第18話 雪乃の策略

もう、雪乃ちゃんったら、お兄さんにいい感じの女友達ができたからって嫉妬しないの」

「別に私は嫉妬なんてしていないわ。ただ、義兄さんが悪い女に騙されていないか心配なだけよ!」

「はいはい、そうですねー」

「ううーーもう私をからかわないでってば!!」



 雪村雪乃が生徒会の仕事を終えて、一人の友人と帰宅してるがここ最近の話題は春人の話ばかりだ。中学のころから見目麗しく、どんな男子にも冷たくあたるがブラコンで有名だった彼女は最近あらわれた白金によってテンパっているのを見るのは友人たちの楽しみになっていた。

 思春期の女の子もまた恋話は大好きなのである。



「だから、言ったじゃないの。どうせ血がつながっていないんだし、強引に既成事実をつくっちゃえばいいんだって……」

「そんな破廉恥なことができるはずがないじゃないの。もう他人事だと思って!!」



 友人が心配してくれているの言うのはわかっているもののあんまりの言い方にほほを含ましてにらみつける。

 だが、その様子は一切怖くない。他人には厳しいが身内にはだらしないところも見せるため、彼女は雪乃の甘えん坊体質をしっているのである。



「まあまあ、春人さんとまたなんかあったら話は聞くから、頑張ってね」

「うん、ありがとう……またいろいろと相談すると思いますがよろしくお願いするわ」

「まかせて!! そうだ、裸エプロンで「お帰りお義兄ちゃん!!」っていうのはどうかな?」

「その……なるべくハレンチなことはしない方向で……」



 雪乃は友人に別れを告げて家を向かいながら考え事を続ける。安心院春人は鈍感……というか自分が愛される存在ではないと思い込んでいる節があるのだ。

 それはこの数年ずっとアプローチを雪乃が痛いほど実感している。



「これを何とかするには多少の強引なアプローチが必要だと思うのだけど……」



 それは家族と認識されている雪乃では難しいと理解している。現に先ほどの友人のアドバイスでちょっとエッチな寝間着で添い寝してみたが春人はすぐに寝てしまったのである。

 そこで頭をよぎるのはどんどん安心院と仲良くなっている白金という女である。彼女が真のヤンデレとしての素質があるのならば春人もリアルの女性に興味を持ってくれるのではないだろうか? そして、そうすれば雪乃のアプローチにも気づいてくれるのではないかとおもうのだ。

 一種のショック療法である。



「うう……春兄が一度ほかの女性といい感じになると思うと、胸が痛いけど……私にヤンデレっぽさはかけらもないし、何よりも今の春兄を見ているのはつらいものね……」



 大きくため息をついた時だった。やたらとフリフリのついた俗にいうゴスロリという衣装を身に着けた女の子が自分の家をじーっと見つめていることに気づく。

 まさかまた春人のストーカーではないだろうか? そう思った雪乃は大きなため息をつくと気配を消して少女に声をかける。



「あの……うちに何か用でしょうか?」

「ひぃやぁぁぁぁ!!」



 まるで漫画みたいに情けない声を上げるゴスロリの少女。彼女はおびえた顔をして……雪乃の顔となぜか胸元を見て、安堵の吐息を漏らす。



「ああ、びっくりした。気配を感じさせないでちかづいてきたから、てっきりあの子に見つかったと思って、驚いたじゃない」

「あの子……ですか?

「ええ、あなたの家族が親しくしていると思うんだけど……白金想って子を知らないかしら?」

「白金……先輩ですか?」



 ちょうど頭に浮かんでいた少女の名前が予想外の所から聞こえて雪乃は思わず大きく目を見開くと、謎の少女はため息をつく。



「その顔だとあなたはあの女を知っているようね!! 私はあの女に関わってはいけないと警告しに来たのよ!!」

「それはどういうことでしょうか?」

「そう……あの女は初対面ではわからないけど、とっても危険なの。私の名前は緑川美咲……かつて彼女の親友だった私は知っている。そう……今風にいうならば完璧で究極のヤンデレなのよ!!」



 目の前の少女の言葉に私はどんな顔をしていただろうか? だけど、まさにほしい言葉を聞いた私の脳裏に一つの考えが浮かぶ。


「すいません、詳しく教えていただけますか?」



 そうして、私は名前も知らないゴスロリ少女の話を聞くことにしたのだった。


★★



 目覚ましの音と共に目を空けて体を伸ばす。そして、起き上がろうとして違和感を感じる。あれ? なんかぬくもりがあるんだけど!!

 もしかして雪乃が甘えてきたのかと思ったが、この匂いは彼女のものではない。最近……というか最近嗅いだ匂いだがまさか……と思って苦笑する。



「さて、かわいい義妹のためにご飯を作らないとな!!」



 そうして、キッチンの方へと向かおうとした時だった。トントントンとリズミカルな包丁の音が鳴り響き、みそ汁のよい匂いを感じる。



「え? まさか雪乃が……いや、あいつが焦がさずにみそ汁を作れるはずがない!!」



 俺が恐る恐るキッチンをのぞくとそこには信じられない光景が広がっていた。



「うふふ、春人も雪乃ちゃんもこの味なら喜んでくれますかね?」



 今さっき作ったであろう卵焼きを味見しながら楽しそうにほほ笑む白金……じゃなかった。想がいたのだった。


 え? ここってうちだよな。なんで想が勝手に料理してんの?



「義兄さん……おはよう。入らないのかしら?」



 人の気配がして振り向くと寝ぼけ眼の雪乃が立っていた。やばい……なんでかわからないが、想が勝手に入って料理をしていたなんてわかったら喧嘩になるかもしれない。

 そう思って止めようとしたがおそかった。キョトンとした顔の雪乃はさっと俺の手を避けてそのままキッチンルームにはいって……



「おはようございます。想先輩。よい匂いですね」

「雪乃ちゃん、それに春人おはようございます。ちょうど朝ご飯ができましたよ。今日は卵焼きと焼き鮭に、お味噌汁です。お二人の家庭の味にあうかはわかりませんが食べていただけると嬉しいです」



 満面の笑みを浮かべあう雪乃と想。ごめん、お前らそんなに親しくなかったよな? 何が起きてんの? 状況が読めずにいた俺だったが、おなかがっくーーーっと鳴り空腹を主張してくる。


 まあ、なんか仲良くなってるし、美味しい朝ご飯食べれそうだしいっかー。



 そして、俺は想の作った朝ご飯にありつくのだった。



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それではまた明日の更新で





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