第12話 白金さんの次の作戦

「おはよー」

「ううん……春兄もうすこしだけ……」

「雪乃は早く起きなきゃだめだろ、生徒会長なんだから」



なぜか寝不足気味な雪乃を学校へ行かせる



 あいつ、今日はいつもよりも甘えん坊だったなぁ……



、そんなことを思いながら、やたらと甘い匂いのする布団から出ると、俺はゆっくりと朝ごはんを食べてから玄関を出る。

 そして、即座に振り返ると俺はあいさつした。



「おはよう、白金さん!!」

「お、おはようございます。安心院君、なんで私がいるってわかったんですか?」



 やはりいた白金さんが大きく目を見開いて挨拶を返してくれる。まあ、二度あることは三度あるっていうし、なんとなく気配を感じたからあいさつしただけなんだけどね。



「あはは、なんとなくだけど会えるかなって思ったんだよ」

「うふふ、それはなんだか嬉しいです。これはもう運命ですね」



 運命か……個人的には偶然よりも必然の方が嬉しいんだけどななんて思いながら、俺はすっかり日常になった白金さんと登校する。



「そういえば昨日は妹さん大丈夫でしたか? その……安心院くんとの関係を誤解されてしまったようですが……」

「ああ、それなら大丈夫だよ。ちゃんとただの友達って説明しておいたからさ」

「ただの友達……ですか……」



 なんでだろう? 誤解のないように強調したというのに、なぜか白金さんの声に元気がなくなり目が少し濁っていく。

 だが、変化は一瞬だった、再び顔を上げた白金さんはいつものように微笑んでいった。



「それにしても安心院君は妹さんと仲が良いんですね。うちは一人っ子なのでうらやましいです」

「ああ、昔っからあいつは甘えん坊なところがあるからなー。最近はツンツンしているけど可愛いんだよ」

「なるほど……安心院君の彼女になる人は妹さんにも気に入られないと大変そうですね」

「あはは、そうだなぁ」



 俺に彼女か……そんな人現れないだろうなぁ……だって、ヤンデレ以外と付き合う気はないし……そんなことを思い適当に笑ってごまかす。



「むぅー、安心院君、もしかして、今俺なんかには彼女ができないだろうな……とか思っていませんか?」

「え、それは……」

「嘘をついても安心院君はすぐに顔に出るんですから……だから、もしも、お付き合いして浮気したらすぐに気づかれちゃいますよ」



 白金さんが冗談っぽく微笑む。

 


 思考を読まれた!? 雪乃の時といい俺はすぐに顔にでるようだ。ちょっとへこんでいる俺の手を何か暖かいものが包む。



「安心院君はとっても優しくて魅力的なんです。だから、その気になればすぐに彼女だってできると思いますよ」

「白金さん……」



 俺の手を握りながら優しく励ましてくれる。無茶苦茶嬉しいけど、これって深刻に悩んでいると誤解されてしまったようだ。

 てか、甘い匂いと柔らかい感触でくらくらしそうなんだけど……



 でも、俺に彼女か……万が一にだが、もしも彼女ができるというのなら、やはりヤンデレ美少女が良いな……それこそ、『ヤンデレ好き男子とヤンデレ女子の頭脳戦』のヒロインのような……


 とそんなことを考えていると、握られた手にちょっと力がこもったのを感じる。どうしたんだろうと白金さんをみるとなぜかまたハイライトが消えている。



「今……どの女性のことを考えていたんですか?」

「え? ああ、以前白金さんも呼んでいた『ヤンデレ好き男子とヤンデレ女子の頭脳戦』のヒロインだよ。あんなヤンデレ美少女が彼女だったら楽しいなって思って……」

「ああ、そうだったんですね。可愛らしいですよね、一途で素敵です」

「そうそう、毎朝勝手に迎えに着たり、強引にお弁当を作ってきたりとか良いよね。あとは盗聴器とかしかけてるのもすごかった。あんな風にたくさん愛されたら幸せだろうなぁ……」

「わかります、そんな不器用だけど一生懸命なところが本当に素敵で……ですが、安心院君はちょっと重いとか思いませんでしたか?」

「まさか、本当に最高だと思うよ。そもそも愛なんて重い方がいいでしょ」

「安心院君はそう思ってくれるんですね……うふふ、それはよかったです」



 よほどヒロインのことが好きなのだろう、白金さんは嬉しそうにほほ笑んだ。そして、校舎に入ってすこし経った時だった。



「義兄さん!! 前もいったけど不純異性交遊はだめよ!!」



 やっべ、また手をつなぎっぱなしだった。例によって目からハイライトが消えている雪乃に怒られとっさに手を放す。どう言い訳をしようかと思うと白金さんが口を開いた。



「雪乃さん、ちょうどお話があったんです。よかったら今度うちに安心院君と一緒にご飯でも食べにきませんか? 絶対美味しいって言わせてみますよ」

「「は?」」



 予想外の提案に俺だけでなく雪乃も間の抜けた声をあげるが、白金さんは満面の笑みを浮かべている。俺と雪乃の食生活を心配してくれているのだろうか?

 本当に優しい子である。



「間に合っています……私は義兄さんが作ったご飯しか口に入らないんです」

「いや、お昼とか給食食べてるだろうし、この前もピザ頼んで、一緒に映画見てたじゃん」

「義兄さんは黙ってて!!」



 思わずツッコミをいれると雪乃がじろりと睨んできた。はっはっは、反抗期かな? そんな俺たちのやりとりを雪乃さんは楽しそうに笑う。



「うふふ、お二人は本当に仲良しなんですね」

「そうなんです!! 私と義兄さんは本当に仲良しなのであなたが割って入る間はありませんからね」



 そう言い残して、雪乃は再び自分の学校の方へと戻っていく。いったい何だったのだろうか? 



「雪乃のやつは言い方がきつくてごめんね。あいつは人見知りなんだ。あとで注意しておくよ」

「いえいえ、気にしないでください。雪乃ちゃんは本当にかわいいですね」



 失礼な雪乃にも白金さん気になしていないとばかりに笑顔を浮かべる。



「それに……兄妹ですし、遺伝子的には実質安心院君ですからね。愛おしいです」

「え、なんだって?」

「いえ、お昼が楽しみだなって思っただけですよ」

「ああ、図書員の当番が一緒だってね、よろしく」


 何かをつぶやいた白金さんの表情は俺からは影になっており見えなかった。そして、この時の俺はすでに白金さんによる包囲網が張られていることに気づいていなかったのである。





今度は白金さんのターン



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それではまた明日の更新で

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