第10話計画

けたたましくなるアラーム

動揺したのは七瀬栞の方だった。

「恐らく誘拐されたか、既に他殺されてるかのどちらかだろう。生きてるにしろ、死んでるにしろもうどこにいるか分からないけどね。」

日比谷ハルは大音量のアラームがなっても少しも動揺せず、七瀬栞の質問に答える。

(どういうこと?何故反応しなかった?)

七瀬は頭の中で考えるもその答えが出てこない。

「どうしたのかな?質問をしておいて答えたら上の空になってしまったようだが」

日比谷ハルの顔はパッと見心配している様子だが、内心勝ち誇っているような顔ともとれた。

「いえ。ありがとうそれだけよ。」

「君も今回の事件の調査を?」

日比谷ハルにそう問われ、七瀬栞は慎重に返答する。

「いえ、別に。ただ頭の良い貴方ならなんて答えるか気になっただけよ。」

「そうか。それは残念だ。調査していたなら情報共有が出来ればと思ったが…残念だ。それではまた。」

そう言い残し、日比谷ハルは七瀬栞に背を向け屋上を去る。

日比谷ハルがいなくなってからしばらくして、僕は七瀬の目の前に行く。

「…一体どういうこと何故、誰も反応しなかった?」

七瀬は深く考え込んでいる。

僕達は今回の陽動作戦は失敗に終わった…

日比谷ハルは屋上から教室に戻るまでの間に笑いを堪えていた。

(クククッやはり、そう来ると思っていたよ。まさか、七瀬も相澤と組んでいるとは…どうせあの場にはシビトがいて、大きな音が出るものをシビトに持たせておき、あの質問と同時に大きな音を出させ、僕の反応を見て犯人か判別するつもりだったのだろう。だが、シビトのルールにシビトが一度見えたものはずっと見える。そういう説明がされたのだろう。だがこのルールには続きがある。シビトの死の宣告から生きのびた場合、シビトから追加でルールが説明される。シビトを任意のタイミングで見えなくすることだ。つまり、僕は普段あまり喋ることの無い七瀬に呼び出された時点で、恐らく僕を犯人かどうか判別するための策だろうと予測した。だから僕はシビトを見えなくしたんだ。ただし、これにはデメリットがある。一度見えなくなれば、その後再びシビトを視界に入れるには僕がもうすぐ死ぬような状況を作り出し、再びシビトを僕につかせなければならない。またシビトのルール追加を行う場合も、シビトが視界に入ってない状態では使用できない。

…あの二人はあの様子から察するにまだシビトについての情報を得られていない。このアドバンテージがある限り、いくら頭の良いあの二人でも僕に並ぶことは出来ない。まだ情報を得ていない状況で、まずはシビトのついている相澤を殺す…)

その日の放課後になり、日比谷ハルは相澤を殺す為の準備を始める。

まず日比谷ハルの拠点である既に誰にも使われていない工事現場の建物に行く。

そこには、日比谷ハルの仲間である17歳の白金なえという女子と東京高校二年B組の白川碧(あおい)という女子がいた。

「やぁ待たせたね」

ハルが二人に挨拶をする

「ハル、頼まれてた物もうそろそろできそうだよ」

あおいがそう言うと

「あぁありがとう。」

と答え日比谷ハルは二人の近くにある積まれた骨組みの上に座る。

「次は爆殺?」

なえに聞かれハルは答える。

「あぁ。相澤マコトの住所を手に入れた。あおいがそれを作り終わったらなえには明日の昼の11時にその爆弾を相澤マコトの部屋の机の引き出しに設置させに行ってもらう。あの時間には、相澤の家には誰もいない。相澤の家庭はシングルマザーだ。母親は仕事で夜遅くまで帰ってこないし、姉のサオリとマコト本人は学校で家にいない。

なえは学校に行ってないだろう。僕とあおいはアリバイを作るために学校にいなくてはならない。

あぁ。念の為、シャー芯を持っていった方がいい。おそらく、部屋に誰か入ってないか確認するためのギミックをマコトの部屋のドアに用意しているだろう。そこは注意してみてくれ。」

なえはそう言われ頷く。

(それだけじゃない…この計画はどちらに転んでもいい…)

日比谷ハルの口元が少し笑う。

刻一刻と近づく死のカウントダウン!!

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