔をしていたことに気づく。そして、徐々に彼女の目からハイライトがさーーーっと消えていく。
「なんで今雪乃さんの名前が出てくるんですか? それに義理のってことは血がつながっていなかったんですか?」
「え? だって、俺は雪乃に発信機を仕掛けられていたからあいつがヤンデレ少女かもしれないってことを白金さんに相談しようとおもっていたんだけど……もしかして伝わってなかった? それと雪乃とはいとこだがら血はつながっているよ」
白金さんは一瞬顔を真っ赤にしてから下を向いてぶつぶつとつぶやく。
「なるほど、そういうことでしたか……私もうかれていたようですね。それに、雪乃さんが義理の妹さんだったんとは……これは思ったよりも急がなくてはいけないかもしれませんね……」
そして、顔を上げると先ほどまでの動揺が嘘かのようにいつものように優しい笑顔を浮かべていた。なんか様子がおかしかったけど、戻ったみたいでよかった。
「すいません、安心院君。さっきのは忘れてください。実の妹さんにならばともかく、義理の妹さんとなると告白するだけで彼女のご両親に迷惑が掛かってしまいますからね。私も他に何か良い作戦がないか考えてみます」
「やっぱりそうだよね……何とか、雪乃がなんで俺に発信機を付けたか知りたいけど……」
うーんと可愛らしく唸りながら一生懸命に考えてくれる白金さんには感謝しかない。でも、実の妹に告白した方がもっとやばくなると思うけど……お嬢様っぽいし、ちょっと天然が入っているのかもしれないな。
「でも、本当にありがとう。こんなに親身になってくれて嬉しかったよ。それにさっきの告白……演技だったとはわかっているけど、すごい熱量だった。あんなふうに告白される男性は幸せだろうね」
「な……もう、安心院君はずるいです!!」
先ほどまでの落ち着いた様子はどこにいったのか、白金さんが再び顔を真っ赤にしてほほを膨らませる。別に冗談で言ってわけでじゃないんだけどな……
あんなふうに熱烈に告白されて揺るがない人間がいるものだろうか? だけど、春人か……
久々に女性に下の名前で呼び捨てにされて懐かしい感情が俺を支配する。俺を捨てたあの人も抱きしめながらそう呼んでくれていて……
「……春人」
「え?」
突然名前で呼ばれて俺の顔が柔らかいものに包まれる。これは……おっぱいである。すっかり馴染みのある甘い香りとこの感触で彼女がどうしてくれたかわかってしまう。
「白金さんなんで……?」
「春人がこう呼んで、こうしてほしかった顔をしていたからでしたが違いましたか……」
「違わないけど……迷惑じゃ……」
言葉の代わりに俺を抱きしめる力がさらに強くなる。迷惑ではないと証明してくれるみたいで何ともここちよい。
「ふふ、私は春人に頼ってもらって嬉しいんです。でも、感謝しているなら私のことも想ってよんでくれたら嬉しいです」
「ああ、ありがとう……想」
「私はずっと一緒にいますからね、春人」
お互い名前で呼び合っただけなのに不思議と俺の心は高ぶっていき、そして、彼女の柔らかい感触に溺れていくのだった。
おっぱい!!
なんだかんだ距離が縮まった二人…雪乃はどうするか?
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それではまた明日の更新で
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