第8話陽動作戦
七瀬栞はマコトを呼び止める。この二人はお互い顔と名前は知っているが特に普段から会話をする仲ではない。なぜ急にマコトに喋りかけてきたのかという疑問と共にマコトは警戒心を強める。
「相澤くん。連続失踪事件について協力して欲しいことがある。」
急なお願いにマコトは困惑する。
「なぜ僕に?」
「貴方のクラスで二人の行方不明者が出た。あかりちゃんとタケシくん。そして貴方はタケシくんがいなくなる直前彼とよく行動を共にしていた。そのことで聞きたいことがあるの。」
マコトはそう言われ、自分が疑われていることに気づく。ならばまずは、自分のアリバイを証明しなければならない。
「マコトくん一昨日の放課後はどこにいたの?」
「サッカー部の長谷川に定期考査の勉強を教えて欲しいと頼まれ、図書室で勉強を教えていたよ。」
「その場にタケシ君はいなかったのかしら?」
「いないよ僕と長谷川の二人きりだ。」
七瀬は少し下を向き考え事をした表情でこういう。
「なるほど…後で事実確認をしておくわ。ところでタケシ君がいなくなる前に貴方とタケシ君は二人でよく居たけどどんな会話をしていたの?」
「あかりが行方不明になった後、僕とタケシでその真相を確かめようと調査していたんだ。」
そういうと七瀬は納得した表情になる。
「わかったわ。協力ありがとう。もし良かったら、アリバイの事実確認が取れたらその調査私にも手伝わせてくれない?」
七瀬は僕や日比谷と同じ学年首席であり、今回の事件を調査しているとなればかなり心強い。それに一人で調査するより相方がいた方が、精神的に楽だ。
「わかった。手伝ってくれてありがとう。」
そうお礼を言うと七瀬と一度別れ休み時間に屋上で待ち合わせをする約束をした。
休み時間になると約束通り屋上へ向かう。
「階段登るのしんどいよー」
とシビトが言っている。
シビトにも疲れるって感覚あるんだな。
屋上に着くと既に七瀬は待ち構えていた。
「ごめん待たせた?」
「いえ私も着いたばかりよ」
そんなやり取りをしつつ本題に入る
まず二人の情報を共有する。僕はシビトの存在やそのルール、あかりの仲良かった容疑者等を話した。
「なるほどね。その話を聞く限りシビトの死体処理を利用して、犯人は死体が見つからない完全犯罪をしているってわけね」
「あぁ。」
「シビトにつかれても生き残った人間はいる。一度ついた人間はずっと見える。つまり、その生き残った人間はシビトが見える。犯人は過去にシビトにつかれ生き残った人間である。」
(僕と全く同じ考えだ。)
七瀬の考えを聞きそう思った。
七瀬は続けて言った。
「シビトは基本的には中立の立場…つまり例外はある。例えばだけど何か条件を満たせば言うことを聞いてくれる。犯人は恐らくそういった事も利用しているのでしょうね。」
七瀬はそう言うと少し考え始めた。そして…
「シビトにこのボールペンを持たせてみて」
七瀬はボールペンを渡してきた。
僕はボールペンをシビトに渡す。
するとシビトがボールペンを持った瞬間、七瀬の視界からボールペンが消えた。
「ボールペンでカチカチ音を出してみて」
七瀬に言われシビトがボールペンをカチカチ鳴らす。
やはりこのカチカチという音は七瀬には聞こえていないようだ。
「思いついた。容疑者の中から犯人を特定する方法を」
「どんな作戦なんだ?」
「簡単に言うと陽動作戦よ」
そう言い七瀬は説明を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます