彼女たちがヤンデレであるということを、俺だけが知らない~「ヤンデレっていいよね」って言ったら命を救った美少女転校生と、幼馴染のような義妹によるヤンデレ包囲網がはじまった。
第2話 好きなタイプは私がピンチな時に助けてくれる方がタイプです(チラッ
第2話 好きなタイプは私がピンチな時に助けてくれる方がタイプです(チラッ
まずは新学期初日ということもあり、簡単な自己紹介をした。中学からの付き合いの人間ばかりということで、皆ふざけたり簡単にすましていたが、一人だけ例外がいた。
そう、白金さんである。
「姫ヶ埼中学からやってきました白金想です。周りは知らない人ばかりで緊張していますがよろしくお願いいたします」
恥ずかしそうに、だけど透き通った声による自己紹介に男子たちが騒ぎ立つ。
「おおー、姫ヶ埼って超お嬢様学校じゃん。なんでうちなんかに……」
「白金さーん。質問です!! 好きなタイプってどんな人ですか?」
「好きなタイプ……ですか?」
お調子者の藤村の言葉に彼女は一瞬考えるように、唇に手を当てると、なぜか妖艶な瞳を、こちらに向けてほほ笑んだ。
「そうですね……心優しくて、頼りになる方でしょうか……」
「おおー、俺優しいでーす!! 頼りになるって妹にいわれてまーす」
「うふふ、あとはそうですね。私がピンチな時に助けてくれる方がタイプです」
「うるさいわよ、藤村君!! 今は自己紹介の時間よ。次の人!!」
白金さんの言葉に藤村が手を上げるが先生に注意されて流される。そして、俺は席に着いた白金さんに声をかけた。
「白金さん、ああいう質問は適当に流していいんだよ」
「すいません……ずっと女子高だったもので、男子の方のノリがわからなくて……」
恥ずかしそうに赤面して、うつむく白金さん。その姿はまさに清純派美少女という感じで、男子たちのテンションがあがるのもわかる。
まあ、そんなものなのかと思っていると、何気なく机の上に置いていた右手が暖かいものに包まれる。
「こういうときどうすればいいかわからないので、アドバイスをいただきたいです。頼らせてもらってもいいでしょうか?」
当たり前のように俺の手に自分の手を重ね上目遣いでお願いしてくる。
「あ、ああ……というか手……」
やわらかい感触と、甘い匂いに困惑している俺がかろうじで答えると、彼女は大きく目を見開いてぱっと手を離した。
「ああ、ごめんなさい……女友達の時と同じように接してしまいました。いやでしたよね?」
「いや、別にそんなことはないけど……」
むしろこんな美少女に手をにぎられるなんて藤村らへんならばご褒美と言いそうである。
「うふふ、よかったです。やっぱり安心院君は優しいですね」
白金さんが俺のことをじっと見つめながら、嬉しそうにほほ笑んでくるのをみて、なぜだろう……胸がざわりとするのだった。
朝のホームルームが終わり、休み時間になったので、スマホをチェックすると早速通知がきていた。義妹の雪乃である。
雪乃『お義兄さん。今晩はカレーが食べたいんだけど(;^ω^)』
俺『ああ、別にかまわないぞ。ただ、友達と遊んでから帰るのちょっとおそくなるかも」
雪乃『友達? 友達って誰かしら? 女の子はいないよね?』
俺『俺に女友達がいないのは知ってるだろ……藤村だよ』
雪乃『そうだったわね(;^ω^) お義兄さんは私以外に仲の良い女性はいないもんね。じゃあ、そろそろ授業の準備があるので失礼するわね』
この間三分である。生真面目だからか雪乃は返信がとても速いし、五分以内に返さないと無茶苦茶すねるのである。
今日の献立は決まったし、かわいい義妹のために料理を頑張ろうとレシピを検索するのだった。
★★
休み時間に私は人通りのいないところで、安心院君の暖かさが残った手を頬に当てながら恍惚とした表情で呟く。
「ああ、安心院君……私を心配してくれて……やっぱり優しいです……わざわざ編入してきた甲斐がありましたね……」
廃墟で助けられてから想は彼のことで頭が一杯だった。そして、今日優しくされたことで、その想い(気持ち)は加速する。
「安心院君……私はあなたともっと仲良くなりたいです」
安心院君が触れた手を頬から唇に移動し、どこか艶かしい表情で、熱に浮かされたような瞳で彼がいるであろう教室を見つめながら私は呟くのだった。
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