第31話 ヤンデレハーレム

二人のヤンデレ女子に迫られる。それはまさに俺が日々妄想していた理想郷ともいえるだろう。ただ、実際そうなった場合はどうすればいいかわからなくなるのが現実である。

 胸元のはだけた想にのしかかられて、上着をとちゅうまで脱いだものの恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にして固まりながらも俺をみつめている雪乃を見て、俺はどうすればいいのかわからなくなっていた。



「……二人は俺のことが異性として好きなのか?」

「ええ」

「はい」



 まるで示し合わせたように異口同音で返事が返って来る。その反応に俺は胸が高まると同時に罪悪感が襲ってくる。

 だって……だって俺は……



「二人の気持ちはうれしいよ。正直俺も二人のことが気になってる……だけど、俺はまだ二人のどっちが好きかがわからないんだよ。だから……こういうことはできない」



 これが俺の本音だった。そりゃあさ……ハーレムだーってエッチなことをする選択肢だってあったよ。だけど、俺をずっと慕ってくれていた雪乃や、俺の悲しみを聞いてくれて、自分のつらい過去を打ち明けてくれた想に対して中途半場なことはできないと思ったのだ。

 たとえ刺されることになってもそれは譲れないことだった。そう伝えた俺への反応は予想外のものだった。



「うふふ、やっぱり春人は優しいですね。それに……私と雪乃ちゃんで迷っているってことでいいんですよね」

「あ、ああ……最低だと思うが俺は二人のことを人としても女性としても好いているよ。だけど……どっちの方が好きとかまだわからないんだよ」

「まったく……春兄は優柔不断ね……でも……だからこそちょうどよかったわ」



 想と雪乃が俺に微笑んで抱き着いてくる。まるで俺をわけるかのように雪乃が右胸に想が左胸に頭を押し付けるかのように……



「二人とも……」

「実はですね……雪乃ちゃんと一緒に話していたんです。春人君がよかったら二人で一緒に恋人にしてもらおうって……だって、春人君を支え続けてくれたのは雪乃ちゃんですから……」

「そして、春兄を癒して、恋愛する気にしてくれたのは想先輩だもの……」

「「だから……私たちをあなたが幸せにしてください」」



 二人ともがどこか恍惚とした表情で、だけど強い決意を感じる瞳で語るのを見て俺も決意する。二人は俺がいない間に色々と話し合っていろいろと決めたのだろう。むろんもやもやすることだってあったはずだ。

 ヤンデレ美少女たちがそこまでいってくれるのだ。ならば断わるのは失礼にあたるだろう。それに俺もそこまで思われているというのが嬉しかった。



 こんなに俺を想ってくれる人たちはもうあらわれないだろう。



 一瞬よぎった俺を見捨てた母の姿が、脳裏をよぎって……二人の顔がかき消していく。



「二人ともそこまで思ってくれてありがとう……俺もさ、決めたよ……二人とも付き合ってくれ」

「はい……お願いします。あ、それと……その……エッチなことをする順番もちゃんと話し合っておきました」



 想の言葉に思わず間の抜けた声をあげてしまった。



「は?」

「春兄のファーストキスは私がもらって……」

「春人君の初めては私がもらいます。経験はありませんが頑張りますから遠慮なく甘えてくださいね!!」



 顔を真っ赤にして語る二人。ちょっと待って俺のファーストキスと童貞が奪われるのが勝手にきまっているんだけど……

 だけど、まあ二人が納得しているならいいのか? 



「ではさっそく……」

「ちょっと待った!!」



 待っていましたとばかりにズボンを降ろそうとしてくる想にまったをかける。彼女は不服そうな顔をしているが俺の話も聞いてほしい。

 そして、発情している想と顔を真っ赤にしている雪乃をなだめる。




「そのさ……そういうことをする前に三人でデートをしないか? せっかく付き合ったんだからさ。そこで俺の方から二人への想いを告げたいんだ」

「春人……」

「春兄……」



 俺の提案に二人が嬉しそうに目を輝かせて再び抱き着いてくる。柔らかい感触と甘い香り……そして、これまでの恋愛への恐怖が解かされていくのをかんじながら抱き着き返すと……いきなり首筋の左右に湿ったものが押し付けられ……どんどん吸われていく。



「うおおお?」

「春人君の気持ちはわかりました。ですが……ほかの虫が寄り付かないようにマーキングさせてもらいますね」

「春兄は私たちのものですから……それをわかるようにしないといけないものね」



 五分間ほどそうしていて二人とも満足したのか俺の首筋からはなれた彼女たちの唇が唾液で光っていて何ともなまめかしくい。そして、鏡にうつる俺の首筋にはまるで二人のものであるという証明とでもいうようキスマークがつくられており興奮と共に充実感に襲われる。



「……」

「春人君……もしかして嫌でし……きゃっ」

「春兄……? ちょっと!!」



 ヤンデレ行為をされてしまいおさえが効かなくなった俺の方が二人を押し倒す。まずは想のやわらかく白い首筋をむさぼるようにして吸う。相変わらずせまられると弱いのか「あっ……♡」などと可愛らしい悲鳴を漏らしながら顔を真っ赤にしている。

 強い力で抱きしめてくる彼女の首筋から口を離して、起き上がると、名残惜しそうな想の顔が見えたので頭を撫でてやる。



「たまには甘やかしてもらうのも良いですね……」

「いつもは想に甘えてばっかりだったからな……雪乃」

「な、なんですか?」



 そして、俺たちの横でイチャイチャしているのを見て固まっていた雪乃に声をかけると緊張した様子で、返事をする。

 だけど、その顔はあきらかに何かを期待しているのがわかる。その表情に俺は胸が熱くなるのを感じ両手を広げると、顔を真っ赤にしたまま胸元に飛び込んできた。



「えへへ、春兄……もう、素直に甘えていいのよね? だって、私たちは恋人なんですもの!!」

「ずっとお前の気持ちに気づかなくてわるかったな……まさか義妹がヤンデレで好意を抱いているなんて思わなかったんだよ……あれ、でも今までの言動はどちらかというとツンデレのような気が……」

「ヤンデレよ!! 私はヤンデレよ、春兄!!」



 慌てたように否定する雪乃。自分でヤンデレっていうのは珍しいな……と思いながらあたまを撫でると幸せそうな笑みを浮かべる。

 そして、俺と雪乃は見つめあって……唇を交わそうとしてきたのであわてて避ける。



「なんでですか? 春兄!!」

「そういうことはデートしてからっていっただろ? 今はこれで許してくれ」

「春兄のいじわ……あ♡」



 想の時と同様に首筋に吸いつくと可愛らしい声を上げる。そして、「ああ、春兄のものになっていく感じがする」と実にヤンデレポイントの高いことを悶えながらつぶやく。



「うふふ、残念です。このままキスしてくれれば、私も既成事実を作れたのですが……」

「悪いな二人とも……もうちょっと待ってくれ……自己満足だけど……みそぎをしたいんだよ」

「春人?」

「春兄?」



 俺の言葉に悲しい感情を感じ取ってくれたのだろう二人が心配そうな声を上げてくれる。ああ、やはりヤンデレ少女は察しが良くて素晴らしい。

 愛おしい二人に抱き着くと、想が無言で俺の顔を豊かな胸にうずめされて甘やかしてくれて……雪乃は話すまいと俺の腕を抱きしめてくれる。

 そんな二人と一緒に結局俺は抱き合っていると幸せで……ついつい一泊してしまったのだった。




カクヨムコンテストように新作をあげました。

読んでくださるとうれしいです。


『破滅フラグしかないラスボス令嬢(最推し)の義兄に転生したので、『影の守護者』として見守ることにしました〜ただし、その正体がバレていることは、俺だけが知らない』


推しキャラを守る転生ものとなっております。


https://kakuyomu.jp/works/16817330668867955895

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