第4話シビトと事件

タケシはシビトと名乗る男の子がいると僕に言ってきた。僕はタケシが指さしてる方を何度見てもそこには廊下の壁しか見えなかった

「マコト!あれが見えねぇのかよ!」

タケシが困惑していると

「僕の姿が見えるのは取り憑かれた人間のみ。だからこいつには僕の姿が見えないんだ」

シビトはタケシによると今僕の肌をつねっているらしいが何も感覚は無い。どうやら見えないだけでなく触れても何も感じないらしい。にわかに信じ難い話だ。

「とにかくそのシビトってのがいて俺がもうすぐ死ぬとか言ってんだよ」

タケシは早口でそう説明する。僕はその事を聞いた瞬間連続失踪事件と何か関係があるのかもしれないと思った。

今回の連続失踪事件には不可解な点が存在する。それは行方不明になった者達がいくら警察が捜索しても見つからないということだ。連続失踪事件が始まってから四ヶ月経過しているが既に五人行方不明になっている。警察は一人行方不明になった時点で捜索を行っていた。しかし、行方不明者が見つかるどころか増えていく。犯人が普通の人間ならこんな状況になっていないだろう。となれば犯人はシビトと名乗る者もしくは、シビトの力を借りている者…そうなれば辻褄が合う。

「タケシ、そのシビトに色々質問してもいいかな?」

タケシがシビトに許可を取ろうとすると

「いいけどその代わりに飲み物ない?僕喉乾いてるんだよね」

シビトがため息をつきながら言った。

「お前水とか飲むんだな」

タケシがツッコミを入れる

「水っていうかこの前見たんだけどさ色がついてる飲み物見かけてそれ飲みたいんだよね」

どうやらジュースのことを言ってるらしい。ただこれで質問を答えてくれるというなら安いもんだ。

僕達は廊下の隅にある自販機に行き、オレンジジュースを購入し、シビトに渡した。

「いいねえやっぱり人間に頼まなくてもこういうの飲めるようになりたいなぁ」

シビトがチラチラタケシの方を見る

「質問に答えてくれるって話だろ?」

タケシがシビトを睨む。

「分かったよ」

ということで観念したシビトに僕は

「じゃあまず最近起きてる連続失踪事件…お前が関わってるな。」

シビトは頷いた。

「やっぱり…そのお前に憑かれた人間は死んでいるのか?」

「うん。僕はもうすぐ死ぬ人間につく」

シビトが答える。

「なるほど、つまり行方不明になっていた人間はやっぱり死んでいたのか…となると死体が見つからないのもお前が関与しているのか?」

「僕はついた人間が死んだ後に死体を片付け魂を成仏させる役割がある」

なるほどと納得している僕とは対照的にタケシの顔が青ざめていく。

「なぁ俺死ぬのか?なら助かる方法は無いのか?」

タケシがそう尋ねるとシビトはうんざりした表情で答える

「大体の奴が僕に助かる方法を聞いてくるけど、僕はいつどこで死ぬかなんて知らないし…それに今回事件の事について質問答えてるけど、本来シビトにはもうすぐ死ぬということを伝える以外答える義務はないからね僕は大分サービスしているよ」

シビトがそう言っているのをタケシ経由で聞く。本当に不愉快な奴だ。まぁシビトは人間ではないから価値観が合わないのは当然か…

ただどうやらシビトが殺してる訳ではないようだ。しかし、おかしい話だ。もうすぐ死ぬ人間につくと言ってるが、高校一年生がそんなに連続して死ぬだろうか…やはりこの事件には犯人がいるとみて間違いないだろう。

僕は容疑者をもう一度振り返ってみる。友達の律子やカナコ、サチエ。それに彼氏の日比谷ハル…この中から犯人を絞るのにはまだ情報が足りない。

「タケシ、律子やカナコとサチエそして日比谷ハルには近づくなよ」

そう言い終わった時サッカー部の部員の長谷川が走ってこちらに向かってくる

「おーいマコトいたいた。探したんだぜ」

長谷川は僕の前に来ると手を合わせお願いしてきた。

「頼むもうすぐ定期考査だろ?お前頭良いからこの後の放課後に教えてくれよ」

サッカー部の長谷川はマコトやタケシと同じA組であり、二人とは面識がある

僕はタケシも入れて三人で勉強をしようと提案するもタケシは長谷川のマンツーマンで教えてもらいたいという様子を察し、今日は解散して明日にまた調査をするということになった。

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