第19話 春人と雪乃と想

「では行きましょうか? うふふ、こうして三人で登校すると家族みたいで良いですね」

「こうして義兄さんと一緒に登校するのは久しぶりね……変なところに触ったらだめよ」

「え? なにこれ……」



 俺が困惑するのも無理はないだろう。あの後三人でご飯を食べて、一週間が過ぎ朝の見回りも終わった雪乃も含めた三人で学校に登校するのは良いのだが……

 なぜか俺の右手は想が、左手は雪乃が握っているのである。最初は手をつないでいで登校するのは恥ずかしいと言ったのだが雪乃が「ふーん、想先輩とは手をつないで登校したのに私とはダメなのかしら?」と不機嫌そうになり目のハイライトが消えたので、慌ててつなぐと、今度は想が「あー、私もつなぎたいです」と言ってきたが両手が埋まるのはこけたりしたときにまずいってと言うと「私が春人の手になるから大丈夫ですよ」とか言い出した挙句、「それとも……雪乃さんとはつなげて私とはつなぐことができないんですか」とハイライトの消えた目でいわれたのだ。



 ヤンデレサンドかな? 



 まあ、せっかく朝ご飯を作ってもらったし、手になってくれるならいっかーとつないだのである。こちらとしてもヤンデレっぽい二人の美少女と手をつなぐのは気分がいいから気にしないことにした。



「見ろよ、なんだあいつ……なんであんな美少女二人と……」

「くっそ、うらやましすぎる……」



 ふはははは、周囲の視線が心地よい。まあ、雪乃は義妹として懐いているだけ……想は友情の延長線上の可能性もあるんだろうが、周りに羨望の目で見られるのは普通に気持ちがよいものである。






「おいいいいい!!! 朝のあれはなんだよぉぉぉぉ!!!」



 教室に入るなり俺は大声を上げる藤村によって隅っこの方に拉致られた。なぜか半泣きで目が血走っていて怖い。



「あれってなんだよ?」

「すっとぼけんじゃねーーー!! 今日の朝に白金さんと雪乃ちゃんと手をつないで登校していたろ!! あれはなんなんだよ。ラノベのハーレム主人公か?」



 藤村の言葉で俺は今日の自分の行いを思い返す。クラスで一番かわいい美少女と、学校のニ大美少女と称される義妹と仲良く手をつないで登校する。

 まさしくラブコメにありそうなワンシーンである。だけどさ……



「確かに……あれはなんなんだろうな?」

「お前、彼女どころか女友達もいない俺を煽ってんの!?」



 もっともな物言いだとは思うが、俺もよく事情が分からないのだから仕方ない。そもそも二人が仲良くなった経緯も、雪乃が昔の様に人前で甘えるようになった経緯もわからないのだ。

 こちらが言葉を詰まらしていると、俺たちの様子を見ていた男子たちも参加してきやがった。



「確かに白金さんとは仲がいいと思ったが雪村さんとは義理とはいえ、兄妹だろ? なんで手をつないでるんだ?」

「それによくあの雪村さんがほかの女がお前と手をつないでいることを許したな……」

「てか、白金さんと雪村さんどっちが本命なんだよ」

「ああー俺も白金さんにいつの間にかダメ人間にされたい……」

「俺は雪村さんにロシア語でぼそりとデレてほしい……」



 みんなが好き勝手いうからかどんどん自重がきかなくなってくる。どうしようかと思うと救世主は意外なところからやってきた。



「春人と雪乃ちゃんとはは友人として三人で仲良くさせてもらっているんです。だから、あんまり春人をいじめないでくださいね」

「想……」



 いつものように笑みを浮かべているのに妙な迫力のある想に男子たちも静かになっていく。さっきまで女子と話していたはずなのに助けに来てくれたらしい。

 何人かの男子が「いつの間にか名前呼びになっている」とかつぶやいているが気にしないでおこう。そうしてちょうどよいタイミングでチャイムが鳴った。



「助かったよ、想」

「うふふ、私も春人の力になれてうれしかったです。もっと甘えてくれていいですからね」



 にこりと笑う彼女の瞳は何か重い感情を秘めていて蠱惑的にうつり……なぜか俺は水の中で溺れるような気持ちになるのだった。





 そして、待ちに待ったお昼である。今朝のことがあったからか男子たちも俺と想いが二人で抜け出すことに対して興味深そうな目を向けるだけで得には何かを言ったりはしてこなかった。



「あれ? 今日はお弁当箱が三つ何だね」

「はい、春人には内緒でもう一人お友達を招待したんです。少ししてから来るので」

「お友達……?」



 怪訝な顔をするもなぜか、想はニコニコと笑っているだけである。まあ、俺意外にも友達はいるよなぁと思いながら、お弁当を食べながら雑談していると、なぜかやたらと大きな足音が聞こえてくる。待ち人がやってきたか? と思い振り向くとそこには予想外な人物が立っていた。



「雪乃……なんでここに?」

「なによ、その言い方は? 私がいない方が都合いいってことかしら? いやらしい」



 学校だからだろうツンっとした顔の雪乃だったのだ。



「雪乃ちゃんそれじゃだめですよ。お話したでしょう? わざわざ給食を早く食べてきたんだからちゃんと甘えなきゃ」

「う……春兄と食べたいと思って急いできたのよ。だめでかしら?」



 顔を真っ赤にしてそんなこと言う雪乃。それを見て満足そうに頷く白金さんがいる。マジでなにがおきているんだ?




次回なにがおきたかわかります。




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それではまた明日の更新で

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