第17話最後の平日
11月13日の夕方相澤マコトと七瀬栞は羽村と一緒に電車に乗り込む。
「流石に冬だからなもう暗くなるのもはええな。」
「えぇ。だから一人で帰宅してる貴方を殺すのにはうってつけの季節ね。」
羽村の顔が少し歪む。
「七瀬。羽村君を脅してなんになる。」
「羽村君が全く危機感を覚えてないようだったから言ったまでよ。」
「俺だってまだ半信半疑だぜ?確かにお前らの言うことは辻褄は合うが、まだ自分がもうすぐ死ぬって言われても実感が湧かねえ。」
「僕の経験上だけど君みたいに自分の死について深く考えてない人間が生き残った事例はゼロだよ。」
シビトがはっきり告げると、羽村は不機嫌になる。
「そうかい。だが悪いな。俺は初めて死なない人間になるぜ?」
マコトはくすりとわらう。
「なんだ?相澤お前馬鹿にしたな?」
「いや。なんだか、そんなに気負ってなくてよかったよ。僕の時は本当に怖くて仕方なかったからさ。」
「相澤。お前…」
「そうよ。私たちがついている。貴方は死なないわ。」
七瀬も力強く言う。
「はぁ。気持ち悪」
シビトは不機嫌な顔をしてそう吐き捨てる。
「…!?」
七瀬は一瞬顔をしかめる。
「どうかした?」
「いや。なんでもない。」
マコトが聞くも七瀬は直ぐにいつもの調子に戻る。
「ねぇねぇ、今からカラオケいこーよ。」
シビトが提案してくる。
「は?貴方何言ってるの?いつ殺されるかも分からない状況で。」
七瀬がツッコミを入れる。
「別にいいじゃねぇか。一人でいるよりお前らといた方が、安全そうだし。」
羽村は納得する。
「じゃあきまり!」
シビトが喜びながら池袋駅を降りる。
羽村と僕も降り、七瀬も渋々池袋駅を降りた。
暗くなってきた池袋の街はネオンの光に照らされ、既に夜の街となっていた。
「そういえば、もうそろそろクリスマスの時期なんだな。」
「全くね。一年が経つというのは物凄く早いわね。」
マコトと七瀬でそんな会話をしていると、シビトと羽村はカラオケの店の前で止まる。
「早く来いよー」
羽村が僕たちによびかける。
「あいつ、案外ノリノリなんだな。」
「まぁ本人の気が紛れるならいいんじゃない?」
僕達はそんな会話をしながら、羽村達の元に行き、全員でカラオケ店に入る。
カラオケ店では、高校生は割引がつくため全員(シビトを除き、)学生証を見せる。
「はい。では二階の204号室に向かってくださいー」
女店員に言われ、全員でカラオケ室につく。
そこでは最近流行りの歌から昔のアニソンまでを皆で歌い尽くした。
電車が羽村の家の最寄り駅に着く。僕達は全員で降りると羽村の家の前まで送った。
「じゃ、ありがとな」
「また明日」
そう別れる。僕達もそれぞれ解散となった。
11月14日土曜日の昼休みまたいつものメンバー集まった。
「カナコさん。昨日日比谷君の様子はどうだった?」
「日比谷君はずっと学校の図書室で自習をしていました。特に誰かと連絡をとった様子もありません。」
「そうか。ありがとう。」
七瀬がお礼をする。
明日の日曜日は日比谷ハルの監視は相澤と七瀬でして、サチエとカナコ律子は羽村の護衛として一緒に過ごすこととなった。
放課後図書室に三人で向かう。
日比谷は今日は自習ではなくある本を読んでいた。
「何読んでるの?」
相澤が尋ねると、
「これかい?これはミステリー小説だよ。この事件の犯人は必ず殺す人間に予告をするんだよ。面白いだろ?まるで今回僕たちが追っている犯人のようだろう?」
日比谷はニヤリと笑う。
「それは私たちに対する挑発と受け取っていいかしら?最早自分が犯人であることを隠す気はないようね?」
「さぁ?なんの事だか?僕はただ、この小説の内容がまるで僕達の状況に似てるということを言いたいだけだ。」
「ふふっその小説の犯人最後どうなると思う?警察に捕まる直前味方に殺されることになる。」
「では知っているかい?この事件を追っていた女探偵は犯人を捕まえる後一歩のところで、犯人の策に負けて死ぬ。」
七瀬と日比谷は笑みを浮かべながら嫌味を言い合う。
「相変わらず二人は仲悪いな。」
「何を言ってるんだい?相澤君。僕はこの小説の内容について話していただけさ。」
「そうよ。別に嫌味なんか言ってないわよ。」
「そういいつつ、さっきから二人とも殺気が凄いよ…」
正直言ってこの場に居たくない。それほど、この二人の生み出す空気感に慣れなかった。
日比谷は立ち上がり、帰宅の準備を始める。
「僕は帰る。君たちも早くついてきてくれ。」
そういい、図書室を出た日比谷を二人で後を追った。
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