第11話生き残る策
陽動作戦が失敗に終わった後、僕は学校が終わると、すぐに家に帰る。
犯人が僕を殺害するのを防ぐために、あらゆる策を既に打っている。
まず容疑者候補には絶対に近づかないのは当たり前として、なるべく人目の多い道を通る。念の為、スタンガンを持ち歩いている。
「これだけ警戒していたら来ないな。やはり、仕掛けに来るとしたら家…さらには僕の部屋の中だな。」
僕がそう呟くと、
「もしかして今朝ドアにシャー芯挟んだり、紙挟んだり、ドアノブの上に花びら置いていたのは部屋の中に入られていないかを確認するため?」
シビトに聞かれ、僕は頷く。
時間は今朝までに遡る…
僕はドアの近くに花の入った花瓶を置き、そこから一枚花びらを取るそれをドアノブの上に置く。ドアを開けたら確実に花びらが花瓶の近くに落ちるように調整する。ついでにドアの間にシャー芯を挟み、開けたら折れるようにセットしておく。念の為、風で落ちたりしないように、エアコンを付けず、窓も閉める。
更に超小型カメラもこの部屋のあらゆる場所に設置してある。犯人も恐らく、覆面を被ってくるだろうが、ある程度の背格好位はわかる。
姉の方は今週は学校が終わったら塾に缶詰めとなっているので、姉が開ける心配もない。
「なぁ、さっきから一体何やってんだよ。」
シビトに聞かれる。
「生き残るための装置ってとこかな」
僕が曖昧に答える。今回の僕のギミックを使うにはシビトを利用することが不可欠だ。シビトにこのからくりを説明してしまうと、中立であるシビトに協力して貰えなくなる可能性がある。(後にこれは、不要な心配だったと気づく。)
シビトと生活していて分かったのは中立と言ってもある程度の事は手伝ってくれるということだ。物を取ってきてもらったり、先にあるものを見てきてもらうこと。
今朝のことを思い出し終わると、僕とシビトは自室のドアの前に着く。シビトは壁を普通にすり抜けることが出来る。これを利用する。
「シビト、中に入って花びらがどうなってるか教えてくれないかな?」
シビトは中を見るなり、
「大変だ!花びらが落ちてる!」
僕は焦る
「本当か!?」
そう聞き返すとシビトは急に笑い始めた。
「ふふっやっぱり、あの花びらが落ちてるかどうかで誰かが部屋に入ってきたかを確認する装置だったんだね。」
シビトに考えを見透かされ余計焦る。シビトの協力が無ければ僕の計画は破綻する。
「クレープ」
シビトは唐突にそう言った。
僕が「え?」と聞き返す。
「クレープ買ってくれたら、中どうなってるのか教えてあげるよ。」
どうやらクレープが食べたいらしい。
「そうか。そういえばお前中立と言っても、さっき物持つぐらいならしてくれたもんな。まぁいいよ。今回の生き残ったらクレープ買ってあげるよ。」
とあえて生き残った後にあげるという条件をつけた。これならば、嘘をつくこともないだろう。
シビトは渋々了承し、花びらが微動だにしていないことを僕に伝える。
僕はお礼を言うとドアを開ける。
何事もなく、部屋に入れた。
「毎日気が抜けないな」
僕がそう呟く。
一昨日、シビトが僕についてから全く気が休まらない。それに、調査の方も結局振り出しに戻ってしまった。いやそれどころか、本当に僕の推理が正しかったのかも怪しくなってきた。
それにいつも一人だった部屋に常に誰かいるってのは精神的にも休まらない。
僕が生き残れたとしても、こいつがずっと今後視界に入ってくるのか…
ん?
僕はふと思った。
(こいつ一度見えるようになった後ずっと見えるままなんだよね…いや、もしかしたら…)
頭の中にある仮説が思い浮かぶ。
仮に今日調べた容疑者の中に犯人がいたとして、それを回避するとしたら、犯人の視界からシビトが見えなくなれば可能になる。シビトがまだ説明していないルールが存在する。その中に一度見えるようになったシビトを視界から消すことが可能だとしたら、今日この作戦が上手くいかなかった辻褄が合う。
(念の為、このことは明日七瀬に伝えておこう。)
「なぁなぁ、マコトクレープの事なんだけど前に食べた時はバナナ味の食ったんだよ」
「うん。」と僕が返事する。
「そん時にさ他の味があるのも見えてさ、アイスクリームだとか、いちごだとか色々入った奴があったんだよ。それ欲しいな〜」
シビトはチラチラこちらを見てくる。
「いいよ。それ買ってあげるよ。」
「ほんとに!?ありがとうー」
とシビトは大喜びする。
今までちゃんと話したこと無かったけど、案外悪いやつじゃないのかもしれない。
僕はシビトの過去について聞いてみることにした。
「シビトって何年前からこんなことし続けているの?」
「ちゃんと数えたことないなー。確実に言えるのは千年以上前にはもう僕はいたよ。」
そんなに昔からいるのか。シビトってのは。
見た目は可愛らしい男の子だが年齢を聞き、やはり人ではないんだなと納得する。他に疑問に思ったことを聞いてみる。
「シビトって他にもいるの?」
「勿論、目に写っていないだけで僕の他にもいるよ。まぁ全員が全員、シビトに間引かれて死んでいく訳じゃないけどね。」
シビトが他にも存在している…か。
僕はベッドに横になる。
「寝るの?」
「うん。」
シビトのことをもっと知れば犯人を捕まえる糸口が掴めるんじゃないか。そんなことを考えながら僕は深い眠りについた。
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