第37話 春人の提案

土日の二日間散々イチャイチャした俺たちだったが、変わらず俺たちは学校でもイチャイチャとしていた。

 学校には一緒に登校し、三人と時々藤村を誘ってお昼を食べて、放課後は三人でうちか、想の家で食事をして過ごす。そんな理想的な生活をしていたのだが、そろそろ切り出さなくてはいけないだろう。

 


「想……話があるんだけどいいか?」

「はい、なんでしょうか?」



 部屋をノックするとお風呂上がりだったからか、少しほほの上気した想が俺を出迎えてくれる。胸元に深く切り込みの入ったネグリジェからのぞく谷間が何とも魅力的である。



「もう……昨日もあんなにイチャイチャしたのに春人は積極的ですね。嬉しいです」

「いや、ちょっと待って……うおおおお!?」



 俺の厭らしい視線に気づいた想に言葉の途中で抱きしめられてしまい柔らかい感触が俺の顔を包み込む。



 ここは天国かな……?



 じゃなかった。



「違うんだ。想。俺たちは生涯一緒にいることを誓ったろ?」

「はい……あの時は嬉しかったです。私の重い気持ちを受け入れてくれるっていってくださいましたよね」



 あの時のことを思いだしているのだろう、想の表情がうっとりとしており、俺の腕をぎゅーーーっとにぎりしめている。

 まるで一生離さないとばかりに……そんな彼女に答えるように俺も握り返して見つめる。



「ああ、その気持ちは今も変わりない。だから、想の両親にもちゃんと挨拶をしなきゃって思うんだ」

「私の両親に……ですか」



 想の表情がわずかに曇る。やはり友人と揉めたのがきっかけとはいえ、一人暮らしをしているのだ。両親とも多少はわだかまりがあるのだろう。

 だけど、彼女の両親は想の生活費を支払ってくれている。俺の母だった人とは違い愛情はちゃんとあると思うのだ。



「もちろん、想が絶対に嫌だって言うんだったら俺は強制しない。だけど、もしも仲直りしたいっていうんなら、俺を言い訳にしてもいいから話すのはどうかなって思って……結婚するときとは祝ってほしいし……」

「結婚……ですか……」



 俺とは違いまだつながりがあるのだから……という気持ちを込めると想は優しく笑って俺を抱きしめた。



「ずるいですよ、春人。そんなこと言われたら断れないじゃないですか……」

「悪いな……」

「なんで春人が謝るんですか? むしろ私がお礼をいう立場ですよ。きっかけをくださってありがとうございます」



 彼女の抱きしめてくる力が強くなるのを感じ、やはり俺の判断は正しかったのかなと安堵する。



「ちなみにさ、想の両親ってどんな感じなんだ?」

「そうですねぇ……お父さんはとっても優しいんですが、お母さんはちょっと怖いですね」

「あ、そうなんだ……」



 ふつう逆じゃない? と思わなくもないがそういう家庭もあるのだろう。『娘はわたさないわ』とかいわれたらどうしよう……




「では、さっそく、お母さんに連絡を取っておきますね」



 さっそく、スマホを手に取ったと想が文章を打ち込んで見せてくれる。『今度大切な人と三人で伺います。いつ暇ですか?』と書いてあり、速攻送信した。

 いや、ちょっと待って!?



「三人って雪乃も誘うのか?」

「当たり前じゃないですか、私たちは三人で家族ですからね!!」



 想がキョトンとした顔をしているが、ちょっと待ってほしい。俺と雪乃の関係はどう説明するんだよ?」 俺の計画では二人の関係を認めてもらってから雪乃の子とも話そうと思ったのだが……



「両親には本当の私をみてほしいんです。家を出て決めた決断を……」



 決意に満ちた彼女を見て俺も腹をくくる。そして、帰宅してきた雪乃が悲鳴をあげることになるのだった。

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